2022年9月27日、ウィスコンシン大学は、体組成データを活用し、腹部CT画像から将来の疾患や死亡リスクを予想するAIを開発し、その予測を可能にする性別固有の体組成しきい値を導き出した、という研究成果をRadiologyに投稿した。では、この研究成果はどのような点がすごいのだろうか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

  • 腹部CT画像との関連性から発見された、重視すべき体組成データのしきい値とは

    腹部CT画像との関連性から発見された、重視すべき体組成データのしきい値とは

CT画像から将来の疾患や死亡リスクを予想

繰り返しになるが、ウィスコンシン大学は、体組成データを活用し、腹部CT画像から将来の疾患や死亡リスクを予想するAIを開発し、その予測を可能にする性別固有の体組成しきい値を導き出したという。

医療現場でのCT画像を用いる場面では、一般に、患者の体組成データを普段の診察において利用するケースはごく一部だという。ウィスコンシン大学では、その体組成データを有効活用し、死亡、心臓・血管の疾患、骨折のリスクを予想するための体組成のしきい値を、同大学が開発したAIツールで決定することを目的に研究が進められた。

今回の研究においては、平均年齢57歳、男性4071人、女性5152人の計9223人の無症候性(病気があるが無症状の人)が対象となった。2004年から2016年の期間(患者の追跡期間の平均値は9年)のCT画像を体組成データと照らし合わせ、その期間で死亡や心筋梗塞、脳血管の異常、心不全や骨折などが起きた事例について調査した。その結果、死亡リスクを高い確率で予想可能となる体組成データは、男性の場合は筋肉量の減少、女性の場合は大動脈硬化(石灰化)であることがわかったという。

  • CT画像の体組成データからAIで分析した死亡や疾患の予想リスク

    CT画像の体組成データからAIで分析した死亡や疾患の予想リスク(出典:Radiology)

いかがだったろうか。この研究成果を見ると、CT画像や体組成データを定期的に取得しておくことは、健康管理の面でとても有効だといえる。そして、男性であれば定期的な筋肉トレーニングの有効性が、女性であれば動脈硬化を回避する食生活などの必要性が、この研究成果より示唆される。このように、以前では関連づけられなかった医療分野のデータが、AIを活用することで、死亡や疾患の発生リスクの要因となる事象の発見につながる。素晴らしい研究成果だと感じる。