宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科孊研究所(ISAS)は2017幎8月25日ず26日に2日間にわたり、ISAS盞暡原キャンパスの斜蚭公開むベント「盞暡原キャンパス特別公開2017」を開催した。毎幎恒䟋のお祭にしお、最先端の宇宙科孊に぀いお、盎接研究者ずふれあいながら孊べるこの催しは、今幎も倧勢の人々で賑わった。

今回は特別公開の展瀺や解説の䞭から、ずくに気になったものを厳遞し、3回に分けお玹介しおいきたい(第1回はこちら、第2回はこちら)。

第3回では、航空機のように䜕床も再䜿甚できる「再䜿甚芳枬ロケット」の最新情報ず、ISASず民間䌁業が共同開発しおいる小型ながら高性胜なレヌダヌ地球芳枬衛星に぀いお玹介したい。

再䜿甚芳枬ロケットの実隓機の実物倧想像図

ISASず民間䌁業が共同開発しおいる小型レヌダヌ衛星

぀いに動き始めた日本の再䜿甚ロケット

スペヌスXの「ファルコン9」ロケットや、ブルヌ・オリゞンの「ニュヌ・グレン」ロケットに代衚されるように、近幎、ロケットを航空機のように䜕床も再䜿甚し、1回あたりの打ち䞊げコストを少なくしようずいう取り組みが掻発になっおいる。ずくにスペヌスXは、すでに再䜿甚打ち䞊げに2床成功し、たた実際に玄30%の䜎コスト化にも成功、顧客に提瀺する䟡栌も10%匕きにできおいるずされる。

このロケットの再䜿甚化の波は䞖界䞭に波及し、この2瀟だけでなく、他の米囜䌁業をはじめ、欧州や䞭囜、むンドなども開発を始めおいる。

䞀方で日本は、か぀お再䜿甚ロケットの開発では䞖界の第䞀線におり、2000幎前埌には小さな実隓機「RVT」を開発し、実際に離着陞する実隓も行っおいた。しかしその埌は足螏み状態ずなり、高床100kmの宇宙たで届くロケットや、人工衛星や人を打ち䞊げられるロケットぞ発展するこずはなく、そうこうしおいる間にスペヌスXずブルヌ・オリゞンに远い抜かれるずいう状況になった。

もちろん、研究・開発が完党に止たっおいたわけではなく、゚ンゞンを䞭心に地䞊で技術開発は続けられおいた。2015幎には宇宙たで届く再䜿甚ロケットに䜿える゚ンゞンの詊隓が完了し、宇宙たで届く「再䜿甚芳枬ロケット」を開発するめどが立ったこずが発衚された。

ISASは珟圚、衛星は打ち䞊げられないものの実隓装眮などを高床100km以䞊の宇宙空間に打ち䞊げられる芳枬ロケットを運甚しおいるが、打ち䞊げごずに䜿い捚おおいる。そこで、この芳枬ロケットを再䜿甚できれば、打ち䞊げコストが削枛でき、実隓の機䌚や頻床を増やすこずができ、さらに将来の再䜿甚ロケット開発にも぀なげられるずが期埅されおいる。

しかし、予算などの問題から、ただ実機は開発されおいない。

今回の展瀺では、再䜿甚芳枬ロケットそのものに぀いおはただ開発は動き出しおいないものの、その前段階ずなる再䜿甚芳枬ロケットの"実隓機"の開発に぀いおの発衚が行われた。開発そのものは以前から明らかになっおいたが、今回その実物倧想像図が初めお公開された。

この実隓機は、再䜿甚芳枬ロケットよりも小さく、たたロケット゚ンゞンも再䜿甚芳枬ロケットに4基積む予定のものを1基だけ積む。目暙は高床数km数十kmほどたで䞊昇しお垰還する技術の実蚌にあり、すでに開発を始めおおり、来幎床(2018幎床)の打ち䞊げを予定しおいるずのこずだった。

スペヌスXなどの他の再䜿甚ロケットず比べた際の、ISASの再䜿甚ロケットの技術的な匷みは、「機䜓そのものが翌のように揚力を生み出せる圢状をしおいるので、わずかながら滑空飛行できる」点だずいう。぀たり垰還の際、着陞堎所に向けお滑空飛行できるので、燃料を節玄するこずができる。ただ、ファルコン9 ブロック5やニュヌ・グレンでも、胎䜓や小さな翌を䜿っお滑空飛行するこずが考えられおいるため、「ちょっず苊しいですが  」ずいう本音も聞かれた。

たた、基幹ロケット(H3やその埌継機など)の再䜿甚化ずいった展開も、ただ実珟の芋通しはないずいう。

残念ながら、スペヌスXなどに比べるずただ呚回遅れの状況ではあるものの、少なくずも研究・開発が続いおおり、実隓機の開発が進んでいるこずは明るいニュヌスではある。

再䜿甚ロケットの実隓機「RVT」。2003幎に離着陞実隓を行った

開発䞭の再䜿甚芳枬ロケットの実隓機の実物倧想像図

再䜿甚芳枬ロケットの颚掞暡型(å·Š)。機䜓そのものが翌のように揚力を生み出せる圢状をしおいるので、わずかながら滑空飛行できる

倪陜電池ずレヌダヌが䞀䜓化した小型レヌダヌ衛星

倧地震や豪雚、火山の噎火などの自然灜害が発生したずき、被害状況を確認するため、地球芳枬衛星はすでに倧きな掻躍を果たしおいる。

しかし、人工衛星の軌道は決たっおおり、灜害の発生盎埌に、すぐに被灜地を撮圱できるずは限らず、堎合によっおは1日以䞊埅たねばならない堎合もある。

その欠点を解消するため、「即応打ち䞊げ」ずいうアむディアがある。灜害などが発生した際にすぐさた衛星をロケットで打ち䞊げ、最適な軌道に投入し、迅速に芳枬を行うずいうもので、すでに米囜や䞭囜などで技術実蚌機が打ち䞊げられおいる。

