NVIDIAの年次イベント「GTC」がカリフォルニアのサンノゼで開催された。GPUベースのAIアクセラレーターと開発ソフトウェア環境のCUDAで築き上げた、相変わらずの独占的な地位に揺らぎは見られないが、刻々と変化する市場の要求と競合の出現に対応するべく、自らもその方向性に転換を加えていることが伺える。
新興デザインハウスGroqの技術を積極的に取り込むNVIDIA
今年のGTCでは、市場の要求をいち早く察知し、世界最大の半導体企業となったNVIDIAを俊敏に動かすCEO、Jensen Huangのセンスが光った。現行の最先端品Blackwell世代の後継機種となるRubinアーキテクチャーの発表とともに、新興デザインハウスGroq社が開発した「Groq 3 LPU(Language Processing Unit)」をRubinと組み合わせることにより推論性能を飛躍的に向上することを発表した。
新興デザインハウスGroqの創業者、Jonathan Ross氏はGoogleで長らくTPU(Tensor Processing Unit)の開発に関わってきた人物で、Open AIのChatGPTの最大のライバルと言われるGeminiプラットフォーム開発の中心人物としても知られる。
Googleを飛び出し独立のデザインハウスとしてGroqを立ち上げたが、NVIDIAは昨年の12月にGroqの経営陣をそっくり引き抜いたことで、その後の推移が注目されていたが、NVDIDIAとの協業でその技術を市場に展開する事に合意した模様だ。この協業は、表向きには「ライセンス契約」ということになっているが、経営陣と主要開発エンジニアの引き抜きと、200億ドルという高額なライセンス契約料を見ると、「買収」に近いのが実情だが、近年膨大な手持ち資金を各方面にまんべんなく巨額投資しているNVIDIAは、独禁当局の目を気にしている事が伺える。
Groqの技術を取り込むNVIDIAの狙いは、推論処理の高速化と電力効率の向上を図りながら全体性能を高めるという大手顧客の要求に応える事である。今回NVIDIAが従来のGPUベースのアクセラレーター製品の延長上にあるRubinと統合したGroq3の技術は、よりアクセススピードが速いSRAMをベースとする推論に特化したチップで、エージェントAIにシフトする市場で、本来はNVIDIAに対抗する事を開発目的としたが、これをNVIDIAが自社のラインアップに取り込むことによってNVIDIAの地位はかなり堅固になると予想される。この動きは、同系統のSRAMベースのSambaNovaなどの新興スタートアップが採用する手法で、こうした動きを封じるJensen Huangの素早い動きと捉えられる。
METAと戦略的提携を実現したAMD
同じGPUベースのアクセラレーターでNVIDIAを追いかけるAMDの最近の動きにも、CEO、Lisa Suの鋭いセンスが光る。
Instinct MI350シリーズの成功で市場の信認を得たAMDは、現在NVIDIAの大手ユーザーとなっている米国のハイパースケーラーのほぼ全ての企業で採用されている。NVIDIA一強依存を回避したい大手ユーザー各社は、AMDとの協業と、自社開発のASICでの差別化でもって一強NVIDIAによるAIのコモディティー化に抗う戦略である。
2月下旬、METAとAMDが結んだ長期的な技術協力合意は、1000億ドルという取引額の巨大さが、その本気度を物語っている。METAは今後5年間で最大6GW相当のAI半導体をAMDから購入すると同時に、AMD株の最大10%を取得する権利を得るという内容だ。これにはAMDの次期製品Instinct MI450シリーズの一部をMETAのワークロードに合わせて最適化するカスタム化の技術協力も含まれているという。ここでも、焦点は学習済みのAIモデルの推論処理の高速化に主眼が置かれている。AMDはInstinct MI450についてOpenAIとも大型契約を交わしており、NVDIAの最大の対抗馬としてどこまでもくらいついてゆく位置にある。自社のCPU/GPUのコア技術をベースにカスタムチップに展開するAMDの手法は、PlayStationやXboxなどのゲームコンソールのメインエンジンの共同開発でも長い実績があり、顧客に対する柔軟性を武器に顧客ニーズをいち早く取り込む、Intelを相手に培ったAMDらしい2番手の戦略である印象を受ける。
計算リソースの需要は学習から推論へシフト
巨大なAIデータセンターを構築するAIプラットフォーマー各社は、級数的に増加する電力需要への対応と、自社サービスの差別化を図るために、計算リソースを学習から推論へシフトさせている。これを達成するために各社ともAI半導体の選択には多くの方策が試されている。
市場シェアではNVIDIA一強の状態がしばらく続いているが、AI技術の日々の発展は、新たな試みや、斬新なアイデアで挑戦する競合の出現によって活性化され続けている。

