本連載では日本ヒューレット・パッカード(HPE)のさまざまな社員の「こぼれ話」を綴ります。→過去の「マシンルームとブランケット」の回はこちらを参照。

日本において新型コロナウイルスも第5類感染症に移行され、日常においてもパンデミック発生前に少しずつではありますが戻っているような感じがします。

働く環境においても、コロナ禍とはうってかわり、たとえ従業員がリモートワークをする環境が整っていたとしても、完全にオフィス出社に戻す企業や、週の半数以上は出社を推奨するなど、こちらもまたパンデミック発生前の働き方に回帰する企業が急激に増えてきました。

これにはいくつか理由がありますが、その1つである社内ナレッジの共有(継承)について今回はお話ししたいと思います。

社内ナレッジとは?なぜ、再注目されるようになったのか?

社内におけるナレッジはたくさんあります。1番想像しやすいものは、やはりPowerPointやWordで作成したコンテンツではないでしょうか?

このコンテンツには業務を進めていくうえでのナレッジがたくさん詰まっていると思います。ほかにも、例えばQ&Aやマニュアルなどもナレッジですし、今となっては当たり前に利用しているビジネスチャット内での会話もそれに相当します。

ナレッジマネジメントに関しては今に始まった話ではなく、昔から定期的に話題に挙がってはいつの間にか消えていきというサイクルを繰り返しています。

ただ、ここ最近この社内ナレッジの共有(継承)が市場で再注目されています。私も直近数カ月で多くのお客さまよりご相談をいただいており、そのニーズを体感している状況です。

主な要因として、以下のような背景が考えられます。

  • クラウドサービスの活用が加速したことでデータ(社内ナレッジ)があちこちに散在してしまったため、欲しい情報にたどり着かない

  • パンデミック発生後からリモートワーク中心の働き方となり、ちょっとした相談や雑談から得られていた情報(社内ナレッジ)が得られなくなった

  • 日本においても転職市場が活性化し、リモートワーク中心の働き方も相まって必要な情報を十分に引き継がれにくくなった

  • リモートワーク中心の働き方になり、業務の属人化がさらに顕著になった

  • リモートワークにおける課題例

    リモートワークにおける課題例

今まではどちらかというと、いかに快適にリモートワークを実施できるか、という部分に企業として投資を優先してきたと思いますし、それと同時にセキュリティの強化にも投資をしてきた企業がほとんどかと思います。

そして、その環境が企業の中である一定の基準を満たしたことで、次の課題、つまり“より効果的に働くにはどうすればよいか”という部分に、よりフォーカスし始めているのではと推測されます。

ツールの導入だけでは解決しない!?考え得る2つの方法と運用の必要性

社内ナレッジを共有(継承)する方法としては大きく2つあると考えます。

1. コンテンツを中心としたナレッジ共有(継承)
まず1つはコンテンツを中心としたナレッジの共有(継承)です。上述したように、こちらはいかに早く必要な情報にアクセスできるかがポイントとなります。

ここにおける方法は2つに分類されます。

A. 社内に散在するコンテンツを1カ所に集約する
コンテンツの場所を例えば1つのオンラインストレージに集約すれば、自ずと必要な情報を探す場所も1カ所になるため、少なくとも「どこにあるかわからない」という状況は改善されます。

B. Enterprise Search製品を導入する
こちらはどちらかというと現在散在しているコンテンツはそのままにしておき、Enterprise Search製品を導入することによってAIの力を借りながら検索しやすくする方法です。

どちらも一長一短はありますが、ただツールを導入すれば解決するという話ではありません。Aの場合には、例えばオンラインストレージを導入してそこにコンテンツを集めようとなった場合、ある程度運用ルールを決めることになるかと思います。「コンテンツを作成した際は必ずここにアップロードしてください」といった運用ルールです。

しかし、こちらはあくまで人がマニュアルで実施するものとなるため、例えば普段Microsoft Teamsを利用して会議を実施し、その場でコンテンツを共有している場合、どうしても再度アップロードする手間をかけることになります。これは長く続くでしょうか?

恐らく、自然とコンテンツが集まる仕組みをITで整えてあげるか、コンテンツを共有することを評価する仕組みを整える必要があります。

Bの場合は1カ所にコンテンツを集約させるわけではないので、「検索の性能」を高める必要があります。多くの場合は、コンテンツ1つ1つにラベリングをすることでその性能を高めます。要は、いずれの場合においてもツールの導入だけでは解決しないのです。

2. ヒトを中心としたナレッジ共有(継承)

社内ナレッジを共有(継承)するもう1つの方法はヒトを中心としたものになります。コンテンツは、作成した瞬間に陳腐化します。なので、いくら必要な情報にアクセスできたとしても、その情報が最新でなければ意味がないという見方もできます。

その考え方を尊重した場合に最善の方法として「少なくともその情報を持っている“ヒト”にアクセスできるようにする」といったものが挙げられます。

これはKnow-Whoという領域で、そのヒトがそのようなスキルを持ち、過去・現在どのようなプロジェクトに関わり、どのようなコンテンツを作成し、社内のヒトとどういった関りがあるのかを可視化するものです。

世の中にはこのツールとして利用できるKnow-who製品が存在していますが、こちらもコンテンツを中心としたものと同様に、そのヒトに関する情報をあらかじめインプットするといった運用が必要になります。

完璧なツールは現状存在しない

冒頭、記述したように、この領域が注目されては立ち消えるサイクルを繰り返してきた主な理由として、ツール導入だけでは課題解決の要件を完全に満たしづらいという点、そしてツール導入には費用対効果が必ず求められるという点が挙げられます。

現状、社内ナレッジ共有)継承)に関する課題を完璧に解決できるツールは存在しません。だからこそ、まずは自社に合った方法を選び、そしてどのツールをどのように運用していくかを検討する必要があります。

働き方の多様化が進む現代だからこそ、自社の大切な財産であるナレッジの共有(継承)に関して今一度考えてみてはどうでしょうか。

日本ヒューレット・パッカードの社員によるブログをぜひ一度ご覧ください。製品やソリューションの紹介だけではなく、自身の働き方や日々のボヤきなど、オモシロ記事が満載です。