この即応打ち䞊げを行う堎合、開発や補造のしやすさや打ち䞊げやすさなどから、衛星は小型である必芁がある。小型衛星にはあたり倧きな芳枬装眮が積めないので、衛星の性胜が限られおしたうが、近幎では電子郚品の小型化が進み、望遠鏡ずカメラで地衚を撮圱する光孊センサを搭茉する衛星に぀いおは、100kgほどの倧きさでも十分な性胜をも぀ものが造れるようになった。

しかし、合成開口レヌダヌで地衚を撮圱するレヌダヌ衛星は、倧きなアンテナや倧電力が必芁なこずなどから小型化が難しい。小型化できおも性胜が悪ければ圹に立たない。䞀方で、光孊センサは倜間や芳枬倀の䞊空に雲がある堎合には䜿えないため、レヌダヌ衛星はこうした「即応打ち䞊げによる地球芳枬」ずいう目的にずっお必須でもあった。

この「小型ながら高性胜、そしおすぐに打ち䞊げられるレヌダヌ衛星」の実珟ずいう難題に、内閣府が進める「革新的研究開発掚進プログラム」(ImPACT)のもずで、ISASず䞉菱重工、䞉菱電機、倧孊などが協力しお挑んでいる。

この小型レヌダヌ衛星の最倧の特城は、倧きくおかさばるレヌダヌのアンテナを、倪陜電池パドルず䞀䜓化させおいるこずにある。倚くの人工衛星がも぀倪陜電池は、いく぀かのパネルに分かれおおり、それらを折りたたんだ状態で打ち䞊げ、宇宙空間でぱたぱたず開いお展開するようになっおいる。これを利甚し、小型レヌダヌ衛星ではこの倪陜電池のパネルの裏偎にレヌダヌ機噚を搭茉するこずで、機䜓のコンパクト化ず軜量化を実珟しおいる。

ただ、単に倪陜電池の裏にレヌダヌを貌り付ければよいずいうものではなく、さたざたな課題もあったずいう。たずえばレヌダヌのアンテナは、衚面に突起があったり、展開した際にパネル同士のずれから歪みが生たれたりするず性胜が萜ちおしたう。そこでシンプルか぀高い粟床が出せる展開方法が開発され、さらにパネル同士の隙間で発生するレヌダヌの電波の損倱を小さくするための技術も開発された。

この小型レヌダヌ衛星の質量は玄130kgで、打ち䞊げ時(パドルを折りたたんだ状態)の寞法は1蟺が玄0.7mの立方䜓になる。レヌダヌに䜿うマむクロ波の呚波数には、高い地䞊分解胜を達成可胜なXバンドを䜿い、分解胜は高床600kmの軌道で3m、400kmで1mを目指す。

小型のレヌダヌ衛星はむスラ゚ルやドむツなどが埗意ずしおいるが、100kg玚で分解胜1mずいう小ささず高性胜さをも぀衛星はただどこにもない。

たた、衛星に䜿う郚品にはITAR(米囜の茞出芏制)にひっかからないものを䜿っおいるので、事実䞊どこの囜(䞭囜など)のロケットでも打ち䞊げが可胜な䞊に、さたざたな囜ぞ衛星の茞出も可胜ずなるずいう。

珟時点では、2018幎に実機の完成を予定しおいるずいう。具䜓的な打ち䞊げ予定などはただないものの、将来的には即応打ち䞊げシステムずしおの配備の他、十数機の衛星を打ち䞊げお軌道䞊に配備し(これをコンステレヌションずいう)、぀ねに短い間隔で地衚を芳枬し続けられるシステムの構築も目指しおいるずいう。これにより灜害察応のほか、たずえば他囜の枯の動向を芳枬するなどし、経枈状況や物流の動きを調べ、先物取匕に利甚するずいう応甚も考えおいるずいう。

小型レヌダヌ衛星の詊隓モデル

手前の倪陜電池・レヌダヌが䞀䜓化したパドルを折りたたむず、巊の箱の倧きさに収たる

倪陜電池・レヌダヌが䞀䜓化したパネル

小型レヌダヌ衛星の解説パネル

小型レヌダヌ衛星の解説パネル

小型レヌダヌ衛星が目指すずころず、他の同様の衛星ずの比范。小型のレヌダヌ衛星はむスラ゚ルやドむツなどが埗意ずしおいるが、100kg玚で分解胜1mずいう小ささず高性胜さをも぀衛星はただどこにもない

参考

・宇宙旅行に行きたいな再䜿甚ロケット
・宇宙開発戊略本郚 第15回䌚合 議事次第 : 宇宙政策 - 内閣府 ・でも曇でも地衚が芋れる小型レヌダ衛星の開発
・革新的研究開発掚進プログラム ImPACT: 研究開発プログラム: 癜坂 成功PM
・オンデマンド即時芳枬が可胜な小型合成開口レヌダ衛星システム」

著者プロフィヌル

鳥嶋真也(ずりした・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙䜜家クラブ䌚員。囜内倖の宇宙開発に関する取材、ニュヌスや論考の執筆、新聞やテレビ、ラゞオでの解説などを行なっおいる。

著曞に『むヌロン・マスク』(共著、掋泉瀟)など。

Webサむトhttp://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info