大阪大学は、ヒトが想像した画像と同じ意味の画像を画面に表示することができる技術を開発した。この技術を大阪大学では、「脳情報解読技術」と呼んでいる。

これは将来、ヒトが想像したことを映像として伝えることができるコミュニケーションツールとして活用できる可能性を秘めているという。では、この脳情報解読技術とはどのようなものなのだろうか。今回は、そんな話題について触れたいと思う。

脳情報解読技術とは?

大阪大学大学院医学系研究科の福間良平特任助教と大阪大学高等共創研究院の栁澤琢史教授らの研究グループは、被験者が見た画像を頭蓋内脳波から推定する「脳情報解読技術」を開発した。ちなみに、頭蓋内脳波とは、脳の表面もしくは深部に設置した電極(頭蓋内電極)で計測した脳波のことだ。

では、具体的にどのような研究を実施したのだろうか。まず、てんかんなどの治療目的で視覚野周辺に頭蓋内電極を設置した17人の被験者が動画を視聴したときの頭蓋内脳波を計測。大阪大学の貴島晴彦教授、順天堂大学の菅野秀宣先任准教授、奈良県立医科大学の田村健太郎講師らの協力を得えながら風景、動物、文字、ヒトといったさまざまな60分の動画を用いて、頭蓋内脳波を解析したところ、被験者が視聴している動画の意味内容が頭蓋内脳波から推定できることが明らかになったという。

  • 大阪大学が開発した脳情報解読技術

    大阪大学が開発した脳情報解読技術(出典:大阪大学)

また、脳情報解読技術を用いてヒトが想像した画像を表示することができるシステムも開発。4人の被験者に、頭蓋内脳波から推定された画像を画面に提示。次に、被験者には、ランダムに3つの風景・文字・人の顔という指示を与え、それぞれが意味する画像を想像して、同じ意味の画像を画面に提示するように指示した。すると、4人すべての被験者について、指示された意味の画像が偶然で起こる場合よりも高い確率で表示されたという。

さらに、被験者がある意味の画像を見ながら別の意味の画像を想像した時にどのように脳の活動が変化しているかを明らかにするための実験も行った。この実験では、被験者が画像を見ている時と他の画像を想像しながら見ている時の頭蓋内脳波を13人の被験者から計測。

結果、被験者がある意味の画像を見ながら別の意味の画像を想像した時、視覚野の脳活動が想像した意味の画像を実際に見た場合の脳活動に近づくことを発見した。これらのことから、画像制御実験中には、被験者は画像を想像することで、視覚野の脳活動を変化させて画面に表示する画像を変えていたことが示唆されたという。

  • 脳情報解読技術を用いた実験の様子

    脳情報解読技術を用いた実験の様子(出典:大阪大学)

この研究成果は、英国科学誌「Communications Biology」に、2022年3月18日に公開されている。

いかがだっただろうか。この脳情報解読技術によってどのような未来が待っているのだろうか。大阪大学は次のように述べている。

「ヒトが想像することで画像を検索・生成する新しい情報通信技術や、重度麻痺により意思伝達が困難な方が、視覚的想像に基づいて画像を提示して意思伝達を行う新しいコミュニケーションツールへの応用が期待される」と。