参考B. 実効的なデータ転送レートは?

8B/10B符号の説明で、オーバヘッドの説明をしましたが、シリアル・インタフェースの実効的な転送レートはそれだけでは決まりません。

HDMI、V-by-One HSなどのディスプレイやカメラなど画像用に規格化されたインタフェースでは、ピクセル単位でデータをそのまま転送するものが多いです。一方、それ以外のデータ・コミュニケーション用のインタフェースでは、通常、図B-1のようにヘッダとペイロードという形にパケット化して転送します(中にはペイロードがない、すなわちヘッダだけのパケットも存在します)。画像用のインタフェースでもDisplayPortはパケット化します。

図B-1 パケットの構造。データであるペイロードにヘッダを付加し、1つの塊として扱う。ヘッダにはデータの転送に必要な様々な情報が含まれる

ヘッダにはパケット種類の識別や送信元、送信先(あるいはアドレス)、データ長などの情報が含まれます。さらにデータの最後には正しくデータが転送されたかを確認するためのCRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)コードが付加されます。規格によってはヘッダ部にもCRCが含まれる場合もあります。

つまりヘッダ部(およびCRC)がデータから見てオーバヘッドとなるわけです。もちろんこれらは必要な情報であるには違いありませんが。

そのためできるだけ大量のデータを一度にパケット内に含められれば良いわけですが、ペイロードのサイズは制限されているのが一般的です。例えば図B-2のPCI Expressでは規格上のペイロード・サイズの上限は4096バイトですが、Intelのチップセットの最大ペイロード・サイズはサーバ用で256バイト、デスクトップ用では128バイトです。最小でもヘッダ部が16バイト、CRCが4バイトですので、必ず20バイトのオーバヘッドが付加されることになり、128バイト・パケットではオーバヘッドは13.5%となります。ただし実際は、他にも様々な要因があり、これだけで決まるものではありません。逆に他の要因による方が大きく影響を受ける場合があります。PCI Expressのバッファ・サイズがその一例です。レシーバ側のバッファの空きを確認してからデータを転送しますので、空きがないと送信を待つことになり、実質的な転送レートが低下します。

図B-2 PCI Expressのパケットの構造

参考C. SSC:スペクトラム拡散クロック

SSC(Spread Spectrum Clocking)は、EMI低減を目的としてリファレンス・クロックの周波数を故意に揺さぶる(ジッタを持たせる)テクニックです。周波数スペクトラム分布を拡散し(Spread)、特定周波数へのエネルギーの集中を下げることができ、今日のパソコンやディスプレイなど多くの機器に採用されています。

変調の時間軸で見た形状をプロファイルと呼び、正弦波、Hershey Kiss(Lexmark特許)がありますが、三角波が多く利用されています。Hershey KissはHersheyのKissチョコレートの断面に似ていることからこう呼ばれています。

図C-1 SSCと利用される変調プロファイル。SSCにより特定周波数(fnom)へ集中しているピーク・エネルギーを分散することができる。三角波やHershey Kiss型の変調形状(プロファイル)が使用される。Hershey Kissでは他と異なり、エネルギーが偏りなく分散される(周波数軸で見た場合、トップが平坦になる)特長を持つ