中国のお話に、こんなものがあります。
昔、闘鶏を育てる名人が、ある国の王のために鶏を育てていました。
王は鶏を闘わせるのが楽しみで、「もう闘わせていいのではないか?」と何度も名人の元を訪ねますが、名人は「まだ強がって威張っています」「まだ他の鶏に敵対心をむき出しにしている」「気負いすぎています」と断り続けました。
何日も経ってようやく「まるで木で作った鶏の像のように、平然としていられるようになりました」とその鶏を献上したといいます。
「木鶏鳴子夜(もっけいしやになく)」という禅の言葉があります。
このお話の鶏のように、木で作った像のような何事にも動じない強さを持った鶏が、子夜(子の刻:深夜0時頃)に静かに鳴く姿を表した言葉で、「本当に強いものは、強く見えるよう振る舞ったり周りに攻撃したりせず、じっと静かに構え、人知れず努力をしているものだ」と言った意味が込められています。
見かけや言葉の強さで他人に対して優位に立とうとしていたり、自分の努力をひけらかしたりしているうちは、強く見えてもまだまだ心は臆病ということかもしれません。
周囲と比較して臆病になったりそれ故に見栄を張ったりせず、自分の人生を素直に楽しめるよう、周りがどうあっても、何と言われても平然としていられる強さを持ちたいものです。
■今回登場したのは、禅のぼさつが宿った「こねり」
■著者紹介
Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。
「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。