急速に進化するITを積極的に取り入れることで、これからのビジネスを勝ち抜きたいという企業にとって、IoTやクラウドからもたらされる膨大なデータを効果的に活用するためのシステム構築は重要な課題となる。そこで本連載の第1回では、IoTやAIといった先進技術をビジネスで有効利用するために必要なデジタルプラットフォームについて確認した。第2回となる本稿では、新時代のデジタルプラットフォームを構築するうえでカギを握る"高速なストレージ製品"と"柔軟な運用が可能なデータベースシステム"に注目。11月30日に開催されたイベント「NetApp Innovation 2018 Tokyo」の富士通ブースで展示されていたオールフラッシュ/ハイブリッドストレージ製品と、それを利用した大容量アーカイブソリューションとOSS(オープンソースソフトウェア)データベースをチェックする。

「ETERNUS NR1000」を軸にしたアーカイブモデルでコストも削減

NetApp Innovation 2018 Tokyoの富士通ブース中央には、進化を続けるデジタルテクノロジーを活用してビジネスを展開していくうえで必要な特性を網羅した「ETERNUS NR1000」シリーズが展示されていた。NetApp製NASのOEM製品であるETERNUS NR1000は、オールフラッシュストレージの「NR1000A」とハイブリッドストレージの「NR1000F」を用意し、どちらも高速な処理を実現して大容量データの効率的な活用をサポート。高い処理性能だけでなく拡張性や運用性にも優れており、柔軟に容量を拡張できるほか、重複排除・圧縮機能によるディスクスペースの効率的な活用にも対応する。さらに、「RAID-TEC」や「Snapshot」「SnapManager」「SyncMirror」「SnapMirror」といったデータ保護機能も多数搭載し、現代の企業に必須のタスクであるビジネスの継続性も高めることが可能だ。

ETERNUS NR1000

今回のブースでは、ETERNUS NR1000の持つ特徴を十二分に活かした2つのソリューションを展示していた。そのひとつは、企業に蓄積された大容量データを、アクセス性を犠牲にすることなく効率的に保管しておくことが可能な大容量アーカイブソリューションだ。ブースでは、富士通 グローバルビジネス戦略本部の秋岡 恭介 氏が、製品化の準備を進めるこの最新アーカイブソリューションについて解説してくれた。

富士通株式会社 グローバルビジネス戦略本部 システムプラットフォームビジネス統括部 ストレージビジネス推進部 秋岡 恭介 氏

【特別連載】ストレージ活用のキーワードは“オールフラッシュ”+“大容量アーカイブ”

第1回 デジタル変革を支えるビジネスプラットフォームとは?
IoTやAIといった先進技術をビジネスで有効利用するために必要なデジタルプラットフォームを解説する。

記事はこちら→ https://news.mynavi.jp/kikaku/20171219-554126

ビッグデータ時代における企業の多くは、数々の業務システムを構築して、それぞれのサーバー上で膨大なデータを蓄積・活用している。トラブル時の業務継続性を考えると、こうしたデータはアーカイブしておくのが基本だが、業務サーバーそれぞれにアーカイブの仕組みを構築するのはコスト的な負担も大きく、単に全データをアーカイブするだけでは、あとからデータにアクセスする際に時間がかかってしまうこともある。こうした保管コストの最適化やアクセス性の担保といった要求に対応するのが、今回展示されていた大容量アーカイブソリューションとなる。ETERNUS NR1000の持つ機能を利用して理想的なアーカイブ環境を実現していると秋岡 氏は語る。基本的な構成は、各種業務サーバーからのデータをETERNUS NR1000(一次ストレージ)にアーカイブ。階層制御サーバーで設定したポリシーによって、重要度(アクセス性)の低いデータをテープや光メディアを使った二次ストレージにアーカイブするというもの。一次ストレージにETERNUS NR1000を採用することにより、さまざまな業務サーバーのデータをスムーズにアーカイブできる導入・運用性の高さが活かされる。もちろん、オールフラッシュ/ハイブリッドストレージの特長である処理速度の速さも有効利用される。また、アクセス性の低いデータを保存する二次ストレージにテープや光メディアなどの低価格の媒体を利用することでコストの削減にも対応。階層制御サーバーで運用の自動化を実現していることもあり、コスト面の負担と管理者の負担を大幅に軽減するアーカイブリファレンスモデルに仕上がっているという。

