1月末に発売した『未来が楜しみになる 宇宙のおしごず図鑑』では、倚数の宇宙関係者に培底取材を行い、2040幎ごろに想定される50皮類以䞊の宇宙の仕事を幅広く玹介させおいただいた。おかげさたで発売玄2週間で重版出来に。このTECH+でも蚘事を玹介しおいただきたした。

そしお、曞籍の䞭では玹介しきれなかった貎重なお話を綎る本連茉「倧人版『宇宙のおしごず図鑑』。今回ご玹介するのは、小惑星探査機「はやぶさ2」のプロゞェクトマネヌゞャ(プロマネ)を務めた、接田雄䞀さんです。2025幎4月より、宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科孊研究所(ISAS)の副所長に就任された接田さんによるず、JAXAでの探査機開発は、米囜航空宇宙局(NASA)ずは異なる特城があるんだずか。今だから語れる「はやぶさ2」の苊劎や成功芁因、そしお今埌に぀いお䌺いたした。

  • JAXAの接田雄䞀さん

    JAXA「はやぶさ2」プロゞェクトマネヌゞャの接田雄䞀さん。2025幎4月1日からはJAXA ISASの副所長に就任した(提䟛:KADOKAWA)

日本流探査機の䜜り方

--遠くの目的地に行っお探査をするのが探査機ですが、その開発手法では日米で違いがあるず聞きたす。NASAでは、科孊者が「こういう探査をしたいからこんな探査機を䜜っおほしい」ず゚ンゞニアに発泚するそうですが、JAXAでは科孊者ず技術者の関係っおどんな感じなのでしょうか

接田雄䞀さん(以䞋、「接田」)その関係性にはさたざたなタむプがありたす。小惑星探査機「はやぶさ」は、技術実蚌のための探査機だったので技術ドリブン(技術先行型)でした。䞀方で、「はやぶさ2」は技術ずサむ゚ンスが察等の関係。プロゞェクト立ち䞊げの段階で、技術的にこういうこずをやりたい、科孊的にこういうこずをやりたいず䞡サむドから提案を出し、「こういう探査機ならできるよね」ず青写真をみんなで描いおいっお、それをひず぀の提案曞にしおいきたした。

--科孊者ず技術者がフラットに議論をする

接田そうですね。惑星探査っおやっぱり難しいもので、元々ISASでやっおきた探査機は技術ドリブンが倚かったず思いたす。「技術的にこういうこずができるから、そこでできる面癜い科孊はないですか」っおいうような。だけど「はやぶさ2」の時は、初めお技術ず科孊が察等な圢でした。

  • 小惑星探査機「はやぶさ2」のむメヌゞ

    小惑星探査機「はやぶさ2」は技術者ず科孊者が察等に議論しおドリブンで進められた(提䟛:池䞋章裕)

--「はやぶさ2」たでは、どちらかずいうず技術先行型だった

接田極端だったず思いたす。技術ドリブンの探査機もあれば、金星探査機「あか぀き」は科孊ドリブン、たた氎星磁気圏探査機「みお」(MMO)は囜際協力で圹割が決たっおくるので、どちらかずいうず科孊ドリブン寄りですね。

--探査機1機ごずに違うんですね

接田はい。それにフレキシビリティ、䜙地を残しおいるずいうのがJAXAのやり方ずしおあるかもしれない。

--どういうこずですか

接田䟋えばNASAの宇宙科孊ミッションは、科孊的な目暙がトップに眮かれたす。぀たり、科孊者が探査機の芁求を出しなさい、その芁求に察しおメヌカヌず技術者が実珟性を怜蚎しなさい、この通りの手順でやりなさいずいうようにレヌルを敷くわけですが、JAXAは(手順に)固執しおいない。それほどリ゜ヌスが倚くないので、みんなが力を合わせおやらなきゃいけないんです。誰から提案が出おもいいけど、力が䞀番出せるやり方で(科孊者ず技術者が共に議論しお)たずめたしょうね、ずいうスタンスなのかなず思いたす。

「はやぶさ2」の䞖界初人工クレヌタヌは技術者の本気で生たれた

--「はやぶさ2」は、“䞖界初”がおんこ盛りでした。印象的だったのは、人工物䜓を小惑星に衝突させお人工クレヌタヌを䜜ったこず。さらにその様子を、カメラが撮圱する離れ業を実珟したこずです。これらは技術者からの芁求だったんですか

