會澤高圧コンクリートは、バクテリアの代謝機能を活用した自己治癒コンクリート「Basilisk HA自己治癒コンクリート」を開発。2022年8月18日には、同製品が国土交通省の新技術情報提供システムNETIS(New Technology Information System)に登録されたというプレスリリースを発表した。これにより、セメント・コンクリート産業における脱炭素化の加速が期待できるという。では、この會澤高圧コンクリートの自己治癒コンクリートとはどのようなものなのだろうか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。
會澤高圧コンクリートが開発した自己治癒コンクリートとは?
まず、會澤高圧コンクリートを紹介したい。同社は1935年4月に創業した日本最古級の総合コンクリートメーカーで、北海道を拠点としている。老舗企業というイメージを払拭するかのように、最先端のテクノロジーとマテリアル技術を掛け合わせたオープンイノベーションを新機軸として打ち出し、伝統的な素材産業からスマートマテリアル主導のイノベーション・マーケティング集団への変革に向け、さまざまなDXを仕掛けているという。
では、今回取り上げた自己治癒コンクリートとはどのようなものなのだろうか。
Basilisk HA自己治癒コンクリートは、アルカリ耐性のある特殊培養したバクテリアと、その餌の元となるポリ乳酸を混合した材料で、生コンクリート製造時に他の原材料と同じタイミングに練り混ぜて使用する。
生コンクリートの練り混ぜによりBasilisk HAはコンクリート全体に分散し、ポリ乳酸は、練り混ぜ水による分解で乳酸カルシウムに変化する。一方、バクテリアは強アルカリ環境のコンクリート内で休眠状態を保つ。
コンクリートが硬化したのち、劣化などでコンクリートにひびが発生すると、ひびから侵入してくる水や空気中の酸素によってひび表面のpHが下がり、バクテリアの活動が活動を開始する。その後バクテリアはひび割れの表面で増殖を繰り返すことで活動を活発化させ、乳酸カルシウムと酸素を摂取しながら、代謝活動によってひびの中に炭酸カルシウムを排出することで、ひびを修復していく。
ひびが完全に閉塞すると、水や酸素の供給が断たれることでバクテリアは再び休眠状態を保ち、次のひび割れ発生に備えるというメカニズムだ。
いかがだったろうか。會澤高圧コンクリートは今後、コンクリートのメンテナンスフリーを実現する切り札として、高速道路や国道の橋梁のほか、港湾構造物、山岳トンネル、地下埋設物などさまざまなコンクリートインフラでのBasilisk HA自己治癒コンクリートの採用に向けて、積極的に働きかけていくという。
老朽化による崩落事故の回避やメンテナンスコストの激減などによる財政面での改善など、嬉しい未来しか想像できない素晴らしいテクノロジー。その先にはどんな未来が待っているのだろうか。