宇宙の微小重力環境下で、モノが製造される時代がすでに始まっている。
例えば、読者の中には、Redwire(Made In Space)の3Dプリンターで工具を製造したりしているシーンなどを思い浮かべるかたもいらっしゃることだろう。ほかには、植物工場などだろうか。
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今回は、光ファイバーを紹介したい。米国のFOMSというベンチャー企業は、すでに国際宇宙ステーション(ISS)で、宇宙の微小重力という環境を活かして光ファイバーの製造を実証している。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。
FOMSのSpaceFiberとは?
FOMSとは米国サンフランシスコを拠点にするベンチャー企業。
軌道上での光ファイバーの製造を目指して2015年に設立された。これまでにアメリカ航空宇宙局(NASA)のSBIRプログラム(中小企業技術革新研究プログラム)で、「SpaceFORM」という微小重力環境下での軌道遠隔製造用宇宙施設の開発の一環として手掛けてきたという。
2014年には、飛行機での微小重力環境を実現することによって光ファイバーの製造に関する技術実証なども行い、宇宙用の光ファイバー製造装置を開発。2019年にSpaceXのFalcon9によってISSへと打ち上げられた。
ISSへと輸送された宇宙用の光ファイバー製造装置は、「Fiber Module」と呼ばれているようだ。Fiber Moduleは、おおよそ100cm×50cm×50cmくらいのサイズだろうか。このFiber ModuleをISS内のラックの一角に宇宙飛行士に設置してもらい実証が行われた。
この実証により、微小重力環境という独自の特性を利用することで、光ファイバーの欠陥が大幅に減少され、ガラス組成を大幅に改善できたという。つまり、高品質な光ファイバーの製造に成功したのだ。
今回、ISSで製造されたのは、ZBLANというフッ化物ベースの光ファイバー。このZBLANというのは、通常のシリカベースの光ファイバーに比べて伝送できる光の波長帯、希土類元素をドープしたときの発光特性、機械的強度、耐水性などの点でメリットが多いという。 今回のこの微小重力環境下の実証で製造されたZBLANは、シリカベースの光ファイバーに比べて、データ伝送に最大100倍効率的に機能するということもわかったという。FOMSは、この光ファイバーについて「SpaceFiber」という商標も取得している。
宇宙で光ファイバーを製造する狙いとは?
いかがだっただろうか。
FOMSは、この微小重力環境下を活かすことで、高品質な光ファイバーSpaceFiberを製造することを実証した。
では、FOMSの狙いはなんだろうか。実は、このSpaceFiberを宇宙で使用するということはあまり言及されていない。どちらかというと、宇宙という微小重力環境下をうまく活用することで、高品質な光ファイバー、特にZBLANを製造し、地球へと持ち帰り、地球上で活用するのだ。
現状だと、1回のミッションあたり50kmの光ファイバーを宇宙で製造できるという。宇宙で製造し、地球へとリターンすることで損失が少ない正確な情報伝送に使える光ファイバーを販売できるのだ。