宇宙で生活するヒトの食糧をロケットなどの輸送機で運ぶ量には限界がある。そのため、複数に分けて運んでいるのが実情だが、ロケットの輸送費が高いのが課題だ。
そんな課題に、ロケットの輸送費を下げるのではなく、宇宙で食糧を生産するというアプローチで取り組む企業がある。Solar Foodsだ。
では、今回は、このSolar Foodsとはどのような企業なのか、宇宙での食糧生産とはどのようなアプローチなのか、そんな話題について紹介したいと思う。
Solar FoodsのSoleinとは?
Solar Foodsとは、ヘルシンキのスタートアップ。宇宙ベンチャーではなく、バイオテクノロジーベンチャー。2017年に設立された。
彼らは、Solein(ソレイン)というタンパク質を製造できる技術を持っている。
もう少し詳しくいうと、Soleinは、水、ある栄養素、CO2、再生可能エネルギーなどからの電力を利用することでSolein Bioprocessという過程を経て、プロテインを製造することができる。
Solein Bioprocessとは、酵母の発酵プロセスに似ているというが、詳細は不明だ。これによって、粉末状のSoleinが製造できるのだ。
Soleinは、タンパク質だと申し上げたが、他の栄養素も含まれている。詳細な栄養素は次のようだ。65~70%がタンパク質、5~8%の脂肪、10~15%の食物繊維、3~5%のミネラル。100gあたりのSoleinは、385kcalのエネルギー。ビタミンB2については、1日の基準摂取量の1.7倍、ビタミンB9とビタミンB12の基準摂取量の5倍以上など、他にもさまざまなビタミンが含まれているという。
Soleinの宇宙での生産ユニットとは?
Soleinは、生産ユニットで製造される。このSoleinの生産ユニットは、火星への飛行を想定して検討が進められているようだ。例えば、火星へはおおよそ180日ほどの期間が到着まで必要となる。
そして、もしなんらかのミッションなどを含めればトータルで3年ほどの年月がかかるという。もちろん、1名のみによる飛行は映画の世界ではないのでありえず、4人が最低人数だろう。
もし4名が火星へと飛び立ち、それぞれが1日3食を食べるとすると、3年間の飛行で11トン近くの食料が必要になるという。これは“重い”。これを解決しうる超大型のロケットで行けば良いかもしれないが、Solar Foodsは、別のアプローチでこの課題を解決しようとしている。
そこで、Solar Foodsは、NASA(アメリカ航空宇宙局)とCSA(カナダ宇宙庁)と共同でSoleinの生産ユニットの開発を実施している。手始めに、6人の宇宙飛行士が生き延びることができるのに必要なSoleinの生産ユニットの開発に取り組んでいるそうだ。
Soleinの生産ユニットの大きさは、72cm×162cm×56cmのキャビネット内に収容されるといい、意外と小型だ。重量は約150kg、平均消費電力が1,500Wを想定しているという。
しかし、まだこれでは、大きすぎるという。さらに生産ユニットの重量を50kgまで削減するためにさまざまな軽量化を検討しているようだ。ちなみに、1日に1kgのSoleinを生産するには、50kWhの電力、50リットルの水が必要になるという。
いかがだっただろうか。Soleinは、味がないと言えるくらいの風味であるという。
このメリットを活かすことで他の食事と混ぜたり、個人的な味覚に合うように味付けしたりすることもできる。このように、おいしく、コスト安で宇宙でも必要な栄養をしっかりと摂取できる未来の宇宙食となりえるのだ。
Solar FoodsによるとSoleinの生産ユニットは、完成までそれほど多くの時間はかからないというから楽しみだ。