本連載では、『プログラミング言語恐怖症』の筆者が、サイボウズが提供するノーコード開発ツール「kintone(キントーン)」を使って気ままに業務アプリを作り、それを紹介している。
前回は、kintoneでアプリを作成する上での時短術の一部を紹介した。作業効率を上げるショートカットキーや、アプリの動作テスト、“倉庫"として使うグループフィールドが気になる方はぜひ前回を読んでみてほしい。
今回は、編集部の実務で使えるアプリを作ってみようと思う。kintoneの使い方に慣れてきたとはいえ、まだまだ未熟者だ。子どもが考えたよく分からない遊びに付き合っているときのような、「温かい眼差し」で読んでいただきたい。
編集部宛ての問い合わせを一元管理したい……
今回は、編集部向けに特化した「問い合わせ管理アプリ」を作ってみようと思う。
コールセンターほどではないが、「マイナビニュース」編集部にも毎日たくさんの電話がかかってくる。企業の広報担当者や広報代理店などから、説明会や発表会の案内、インタビューの提案、記事の進捗確認など、多種多様な問い合わせが来る。
それらの問い合わせは、電話を取ったオフィスにいる社員が、ビジネスチャット「Slack(スラック)」を使って共有している。しかし、マイナビニュースには「ライフ」や「エンタメ」、「デジタル」や「IT」など複数のジャンルがあり、それぞれのジャンルでSlackのチャンネルがあるため、問い合わせを一元的に管理できていないのが現状だ。
しかも、問い合わせ内容をSlackのチャンネルに投げるだけで、「誰が対応しているのか」「対応済みなのか」といったことが分からない。もちろん、すべての案内に対応するのは現実的ではないし、その必要性もないが、「誰かが確認しているかどうか」といったことくらいは、編集部全員が一目で分かるようにしたい。公式の問い合わせフォームもあるが、それもメールでのやり取りで、一元化・可視化されているとは言いにくい。
テレワークが浸透したことや、当社オフィスがフリーアドレス制になったことも、問い合わせ管理の重要性を高めている気がする。ひと昔前の、原則出社・固定席時代は、その場で電話を担当者につなぐことも今よりは多かった。
よし。編集部の業務効率化に少しでも貢献できるように、一肌脱いでみよう。一肌脱ぐといっても、kintoneでサクッとアプリを作るだけだが……。
超便利な「サンプルアプリ」を使ってみる
これまでは、練習の一環として一からアプリを作っていたが、今回はkintoneが用意しているアプリのひな形「サンプルアプリ」を使ってみたい。
「日報」や「顧客リスト」、「タイムカード」など、さまざまなサンプルアプリが用意されており、部署や業種から探すことができる。今回は「問い合わせ管理」のサンプルアプリを活用させてもらう。
そのまま使ってもいいくらいクオリティの高いアプリだが、これを編集部用にカスタマイズしていく。サンプルになるレコードも登録されているので、大変参考になる。ちなみに、メールでの問い合わせは1日あたり数千件の規模になるので、今回は電話による問い合わせに絞って考えてみよう。
「問い合わせ管理」のサンプルアプリには、以下の項目(フィールド)があった。
・顧客名(文字列)
・ご担当者名(文字列)
・対応担当者(ユーザー選択)
・受付日時(日時)
・対応状況(ドロップダウン)
・問い合わせ種別(ラジオボタン)
・詳細(文字列)
・期限(日付)
・対応日時・対応内容・添付ファイル(日時・文字列・添付ファイルをグループ化)
さすが、kintone開発者が生み出したサンプルアプリ。筆者が必要だろうと考えていたフィールドがほとんどすべてある。本当にそのまま使ってもいいくらいだ。ただこのままでは、一肌脱いだというより「一肌着させてもらった」状態になってしまいそうなので、少しだけ調整していこう。
編集部のメンバーが、企業名と同じくらい気にしていることは「どういった内容の案件なのか」だろう。よって、詳細に加えて、短い文章でどういった案件なのかを示すフィールドが先頭に欲しい。
また、問い合わせ種別(今回の場合は、説明会・発表会、イベント取材、個別取材、記事に関することの4つ)に加えて、どのジャンル宛ての問い合わせなのかも「ラジオボタン」を使って表現したい。
そして、電話での問い合わせは特定の誰か宛ての案内であることが多いので、受電対応した担当者に加えて、「誰宛ての案内なのか」を示すフィールドも配置しよう。個別の案内はSlackチャットによる共有でも事足りるかもしれないが、その担当者が休暇中や出張中なら対応が遅くなってしまう。同じジャンルの他の編集部メンバーがすぐ対応できるようにするためにも、オープンにする必要があるだろう。
そのほか、広報や広報代理店の担当者の連絡先を記入するフィールドや、問い合わせ内容に関する資料を添付するフィールドも追加しておこう。
アプリのデザインもせっかくなので変えたい。前回に紹介した、kintoneのアイコンを無料で配布しているサイト「ICONE(アイコーン)」を活用しよう。
kintone公式のナウでおしゃれなお仕事まんが『ホップ☆ステップ きとみちゃん』の主人公「彩紡きとみ」を推しているので、アイコンをきとみちゃんに変更してみる。サイボウズは、このWebサイトでまんがを無料公開しているので、仕事の合間にくすっと笑いたい人はぜひ読んでみてほしい。
「対応状況」可視化で対応漏れを防止
早速、いくつかの問い合わせを登録してみた。
問い合わせ管理のサンプルアプリには、「対応状況」と「種別ごとの問い合わせ数推移」を可視化するグラフがすでに作成されている。また、「未対応の問い合わせ一覧」といった一覧も用意されており、対応漏れの防止にもつながりそうだ。サンプルアプリは、本当に痒い所に手が届くなあ。
ただし、今回のアプリは主に広報担当者からの取材案内を管理するものだ。数多くある案内すべてを対応するのは現実的ではないし、取材日を過ぎたものに関しては非表示にしてもいい気がする。
また、アプリを作ってみたはいいものの、肝心なのは編集部のメンバーが使ってくれるかどうかだ。「せっかくアプリを作ったのに、みんなが使ってくれない……」なんてことはざらにありそうだ。
何かしらの設定によって改善できるかもしれないが、まずは実際に編集部のメンバーに使ってもらうのが得策だろう。何度も編集し、理想のアプリになるまでトライ&エラーを繰り返せる点はkintoneの魅力の一つだ。
今回は「問い合わせ管理」というサンプルアプリを使って、今まで以上にサクッとアプリを作ることができた。一肌脱ごうとする前にできてしまった。他にもさまざまなサンプルアプリが用意されているので、kintone開発担当者の手の行き届き具合を実感してみたい方は、試しに使ってみてはいかがだろうか。