CO2と水からお酒が作れる、そんなテクノロジーを有する企業が存在する。Air Companyだ。ちょっと不思議な印象を持ったかたも多いだろう。

彼らは、CO2を空気から抽出して、それを純粋なエタノールへと変えることができるというのだ。そしてその技術は、ただお酒を作ることだけに止まらない。では、Air Companyとはどのような企業なのか、未来に向けてどのような構想を立てているのか、今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

CO2と水から作ったお酒 Air Vodkaとは?

まず、Air companyを紹介しよう。 Air companyは、米国ニューヨークを拠点とするスタートアップ。2017年に設立されている。彼らは、空気中から抽出したCO2を活用することで、ユニークな製品を創り上げる技術を有している。

そして、ユニークなプロダクトを創造するのみならず、空気中からのCO2を抽出するという、環境問題などにも取り組んでいるのだ。

Air companyの紹介動画(出典:COSIA)

そして、Air companyが製造したのが、「Air Vodka(エアウォッカ)」だ。Air Vodkaは、CO2と水のみを原材料とするウォッカのこと。

CO2を空気中から抽出し、純粋なエタノールへと変えることができる技術を採用しているという。

製造されるAir Vodka1本あたり、CO2が空気中から1ポンド(約450g)が除去できるという。そして、Air Vodkaのパッケージングの素材に関しても、100%リサイクル・リユースが可能なものを使用していて、日本を含め世界各国で盛なカーボン・ネガティブな取り組みなのだ。そして、このAir Vodkaは、世界初となるカーボンネガティブなお酒という。 Air Companyのホームページから購入可能で、750mlのボトルが1本74.99ドルとある。

  • Air companyのAir Vodka(出典:Air company)

実は、Air Companyのプロダクトはお酒だけではない。空気中からCO2を抽出するという同様な技術で、消毒用アルコールスプレーも開発している。これも、世界初のカーボンネガティブのアルコールスプレーという。 Air Companyのホームページから購入可能で3本セットで25ドルとある。

  • Air Vodka

    Air companyのAir Vodka(出典:Air company )

Air Companyの未来の構想とは?

ここまでAir Companyのプロダクトを紹介した。この話を聞いただけでも、ユニークで興味深いテクノロジーを持った企業であることがわかっていただいたと思う。

しかしながら、Air Companyはこれだけに止まらない。実は、彼らが目指しているのは、火星なのだ。

火星はどのような環境なのかご存知だろうか。火星の大気は、CO2(95.32%)、N2(2.6%)、Ar(1.9%)で構成されている。そして火星地表面の平均温度は-60℃と低温なのだ。

もう、お気づきだろう。火星の大気がほぼCO2であるため、人類が目指している火星でのエネルギー資源としてAir Companyの独自のテクノロジーを活用しようというのだ。

もう少し具体的な表記がホームページにある。彼らは、火星の大気と地球上の空気の両方からのCO2をサステイナブルなロケット燃料に変換して、輸送燃料とすることを考えているのだ。

そしてもうひとつある。それは、CO2から砂糖を作るというもの。 2021年8月25日、NASAが開催したCO2 Conversion Challengeにおいて、Air Companyは賞金を獲得しているようだ。このCO2 Conversion Challengeは、CO2から砂糖を作るという技術を競うもの。

彼らは、水素とCO2によってメタノールを作る。そして、水素を除去すると、メタノールがホルムアルデヒドに変わる。これは、建築材料や洗浄剤の製造に使用される無色で匂いのきつい化学物質だ。そして、最後の化学反応においてD-グルコースである単糖を生成することができるという。 このように火星の大気のCO2からグルコースといった砂糖を火星で製造し、重要な原料の生産を可能にしようとしているのだ。

  • Air Companyが想像する火星の未来

    Air Companyが想像する火星の未来(出典:Air Company)

いかがだっただろうか。いかにAir Companyがすごい企業であるかわかっていただけたと思う。このように火星がフィードととなるのは少し先の未来になるかもしれないが、そのベースとなるテクノロジーを地球上で着実に実現し、しかも現在のビジネスや環境問題にマッチングさせている。この点にも凄さを感じるのは筆者だけだろうか。