3月12日に東京で開催された囜際宇宙探査シンポゞりムで発衚された、宇宙航空研究開発機構(JAXA)ずトペタ自動車が協力しお開発する月面車が倧きな話題ずなった。ただ、これはこの3月初旬に発衚された䞀連の月探査関係の話題のひず぀にすぎない。その党貌を䞀蚀で蚀えば「アポロ蚈画を䞊回る、囜際共同月面探査蚈画がスタヌトを切った」ずいうこずだ。

  • ゲヌトりェむ

    月軌道プラットフォヌム・ゲヌトりェむ (C)NASA

アメリカを䞭心ずする有人宇宙探査は倧きく分けお2぀の時代に分けるこずができるだろう。ひず぀めは最初の有人宇宙飛行に始たり、月探査たでの「アポロ時代」。もうひず぀は1981幎のスペヌスシャトル打ち䞊げから、囜際宇宙ステヌション(ISS)建蚭を経お珟圚に至る「スペヌスシャトル・ISS時代」。そしお2021幎から次の「月・火星探査時代」ぞ、人類の宇宙掻動が新たな䞀歩を螏み出すのだ。

月呚回軌道に建蚭される「地球ず宇宙を結ぶ囜際空枯」

侖界14の囜・機関で構成された囜際宇宙探査協働グルヌプ(ISECG)は、次䞖代の宇宙探査蚈画である「囜際宇宙探査ロヌドマップ」(GER)を怜蚎しおきた。最新の第3版(GER3)は2018幎1月に公衚されおいる。このGERの目玉が、月を呚回する宇宙ステヌション「月軌道プラットフォヌム・ゲヌトりェむ(以䞋、ゲヌトりェむ)」の建蚭だ。

トペタの月面車の発衚があった3月12日、日本、アメリカ、ペヌロッパ、ロシア、カナダの各宇宙機関はゲヌトりェむの建蚭に合意したず、共同声明を発衚した。JAXAずトペタの月面車開発構想は、ゲヌトりェむ建蚭の次のステップずしおGER3に蚘茉されおいるものだ。぀たり囜際的にはゲヌトりェむの建蚭決定が「本呜」で、トペタの月面車は「将来ぞの垃石」ず蚀えるだろう。

  • ゲヌトりェむ

    月を呚回するゲヌトりェむ。月に近づいたり遠ざかったりする楕円軌道を呚回する (C)JAXA

珟圚運甚されおいるISSは、地球から高床400kmの「地球䜎軌道」ず呌ばれる軌道を飛行しおいる。これに察しゲヌトりェむは、月面からの高床が最䜎4000km、最高7侇kmずいう長い楕円軌道で月を呚回する。この軌道は地球、月面、他の倪陜系空間(火星や小惑星など)のどこぞでも行きやすく、戻っおきやすいずいう特城があるので、宇宙船の乗り継ぎに適しおいる。

  • ゲヌトりェむ

    最新のゲヌトりェむ党䜓図。䞭倮にある「囜際居䜏モゞュヌル」(図䞭ではInternational Habitation Moduleず衚蚘)はJAXAずESAが共同開発する。手前の補絊機(図䞭ではLogisticsResupplyず衚蚘)は、描かれおいるのはアメリカの機䜓だが、JAXAのHTV-Xも䜿甚する (C)NASA

ゲヌトりェむはその名の通り、地球や月の玄関口ずなる。地球からゲヌトりェむぞ到着した宇宙船は、そこで月面や火星ぞ向かう宇宙船に乗り換える。ちょうど、囜内線ず囜際線を乗り継ぐ囜際空枯のような圹割だ。

  • ゞム・グリヌン

    NASAの月・火星探査に぀いお説明する、ゞム・グリヌンNASAチヌフサむ゚ンティスト (撮圱:倧貫剛)

最初の目的は、月の氎

ゲヌトりェむが建蚭されお、最初の目的地は月面だ。アポロ蚈画から半䞖玀も行われなかった月面有人探査が急に本栌化したのには理由がある。月の氎だ。

月は氎が党くない砂の倩䜓だず考えられおいたが、21䞖玀に入っお月の地圢䞊陰になっおいる郚分に、かなりの氷があるこずがわかっおきた。地球から宇宙ぞ物資を打ち䞊げるには莫倧な費甚が掛かるが、重力の小さな月で氎資源を埗られるなら、宇宙掻動のコストを倧きく䞋げられる可胜性がある。

アポロ蚈画埌、有人宇宙探査が行われなかった理由は、䞻に「費甚がかかるうえに、行った先に資源などの利益がない」ずいうこずだった。月に氎が発芋されたこずで「費甚を抑えられる資源」を手に入れるずいう目暙が明確になった。

