前回は、米海軍や海上自衛隊で使用している対潜戦(ASW : Anti Submarine Warfare)の総合システム「AN/SQQ-89」を取り上げた。書き上げて一読してみたところ、「ハードウェア構成は分かるが、どう機能させるかがピンとこない」と感じたので、現場でどんな風に機能させるのだろうか、という話も取り上げてみたい。
ただし、筆者は現場で勤務していたわけではないから、推測も混じる点はご容赦いただきたい。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照。
まず曳航ソナーで早期警戒
水上艦だけでなく、潜水艦でも事情は同じだが、アクティブ・ソナーを用いてのべつ幕なしに探信していたのでは、敵潜水艦の艦長に対して「潜水艦を捜索している誰かさんがいる」ことを広告するだけである。
敵潜を追い払い、寄せ付けないようにするだけが目的ならそれでも良いが、狩り立てようとすれば、こちらの存在は秘匿しておきたい。
すると、曳航ソナーを展開して低速で航行しながら、敵潜が発するノイズを追い求めるのが最初の仕事となる。曳航ソナーをパッシブ・モードで動作させた場合、何かを聴知しても分かるのは方位だけで、距離が分からない。だから必要に応じて変針しつつ、音源の位置を突き止める工夫が要る。