KDDI総合研究所(KDDI総研)は、人の心を深く理解し共感することができる「人間心理理解AI」に関する研究プロジェクトを、カーネギーメロン大学と共同で2022年9月より開始した。では、なぜKDDI総合研究所は、人間心理理解AIプロジェクトを始動したのか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

KDDI総研が開発を目指す人間心理理解AIとは?

KDDI総研は、カーネギーメロン大学のPeter Spirtes教授およびKun Zhang准教授とともに、人の心を深く理解し共感できる人間心理理解AIの共同研究プロジェクトを開始した。カーネギーメロン大学の2名の教員は、因果推論分野の世界的な権威だ。因果推論とは、インプットとアウトプットから、その因果関係を統計的に推定していく考え方のこと。KDDI総研は、この因果推論技術を活用することで、人の心を深く理解し共感するAIの実現を目指しているのだ。

KDDI総研が考える課題は、次のものだ。AIは、人の表面的な行動に基づいて、センシングによる測定や観測などによりデータを統計処理することは可能だが、人間がその行動に至った契機や人の欲求、性格などの心理的背景は考慮できていない。そのため、AIからの提案に対して必ずしも人が共感できないという課題があるのだ。具体的な例として、KDDI総研は次のような例を挙げて説明している。

「例えば、ユーザーが勉強中にスマートフォンを触って勉強が進んでいないとき、AIが単に勉強をするように促すだけでは、ユーザーの共感を得ることができません。ユーザーは実はスマートフォンを触りたくないと思っていること(欲求・信念)、しかし、勉強につまずいていてストレスを感じていること(環境)、さらには問題を先送りにしがちな性格であること、などをAIが理解することで、『問題を誰かに相談する』ように促すことが有効と判断することができます。」

そこでKDDI総研では、表面に表れる行動と、直接センシングできない複雑な人の心理や感情における因果関係を、人の表情・ジェスチャー・対話の内容などから因果推論により推測することを目指すというのだ。これによって、人間の心理を理解するAIからの提案が人から共感を得やすいものになり、解決策となり得るのだ。

  • 現在のAIとKDDI総研が目指す「人間心理理解AI」の違い

    現在のAIとKDDI総研が目指す「人間心理理解AI」の違い(出典:KDDI総合研究所)

いかがだっただろうか。KDDIとKDDI総合研究所は、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」を策定している。この人間心理理解AIの取り組みは、このKDDI Accelerate 5.0の具体化・実現に向けたものの1つだ。両社によるのAccelerate 5.0や人間心理理解AIなどを拝見し、未来は集団・協調というよりは個が前面に出て、言葉でなく主張・強調し活動・活躍することが重要視される時代になると肌で感じさせられた。とても素晴らしい取り組みだ。KDDI Accelerate 5.0の動画がYoutubeで公開されているので是非ご覧いただきたい。

KDDI総研らが推進する「KDDI Accelerate 5.0」の動画はこちら(出典:KDDI)