日本最大のスタートアップ育成拠点「STATION Ai」(愛知県名古屋市)が10月31日に開業した。地上7階建て、延べ床面積2万3000平方メートルの大型施設に、国内外の500社を超えるスタートアップ企業と、トヨタ自動車をはじめとするパートナー企業約200社が参画する。ベンチャーキャピタル(VC)の支援機関や大学なども参画し、製造業に強みを持つ愛知の既存産業と新規事業を融合させ、新しい価値の創出を目指す。
31日に開催されたオープニングセレモニーで、同施設の運営を手掛けるSTATION Ai 代表取締役社長兼CEOの佐橋宏隆氏は「愛知県は『スタートアップ不毛の地』とも呼ばれる。STATION Aiをアジアにおけるオープンイノベーションの聖地にしていきたい」と意気込みを見せた。
トヨタ×スタートアップで“化学反応”を
STATION Aiには、参画する企業が利用するオフィスフロアだけでなく、一般に開放されるイベントスペースや飲食スペースといった設備もある。IoTやAI、ロボットなどの最新技術もふんだんに活用されており、起業家らの創造性をかき立てる空間となっている。
中央が吹き抜けの開放的な空間となっており、各階をスロープでつないでいる。1階から6階まで歩いて移動することができ、自分の部屋や席に向かう途中に他の企業との交流が自然に生まれる仕掛けだ。
STATION Aiによるスタートアップに対する支援は手厚い。事業内容や資金調達に関する相談や採用・人材の支援、ファンド出資など幅広い支援を行う。起業家への支援だけでなく、社会人や学生向けのプログラムも用意。「多角的な企業機運を醸成し、起業家の裾野を広げていく」(佐橋氏)とのこと。
その中でも最も注力するのが、トヨタ自動車をはじめとする支援企業とスタートアップとの共創支援だ。自社の技術と他社の技術を掛け合わせて新たな価値を生み出す「オープンイノベーション」の創出につなげる。「企業同士をつなぐことはもちろん、スタートアップ支援を目的としたイベントの開催など、自然にコミュニケーションが発生するような仕掛けを施していく」(佐橋氏)
目指すはアジアの「STATION F」
STATION Aiがベンチマークに据えるのがフランス・パリにある世界最大のスタートアップ育成拠点「STATION F」だ。2017年に開設したSTATION Fは、フランス通信大手のIliadの創業者であるグザビエ・ニール氏が旧駅舎を改装して造った施設で、一つ屋根の下にスタートアップ、VC/CVCなどの投資家や大企業、政府支援機関などが集まっている。MicrosoftやMeta、Amazonといった巨大IT企業や、地元フランスの大企業も参画している。
佐橋氏は「STATION Fには1000社以上のスタートアップが入居しており、年間1万社以上から応募がある。『協業するならSTATION F』というくらい、スタートアップだけでなく、世界中の投資家や大企業が集積している」と説明したうえで、「STATION Aiに参画するスタートアップは現在約500社だが、将来的には1000社を目指している。アジアでスタートアップと協業するならSTATION Aiに行くという状況を作っていきたい。もう『スタートアップ不毛の地』とは呼ばせない」と述べた。