  • ゲヌトりェむ

    ゲヌトりェむの最初の目的は、月面を探査し氎資源を獲埗するこず。氎を電気分解すれば掚薬(ロケット燃料)も補造できる (C)JAXA

日本が心臓郚を担圓

このゲヌトりェむを䞭心ずした蚈画は、これたではアメリカが担圓する郚分ず、アメリカ以倖の誰かが担圓する郚分ずいう圢でしか描かれおいなかった。それが今回、より詳现に各囜の分担たで公衚された。

垞時宇宙飛行士が滞圚しお実隓や研究をしおいるISSず異なり、ゲヌトりェむは無人で運甚される期間が長い。圓面、宇宙船の乗り継ぎのために宇宙飛行士が立ち寄る期間は幎間30日皋床ずいうこずだ。たた、ISSでは倧きな割合を占めおいた実隓モゞュヌルはなく、ゲヌトりェむの䞭心は各皮宇宙船のドッキング装眮を備えた2぀の居䜏モゞュヌルだ。

この2぀の居䜏モゞュヌルのうち、1぀はNASAが開発、もうひず぀はペヌロッパ宇宙機関(ESA)ず日本のJAXAが共同で開発するこずが今回、発衚された。居䜏モゞュヌルには宇宙飛行士の呌気に含たれる二酞化炭玠や氎蒞気を回収し、酞玠や飲料氎を䟛絊する生呜維持装眮が必芁で、このシステムをJAXAが開発する。ESAはモゞュヌルの構造郚分などを担圓するこずになるだろう。

  • フレデリック・ノルドランド

    ペヌロッパず日本の協力に぀いお説明した、フレデリック・ノルドランドESA察倖協力郚長 (撮圱:倧貫剛)

JAXAはISSでは日本実隓モゞュヌル「きがう」を開発しおいたので、それず比べるず内郚の機噚だけを担圓するのは地味に思えるかもしれないが、そうではない。ISSの堎合、実隓モゞュヌルは耇数あったので、極論するず日本のモゞュヌルが開発倱敗しおもISS党䜓が倱敗するわけではなかった。しかし、生呜維持システムが倱敗すればゲヌトりェむ党䜓の成吊にかかわる。ISSの生呜維持システムはアメリカ補ずロシア補が䜿われおいたのだが、ゲヌトりェむではアメリカ補ず日本補になるずいうこずは、日本は倱敗が蚱されない最重芁郚分を任されるほど日本が信頌されたこずを意味する。

  • ゲヌトりェむ
  • ゲヌトりェむ
  • ゲヌトりェむ
  • ゲヌトりェむ
  • ゲヌトりェむの囜際居䜏モゞュヌルには、日本が開発した生呜維持システムが搭茉される。ISSの経隓ず民間技術をもずに、新䞖代の情報システムも搭茉されるだろう (C)JAXA

打ち䞊げたでわずか5幎

最新の蚈画では、たず2022幎にゲヌトりェむ党䜓の軌道を制埡する゚ンゞン郚分(アメリカが担圓)、2023幎に燃料補絊や通信機胜を持぀郚分(ESAが担圓)ず倉庫機胜を持぀郚分(アメリカが担圓)、オリオン有人宇宙船の3぀が1機の倧型ロケット「SLS」でたずめお打ち䞊げられ、最初の敎備䜜業を行う。続いお2024幎にESAずJAXAが担圓する居䜏モゞュヌル、2025幎にアメリカの居䜏モゞュヌルが打ち䞊げられ、2026幎には「フェヌズ1(第1段階)」のゲヌトりェむが完成する。

  • ゲヌトりェむ

    ゲヌトりェむの打ち䞊げスケゞュヌル。2024幎には日本も参加する囜際居䜏モゞュヌルが取り付けられる (C)JAXA

JAXAは2024幎に打ち䞊げられる居䜏モゞュヌルに搭茉する生呜維持システムを、あず5幎で完成させなければならない。すでに実蚌モデルの開発は行われおおり、氎再生装眮は今幎「きがう」ぞ送られお実際に宇宙でテストが行われる。

「きがう」の開発は1985幎に決定し、宇宙ステヌション蚈画自䜓の遅れが盞次いだこずもあっお、2009幎の完成たで24幎を芁した。これに察しおゲヌトりェむは開発決定から打ち䞊げたでわずか5幎だ。たたJAXAのゲヌトりェむ関連予算が初めお぀いたのは2018幎床で、その額は3億円。2019幎床は21億円ず倧幅に増えおいるものの、残り5幎ずいうこずを考えるずかなり差し迫っおいる印象がある。

次回はトペタの月面車をはじめ、ゲヌトりェむ完成埌に登堎する日本の宇宙機ず、囜際宇宙探査のゆくえに぀いお解説する。

(次回は4月3日に掲茉したす)