「PostgreSQL」の弱点である大容量データの運用を強化

ETERNUS NR1000を活用したソリューションとしてもう1つ展示されていたのは、OSSベースのデータベース「FUJITSU Software Enterprise Postgres」(以降、Enterprise Postgres)の高信頼ソリューションだ。Enterprise Postgresは、前回紹介したセッションにおける講演でも解説されていたオープンソースの「PostgreSQL」をベースに信頼性・性能・セキュリティを強化したデータベースで、各種リレーショナルデータベースとのスムーズな連携を実現するなど、ビッグデータ時代のデータベースとして理想的な特徴を備えている。ブース内でEnterprise Postgresを解説してくれた富士通 ミドルウェア事業本部の森 世紀 氏は、PostgreSQLは、近年、IoTやビッグデータ活用に向け、従来のRDBの機能範囲に留まらない進化を遂げている一方で、大容量化したデータのバックアップなど運用が追いついていない部分がある。富士通はこれをEnterprise Postgresのみで解決するのではなく、ETERNUS NR1000の機能を活用した独自のサービスとして提供すると話す。

富士通株式会社 ミドルウェア事業本部 データマネジメント・ミドルウェア事業部 プロダクト技術部 森 世紀 氏

富士通では10年以上にわたりPostgreSQLに携わってきた。開発コミュニティに参加し、PostgreSQLの機能強化に努めるとともに、データベースの二重化や透過的データ暗号化などを搭載したEnterprise Postgresを提供し、PostgreSQLをビジネスで、より安全・快適に活用することを目指してきた。また、ビジネス活用での安心は、ソフトウェアの機能に留まらない。Enterprise Postgresでは、PostgreSQLを含めたトラブル時の迅速なサポートや、リリースから5年でEnd of LifeになるPostgreSQLの長期保証にも対応し、PostgreSQLの安心活用をワンストップで支援している。

PostgreSQLは、近年、IoTやビッグデータ活用に向け大容量データの処理性能を向上させてきた。その一方で、大容量データを扱う際にバックアップに時間がかかるという課題があった。そこでETERNUS NR1000のSnapShot機能を利用した高速差分バックアップのソリューション、さらに同機能を活用した災害対策ソリューションの提供を開始した。富士通では、このバックアップや災害対策を含むPostgreSQLのインフラ構築からデータの移行までをトータルにサポートしてくれるため、OSSのメリットを活かした柔軟なデータベースをセキュアに運用したいという企業にとっては見逃せないソリューションといえる。実際、今回のブースにおける展示では、各企業担当者の注目が集まっていた。富士通では、今後もストレージとの連携を強化し、データ流通の利便性を向上していくという。

ここまで解説してきたように、オールフラッシュ/ハイブリッドストレージETERNUS NR1000は、企業のビジネスを変革できるデジタルプラットフォーム構築を強力にサポートしてくれる。次回は、ETERNUS NR1000を利用したソリューションを実際のビジネスに取り入れている実例をもとに、これからのビジネスに必要なデジタル変革の実態を追っていきたい。

【特別連載】ストレージ活用のキーワードは“オールフラッシュ”+“大容量アーカイブ”

第3回 データの利活用が求められる今、アーカイブソリューションの重要性
事例でわかる!膨大なデータ資産を安全確実に長期保存するアーカイブシステムとは?

記事はこちら→ https://news.mynavi.jp/kikaku/20180214-571686/