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動き回って対戦するにはARがベスト

meleap CEO・福田浩士氏

――昨今はVR/ARが一大ムーブメントを巻き起こしていますが、完全な仮想世界のVRではなくARを選んだ理由はなんでしょう?

我々はVRに憧れて始めたわけでもなく、ARに憧れて始めたわけでもなく、「昔から憧れていた技を、リアルの場で出して戦い合いたい」という憧れから始めたので、身体性をいかに発揮できるかが重要なんです。そのためにどんな技術を使うべきかを考えると、ARのほうが合っているんですね。

VRは異世界にダイブして没入するという点ではとても面白い技術ですが、身体を動かすことに関しては制限が掛かってしまいます。我々の場合、いかに動き回って技を放つ体験を提供できるが重要なのです。

――「HADO」で技を出すときのエフェクトが「波動拳」や「かめはめ波」とは異なる独特なものですが、何かをモチーフにしたり参考にしたものがあるのでしょうか?

エフェクトは何種類かを使い分けていて、対モンスターのエフェクトと対人戦のエフェクトは違います。特に何かをモチーフにしているわけではありません。対モンスターの「ファイヤーボール」はゲームで使われるエフェクトに近いのですが、飛んできたときの「距離感のわかりやすさ」や「認識しやすさ」などを重要視しています。

対人戦(左)と対モンスター戦。それぞれのエフェクトにはプレイしやすくするための工夫がある

――視界内にHPや時間などの情報を表示すると画面が狭くなりますが、それを解決するためにUIデザインなどで工夫されたところはありますか?

以前から議論しているのですが、正直なところプレイヤーの慣れの問題が大きいと思っています。

「HADO」の画面には敵のHPや自分のパワーゲージ、残り時間、スコアなどの情報が表示されますが、初めてプレイする人はそこまで見る余裕はなく、とにかく目の前の敵と飛んでくるエフェクトを見ながら動くんです。初めての人でも十分プレイできるけれど、やりこんでゲージを見ることでより良いパフォーマンスを出せるようなUIを目指しています。

「HADO」の画面

将来的にはコンシューマー向けにも

――自宅でもプレイしたいと思ってしまいますが、コンシューマー向けの予定はありませんか?

将来的にはもちろんコンシューマービジネスに発展させたいという思いはありますが、技術的な制約や利用シーンなどを考えれば、すぐに実現させるのは難しいところです。

「HADO」の施設なら10m×7mのフィールドが用意されていますが、自宅でそのスペースを確保することは難しいので、今は専用の施設に来てもらってプレイしていただくというスタイルですが、将来的には自宅や公園などでもプレイできるようなものにしたいという考えもあります。

――ヘッドマウントディスプレイの普及率にも影響しそうですね。

はい。ハードウェアの進化というのは非常に大きい要素だと思います。この後5年~10年でハードウェアがどのように進化していくかを予測しながら動いていく必要があると思います。

嬉しくもあり寂しくもあるんですが、我々のように身体性をフルに発揮したスポーツ路線を目指している会社というのは世界的にもないため、それに最適なハードウェアが出てないんです。

スキーやスノボ、あるいはバイクに乗りながら表示を出すといったような「既存のものを少しだけ拡張する」ものは存在しますが、我々のようにゼロから新しい競技を作ろうとしているような会社は他にいないんです。その理由は単純に「難しいから」なんです。

――そうなると、御社がハードウェアも牽引していくわけですね。

ある意味、今も牽引してはいるのですが、その必要性はあると思います。

視野を拡げたヘッドマウントディスプレイで安全性も考慮

ヘッドマウントディスプレイは横と下が開いている。視野角が広くすることで他のプレイヤーとの衝突や転倒を防いでいる

――御社が開発したヘッドマウントディスプレイと、市販のスマートフォン装着型のヘッドマウントディスプレイの違いはどこでしょう?

決定的な違いは、側方と下部を解放することで周辺視野を拡げているところです。180度ぐらい視野が解放されていて、周辺の視野とディスプレイ越しに見る風景がシームレスに繋がるようになっています。周辺視野を解放することで、隣の人とぶつかったり転んだりすることはまずありません。

――すでにほかのIPとのコラボレーションも進んでおられますが、「ここと組みたい」というのはありますか? 今回はドラゴンボールとコラボされていますが、野望をひとつ達成したという感じでしょうか?

ドラゴンボールとのコラボはナムコさんと一緒に開発をさせて頂いたんですが、今回はやれることが限られていました。もっとプラスαできたら面白いだろうなというのは、例えばドラゴンボールのいくつかの技を使ってプレイヤー同士が戦いあうといった大会が開催できればいいなと思っています。

――「かめはめ波」と「魔貫光殺砲」を打ち合えるみたいな感じですか?

そうですね。空を飛べたら最高ですけどね(笑)そこはまた次のイノベーションになります。そういったコラボができたら、世界中の人がやりたがると思います。

――国内よりも海外の方がウケが良いとか感じられたことはありますか?

国内も国外もウケは良いと思います。ユーザーの反応では海外の方が無邪気に楽しむという傾向はもちろんありますね。日本人は興味があっても少し恥ずかしがるところがあるので。

お子さんはモンスターに驚いて泣き出す子もいますけど、だいたい面白がってくれています。海外でも十分ウケるという実感はあって、まもなく上海のテーマパークでオープンしますし、その後もアジア、アメリカ、ヨーロッパへも展開する予定です。

今後は海外展開を重視

――現在は、国内でのプロジェクトの方が多いのでしょうか?

今は国内のほうが多いですが、今期の売上げは6対4ぐらいで海外のほうが多くなる予定です。

海外の方が一気にスケールする可能性があります。特に中国はVRに感心を持っていて大きな投資をしようとしているので、その需要によってスケールさせていくことが可能だと思っています。

――VRが盛り上がっていることについてはどうお考えですか?

VR自体が話題になっていることは我々にとっては追い風になっていると捉えています。最近では「ポケモンGO」が話題になっていて、ARへの注目度も上がっていくと思いますので、「HADO」への感心も高まっていくのではないかと思っています。

「HADO」の技を放つポーズを取る福田氏

――今後の戦略とビジョンについてお話していただけないでしょうか。例えばスポーツとして普及させるための計画などは?

スポーツとして普及させるのは簡単なことではありません。やるべきことはたくさんあって、技術的なブラッシュアップをしていかなくてはいけません。また、今年の秋に「天下一HADO会」という大会を開催するのですが、そういったイベントを開催してファンを増やしたりプレイヤーを育成したりしていくことが重要だと考えています。

一方で、スポーツは見て面白い必要もあるので、映像コンテンツとして観客やファンを楽しませることにチャレンジしたいと思っています。これまでにも実験的にニコニコ動画で配信した際に頂いたコメントではかなり好評でしたので、見るコンテンツとしても楽しんでもらえるという実感はあります。特定のプレイヤーにファンが付いたり、試合を見た人の中で「自分もやってみたい」という人が施設に来て実際にプレイしたりするといったこともあるので、試合はスポーツとして普及させるために重要だと考えています。

――ありがとうございました。