日本では、橋梁、建物、道路などさまざまな国や公共団体が管理する構造物が老朽化を迎えている。そのため、モニタリング、新規建設、改修が必須で、地方自治体の財政も圧迫しているのも事実だ。
なにか良い方法はないだろうか。すぐには難しいだろうが、近未来に次のような技術が使えるかもしれない。それは、廃棄野菜を使う方法だ。
現在、廃棄野菜から橋や建物などの構造物にも使えるコンクリート以上の強度を持つ材料が開発されている。また、紫外線を吸収し、発電できる材料もある。今回は、そんな廃棄野菜から開発した夢のような材料について紹介したいと思う。
廃棄野菜からコンクリート以上の強度を持つ材料を開発!
東京大学の町田紘太氏と東京大学 生産技術研究所の酒井雄也准教授は、完全植物由来の新素材を開発した※1。
それは、廃棄野菜からコンクリートの4倍以上の強度をもつ材料だ。下図をご覧いただきたい。キャベツ、みかんの皮、玉ねぎの皮だろうか。粉末状のものと新素材を見ることができる。食材の色をそのまま残せることも強みだろう。この粉末状のものは原材料をフリーズドライにしたもののようだ。
その後、加熱圧縮することでこの新素材ができるという。加熱圧縮の温度や圧力は、原材料に依存するようだが、加熱中に廃棄野菜の糖類が軟化し、圧力により糖類が流動して間隙を埋めることで、強度が発現しているものと考えているとのこと。しかしこのメカニズムの詳細については、今後検討していくようだ。
この新素材は、コンクリートの曲げ強度(約5MPa)の4倍以上になる18MPaの曲げ強度を達成している。そして、木材に使われている耐水処理も可能で、さまざまな用途が期待できる。
ほかにも、英国のランチェスター大学は、廃棄野菜による新素材を活用することでコンクリートの強度を大幅に改善する技術を開発している※2。
この新素材をコンクリートに加えることで、新素材中のケイ酸カルシウム水和物の量が増加、コンクリートの強度を向上させることができる。
また、英国の企業Chip[s]Board※3は、ジャガイモ廃棄物から作られた環境に優しい木材代替品やプラスティックのような材料「Parblex」を開発している。この材料を活用し、めがねなども製造している。
廃棄野菜から再生可能エネルギーも!
フィリピンのMAPUA大学のCarvey Ehren Maigue氏は、廃棄された果物や野菜から紫外線(UV)を捕捉し、再生可能エネルギーに変換する素材「AuREUS」を開発した※4。彼は、James Dyson Award2020のサステナビリティアワードを受賞している。
下図の半透明な黄緑色のパネルをご覧いただきたい。紫外線を吸収して、それを可視光に変換して電気を生成することができるという。 フィリピンでは台風といった自然災害も多く、被害を受ける農作物の農家の方々を救えるだろう。
そしてこのパネルは、さまざまな配色が可能で、ビルの窓に貼り付けて発電しても、景観を美しくするなどとメリットも大きい。
いかがだっただろうか。今回は、廃棄野菜から開発された夢のような新資材を紹介した。 野菜由来、植物由来ということで、この新素材を廃棄しても土に変えるのでエコ。さまざまな表面加工、処理を施せばもっともっとパワーアップするだろう。近未来において主要な技術となることを期待したい。
参考文献
※1https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/research/archive/3568/
※2https://www.lancaster.ac.uk/news/vegetables-could-hold-the-key-to-stronger-buildings-and-bridges
※3https://www.chipsboard.com/
※4https://www.mapua.edu.ph/News/article.aspx?newsID=2148