業界用語でいうところのC-UAS(Counter Unmanned Aircraft System)、世間一般にわかりやすい言葉でいうと「ドローン対策」は、防衛の業界における中心的な話題に踊り出た感がある。どんな武器体系でもそうだが、新兵器が登場して威力を発揮すれば、対抗手段が考え出される。永遠に無敵ではいられない。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照
陸戦とC-UAS
では、進行中の「陸上装備の話題」というお題とC-UASの関連性はどこにあるのか。
UAV(Unmanned Aerial Vehicle、無人機)、そしてそれを中核とするUASは、経空脅威の一種に分類される。
これまで、地上軍にとっての経空脅威といえば、攻撃ヘリコプターと戦闘機(および地上攻撃機)が双璧であった。そして、攻撃ヘリコプターや戦闘機に対処する手段として、SHORAD(Short Range Air Defence、短射程防空)あるいはVSHORAD(Very Short Range Air Defence、超短射程防空)のシステムが開発・配備された。
いずれも地対空ミサイルが主役で、ミサイルの射程によってSHORADに分類されたり、VSHORADに分類されたりする。FIM-92スティンガーみたいな携帯式地対空ミサイルをエフェクターとして使う防空システムがVSHORAD、と考えていただければ、そう間違ってはいない。小型のスティンガーでも数千メートル程度の有効射程があるから、攻撃ヘリの側から見ると、短射程の対戦車ミサイルではアウトレンジできない。
ただ、小さくて安価で数を恃んでくるUAVが相手となると、こうしたミサイル・ベースの防空システムは分が悪い。ターゲットに対して、撃ち落すための経費が高くつきすぎて交換比率が悪い。数十万円、あるいはせいぜい数百万円程度で製造できそうなUAVを撃ち落とすのに、1発で数千万円、あるいは億単位の値札がついたミサイルを使うのは「コスパが悪い」。
機関砲の復権
そんな事情によるのか、C-UASの分野で機関砲を活用するアイデアが出てきている。もともと、地上軍の防空において「多層化した防空システムのうち最後の砦」となるのが対空機関砲だったが、それが改めて見直された感がある。
ただ、相手が攻撃ヘリコプターや戦闘機の場合と、相手がUAVの場合とでは、考え方が違ってくると思われる。なぜかというと、攻撃ヘリコプターや戦闘機が相手なら「撃った弾を命中させる」ことが前提となるが、小型で、しかも数が多いUAVを相手にして、同じメソッドが通用するかどうか。
機関砲の弾ならミサイルよりもずっと安い。しかしそれでも、交換比率を考えたときの費用対効果はどうか、多数のUAVが飛来したときの対処能力はどうか、と考えると問題なしとはいえない。
30mmないしはそれ以上の口径を持つ機関砲になると、弾は鉄や鉛の弾芯を入れただけのボール弾ではなく、空中炸裂弾の事例が多くなってくる。空中炸裂弾に近接信管を組み合わせれば、敵機の近くを通ると起爆するので、直撃させなくてもダメージを与えることができる。第二次世界大戦のころからやっていることである。
実際、ノースロップ・グラマン(元をたどればアライアント・テックシステムズ/ATK)の大口径機関砲弾では、「空中炸裂弾でC-UASを」という触れ込みを用いている製品がある。ただ、UAVは小型だから、その分だけ近接信管にも鋭敏さが求められよう。
もうひとつのアプローチとして、プログラマブル空中炸裂弾が考えられる。もともと、遮蔽物の陰に隠れている敵兵の頭上で炸裂させることを企図したものだ。真正面から撃っても遮蔽物に邪魔されてしまうが、頭上で起爆させて弾片をまき散らせば遮蔽物の意味がなくなる、という考えによる。
そんな仕掛けをどうやって実現するか。必要な要素は二つあって「測距」と「起爆秒時の設定」。弾の飛翔速度は事前に分かっているから、距離を測定すれば、撃ってから何秒後に起爆させればいいかが分かる。それを、弾を撃つときに個別に、信管にプログラムしてやればよい。
と思ったら、ノースロップ・グラマンのプログラマブル信管では違う方法を用いている。機関砲も御多分に漏れず、砲身にライフルが刻んであり、撃った弾は回転しながら飛び出していく。飛翔速度と回転数は事前に分かるから、「何回転したら起爆せよ」とプログラムする仕組みだそうだ。
空中炸裂弾をC-UASに応用する
となれば、後は「ターゲットとなるUAVまたはUAV群までの距離」を測定する道具立てがあれば、そこに空中炸裂弾を撃ち込んで、一度に複数のUAVを無力化できるという話になる。いくら相手が数を恃んでくるからといっても、迎え撃つ側が第二次世界大戦のときみたいに弾幕射撃をやっていたら、弾がいくらあっても足りない。ある程度、狙って撃ち落とす仕掛けは要る。
距離を精確に測定するとなると、やはりレーダーが頼りになると考えられる。もちろん、レーダーの分野でもC-UASが課題になっているから、小型で低速の目標を精確に捕捉追尾できるレーダーの開発に発破がかかっている。
その一例が、RADAシステムズ製のSバンド・レーダー、RPS-42。最大探知可能距離は30km程度で、ラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ製のジャマーやレーザー兵器と組み合わせる。IAI/エルタ・システムズ製のELM-2180M、ELM-2026B、ELM-2026といったレーダー製品も、C-UAS用とうたっている。
また、RTX製のKuRFS(Ku-band Radio Frequency System)レーダーもC-UAS用をうたっているが、これは目下のところ、同じRTX製のコヨーテUAVをエフェクターとする方向で話が進んでいる。
具体的にこれらの製品を用いるかどうかは別として。脅威の飛来を知り、距離と方位を精確に把握できるセンサー、それとエフェクターとして機関砲と空中炸裂弾が揃えば、あとは射撃統制システムを中核とするシステムを構築することで、C-UASを実現できる。
そんなシステムの一例が、ラインメタルのスカイレンジャー。ラインメタル・エア・ディフェンス(旧称のエリコンがなじみ深い)が手掛ける35mm機関砲KDGまたは30mm機関砲KCE、それとセンサー機材を、旋回砲搭にパッケージしており、弾は空中炸裂弾AHEADを使う。
なお、捜索レーダーは別に用意する必要がある。車体は選択の自由があるようで、ウクライナ向けではレオバルト1戦車の車体を使うという。
井上孝司
鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナ4ビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。このほど、本連載「軍事とIT」の単行本第6弾『軍用通信 (わかりやすい防衛テクノロジー)』が刊行された。