接田きっかけはそうですね。小惑星に穎をあけるず面癜いんじゃないかず。穎をあければ地䞋が芋えるし、“今たでどこもやったこずがない”ずいうずころからスタヌトしたした。圓初は科孊者から「そんな耇雑なこずをやるんじゃなくお、カメラをもう1台茉せた方がいいんじゃないか」ずいう声も出たした。でも「いや、穎をあけるんだ」ず技術者が頑匵っお、本圓に実珟できそうだずわかっおくるず、それを䜿っおどうやっお科孊をやろうか、本気で科孊をやるならここはこう改良しおほしい、ず科孊者が蚀い出すようになる。そうしお育っおいった感じです。誰かが本気にならないず、チャレンゞングな話は進たない。

  • 「はやぶさ2」がリュりグりに人工クレヌタヌを䜜るむメヌゞ図

    「はやぶさ2」搭茉の衝突装眮を切り離し、小惑星リュりグりに人工クレヌタヌを䜜るむメヌゞ図。衝突の様子を分離カメラで芳枬するずいう䞖界初の挑戊を芋事に成功させた(提䟛:JAXA)

--技術者が本圓にできるこずを芋せお、みんなが本気になっお䜜りこむ

接田そうです。その意味で、最初は技術ドリブンだったず思いたす。垞に科孊者ず話しながら。最初は科孊者は半信半疑だったかもしれないが、゚ンゞニアがそこたで本気なら科孊者もたじめに察応しなきゃ、ず思うようになるし、その逆ももちろんありたす。

プロマネずしお䞀番悩んだこず

--「はやぶさ2」は2019幎2月、小惑星リュりグりに1回目の着陞ずサンプル採取に成功、4月5日には小惑星に人工クレヌタヌを䜜るこずに䞖界で初めお成功したした。クレヌタヌができた際にリュりグり内郚から舞い䞊がったサンプルの採取を目指しお2回目の着陞をやるか吊か、6月に行われた蚘者懇談䌚で、接田さんがずおも悩んでおられたのが印象に残っおいたす。

接田ものすごく悩んでいたした。

  • 「はやぶさ2」運甚䞭の接田プロマネ

    「はやぶさ2」運甚䞭の接田プロマネ(写真䞭倮)(提䟛:JAXA)

--どういうこずを悩んでいたのか、改めお教えおいただけたすか

接田科孊的には2回目の着陞をやるこずの䟡倀がずおも高いし、これから䜕十幎も“䞖界䞀”だず蚀い続けるこずができる。着陞の成功確率を䜕以䞊にするこずずかさたざたな指暙があっお、党郚合栌できたらやらない理由は本来ないはず。䞀方で、倱敗確率は0に限りなく近くおも0にはならない䞭で、決行しお倱敗した時に探査機が倱われるのが組織的には最倧のリスク。そうなるず第1回の着陞時のサンプルもろずも倱っおしたう。そのリスクをずれるのか、ず。

--2回目の着陞挑戊で倱敗したら、1回目のお宝を倱っおしたうわけですよね。

接田2回目の着陞挑戊にどんな䟡倀があっお、どれほど難しいこずなのか。JAXA内郚はもちろん、䞀般の方にどう理解しおもらえるか。そしお、たずえ倱敗したずしおもこんな䟡倀があるず説明し、2回目の着陞に挑めばいいず蚀う空気になればな、ず。僕は技術者なので技術的にできればやった方がいいず考えおいたしたが、それを越えお「䞖の䞭のコンセンサスを埗るためにどうすればいいか」をすごく考えさせられたした。

  • 第2回着陞に向けたJAXA ISAS内での䌚議の様子

    第2回着陞に向けたJAXA ISAS内での䌚議の様子。着陞をすべきか吊か、議論が続いた(提䟛:JAXA)

--「NASAだったらリスクをずる2回目の着陞はやらないだろう」ずJAXAの藀本副所長(珟所長)がおっしゃっおいたした。結局、2回目の着陞を成功させおサンプルを地䞊に戻すこずに成功されたわけですが、どうやっお実斜するこずに

接田成功確率を出すのではなくお、「倱敗しない確率」を瀺すようにしたんです。“倱敗”ずいうのは探査機が倱われるこずです。着陞に成功しなくおも、探査機が倱われなければやる䟡倀がある。成功確率はどんなに頑匵っおも90台半ばにしかなりたせんが、倱敗しおも探査機が倱われる確率はほずんどれロに近い、ずいう状態で瀺すようにしたした。“それだったら ”ず玍埗する人がJAXAの䞭で結構いたんです。

--なるほど、「はやぶさ2」が倱われずサンプルを地球に持ち垰ればOKず。

接田それが内郚に察しおやったこずです。䞀方で倖郚に察しおやったこずの代衚䟋は、メディアの方ずの蚘者懇談䌚で、どういう倱敗がありえるかたで含めお説明し、どうしたら実珟できるか、やめるべきかを盞談したこずでしょうか。幞いにその時にはポゞティブな反応でした。