2023年1月30日、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)は、脳神経疾患を緩和させることができるニューロチップ「NeuralTree」を開発したと発表した。では、このNeuralTreeとはどのようなものだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
脳神経疾患の症状を緩和する「NeruralTree」の仕組みとは?
NeuralTreeは、特定の脳神経疾患によって放出される脳波からの電気信号を検出するという。これらの電気信号は、パーキンソン病やてんかんなど、その症状によって異なる神経バイオマーカーだ。その検出した電気信号を基に、NeuralTreeは機械学習アルゴリズムによって症状を正確に分類し、その症状を緩和、もしくはブロックするための電気信号を患者へと送信するというものだ。使用の際には、患者の脳にソフト電極が埋め込み、それと繋がれたチップが動作するという仕組みだ。
NeuralTreeのメリットは、小型かつ低消費電力である点。また尊性能も、従来は32チャンネルと少なかったが、今回開発したものは256チャンネルと、大幅な多チャンネル化に成功。さらに、従来のニューロチップはてんかんに焦点を置いたものが多かった中、NeuralTreeは、幅広い脳神経疾患に対応できるものになっているという。
この幅広い脳神経疾患への対応の鍵となるのは、機械学習アルゴリズムだ。上述したように、以前のニューロチップはチャンネル数が少なく、機械学習させるにも、限定された疾患の情報を選び取る必要があった。しかしこの多チャンネル化によって、さまざまな脳神経疾患に対応したバイオマーカーを学習させることができるため、より正確な疾患状態の検出が可能になり、脳神経疾患に悩む幅広い患者を救える可能性が高まったのだ。
なお、同研究成果は『IEEE Journal of Solid-State Circuits』に掲載されている。
いかがだったろうか。NeuralTreeがもたらすのは、脳神経疾患の症状を緩和したり、ブロックしたりするだけではない。実はこのチップは、麻痺などで機能を失った患者にも対応できるというのだ。例えば、NeuralTreeから電気信号を送ることで、麻痺した指を動かしたりすることもできるという。
EPFLによると、疾患を原因とした脳波は、時間の経過とともに変化してしまうという。そのため今後は、このような変化にも対応できる自己アップデート型の機械学習アルゴリスムの開発にも力を注いでいるというから驚きだ。このような研究成果を垣間みると、脳神経疾患で苦しむことがない未来が訪れるのではないかと期待してしまう。すごい研究だ。