アニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第16回では、これまでの総集編として、アイデア出しから絵コンテ完成までの流れをまとめてみる。

この連載では、アイデア出しから、絵コンテ作成まで解説してきました。次回から、より具体的に制作内容に触れていく予定です。そこで、今回は改めて絵コンテ作成までの流れをまとめてみたいと思います。

1.アイデアをまとめる(第2回、第3回)

アイデアをまとめるにあたり、その核になる部分(面白いと思われる部分。売り)を3つ書き出し、シンプルにまとめた状態で吟味する。

まとめたアイデアは、これがやりたいんだという「作者の視点」、言いたい事が伝わる適切な内容かチェックする「観客の視点」、その作品をどういう風に観客に届けるのかという「プロデューサーの視点」の3点からチェックする。

2.アイデアのビジュアル化(第4回)

自分の身についている「手なり」のテイストが作ろうとする作品の為に、一番良いものか考えてみる。作品の為にはスタイルに一工夫の変化をつける勇気も必要。

手描きや、様々なアプリケーションを試行錯誤し「自分の欲しい線」を探してみる。絵が苦手でも、3Dやビデオを下書きにしたり、立体を写真で撮影して素材にする等作品の為には「なんでもあり」という気概で取り組む。

3.キャラクターの創作(第5回、第6回、第7回)

キャラクターの履歴書は、あった方がいいが、それがストーリーをブレさせるようなら必要ない。逆に、性格の芯が太く明確なキャラクターの方が行動原理が明確でわかりやすい。

「立つキャラ」の性格には、なにかひとつ「すごく○○」な部分があるということを意識する。さらにしっかりした「目的」や「欲求」を与えるとキャラクターは自ら動き出す。例外として個性を押さえ「観客を憑衣させる」為の主人王も存在する。

類似キャラとのカブリの恐怖から逃れる事は不可能。キャラクターは自分の知識や経験の集大成だと捉え、同ジャンルの作品の鑑賞を止め、広い目線でインスピレーションを求めてゆく。小手先の修正は解決策としてはあまり勧められない。

誠実に創作された物には自動的に著作権が派生する。マルシー表記は法的には必要とされていないが、オリジナルとしての意思表示と責任の表明ができる。

4.ストーリーの創作(第8回、第9回)

脚本の目安は、400字原稿用紙1枚が1分間。セリフの多さや、作風によって変わるので自分のリズムを経験で見つけてゆく事。

短編作品の脚本は、言いたい事をぎっしり詰めたものから「何を削るか」という作業がキモになる。短編なので、いじりすぎて破綻しても書き直すぐらいの気持ちで。キャラクターの出入り等を意識して大胆に削ると意外なリズムが生まれる事がある。

「繰り返しのアクション」、「段取芝居として観客が想像で補える部分」などは思い切って削ってみる。コアの物語を濃縮させ、明確にする為の削りは躊躇わずガリガリと行う。

5.創作アプリケーションの選択(第10回)

自分の作風に何が合うのかといういうのを考えてから、ツールを選択しても良い。最終的には、何を使うかというより、どれだけ自分のものにしているかが重要。

就職に直結する事を考えれば、映像表現なら「After Effects」、Web系なら「Flash」、アニメスタジオなら「Retas Studio」という決め方をしてもいい。  

6.紙からデジタルへ(第11回、第12回)

紙に書いた物をスキャンする、スキャンした物をPCでトレースする、PC上で作画するなどアイデアをデータ化する方法は様々にあるが、「アニメーション」を作る事を考えると丁寧な絵にかかる労力は、制作時間に直結する。自走と現実のバランスの中で、完成できる労力を逆算しておく。

「Adobe Flash」を使う場合、作画枚数が少なく滑らかな動きを表現できる「モーショントゥイーン」か、表現に制約がない「コマアニメ」を主に使うか、手法のミックスのバランスを考える。それらが、絵の表現にも関係してくる。  

7.絵コンテの製作(第13回、第14回、第15回)

文字で書かれた脚本を、カット割りを想定しながら「割って」ゆく。自分のリズムと、観客のリズムを想定しながら、作品の印象を決めてゆく。

カメラ位置や構図によって印象を操作する。また、映像の組み合わせで新たな意味を喚起する「モンタージュ」を行う。

これまでに選択した表現方法にあった構図を決めてく。手法のトーンを維持するか、演出の意図を優先するのか両方のバランスの中で良い着地点が見つかる様にコンテを切ってゆく。

絵コンテ用紙には特に決まりはなく、必要な情報が明確に記されていればよい。絵コンテには「スタッフとのイメージ共有を促す指示書」と「映像プランを練りこんでゆく設計図」という役割がある。より精度を上げる為に、絵コンテも制作前にスケッチをするなどして、考えをまとめてゆく。Flashを使って、直接「ビデオコンテ」を作るという手法もある。

このような話を前回までしてきましたが、次回からはFlashを使ったアニメーション制作の実践編として、やってゆこうと思います。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメ『BABY&GIRLS アロ恵』公開中。全国のTOHOシネマズで本編前に上映されている短編『紙兎ロペ』では、アニメーション制作を担当。