市場動向調査会社の英IHS Markitは1月30-31日に、ディスプレイ業界関係者向けカンファレンス「第38回 ディスプレイ産業フォーラム」を開催した。

最初に同社ディスプレイ部門シニアディレクターのDavid Hsieh(謝勤益)氏が基調講演に先立ち、新型コロナウイルスの感染が拡大する状況下における中国ディスプレイパネル産業の現状に関する緊急調査結果および今後の市場への影響に関する分析結果を報告した。

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    新型コロナウイルスによる中国ディスプレイ業界への影響を報告するIHS MarkitシニアディレクターのDavid Hsieh氏 (著者撮影)

旧正月休暇の延長でパネル工場の稼働率が低下

中国の旧正月(春節)の一斉休暇は2020年1月23日から29日までの7日間であったが、湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ狙いで中国政府は旧正月休暇を2月3日まで延長した。上海、蘇州、広州はじめ多くの地方人民政府も2月8日、もしくは2月14日まで工場に出勤せぬように市民に要請している。

ディスプレイ工場だけではなく、サプライチェーンや設備協力会社(コンポーネント、素材、給水。給電、バックエンドモジュールなど)も影響を受けており、中国内のすべてのパネル工場(韓国や台湾の中国内の工場を含む)が少なくとも何らかの影響を受けるのは確実であるといえる。なお、コロナウイルスが発生した湖北省武漢市には、パネル大手の京東方科技集団(BOE)や華星光電(CSOT)、天馬微電子(Tianma)の工場が立地している。

こうした取り組みの結果、中国内の多くのパネル工場では液晶テレビ用パネル、IT機器向けパネル、中小型パネルの区別なく、2月の工場稼働率が通常時に比べ10~15%低下する見込みで、中には20%ほど減少するところも出る見込みで、中でも液晶モジュールコンポーネントがもっとも不足する見込みだという。主な理由は、工場の作業者不足および部材不足である。また、同様に人手不足などの要因から、新規パネル工場の立ち上げも遅れる可能性が高い。その一方で、テレビ用およびIT機器用パネルの需要は5~10%上昇している。パネルバイヤーが心配して在庫積み増しを始めているからである。

この降ってわいた突然の工場の稼働停止の影響で、旧正月明けにはパネル価格が全体的に上昇する可能性が高いといえるだろう。

大型パネルモジュールメーカーSkyTechに大打撃

IHS Markitによると、中国最大級の液晶モジュールメーカーであるSkyTech Optronics(河南天揚光電科技)は、中国のディスプレイ業界の中でもっとも新型コロナウイルスの影響を受けているという。同社は少なくとも2月11日まで操業を停止することを決め、社員は自宅待機となっている。

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    SkyTech Optronics(河南天揚光電科技) 本社工場の外観 (出所:SkyTech Webサイト)

SkyTechは武漢市に近い湖南省信陽(Xiyang)市に立地している。同社は、BOE、CEC Panda、China Star、Hann Starはじめ多数の大手パネルメーカーと長期契約を結びサブコントラクト(下請け)ベースで大型液晶パネルモジュールを製造している。

同社の操業停止によりオープンセル(バックライトなしの半製品)を製造する液晶メーカーにとっては、部材不足や液晶パネルのアセンブリ不足により、少なくとも2月中旬まで出荷に影響が出る見込みである。また、内製パネルアセンブリーラインを有する液晶メーカーにおいても、IT機器向けパネルが2月は10~20%の減産となるとなる見通しだという。

液晶テレビに関してパネルメーカーは、ほとんどの場合オープンセルを出荷しており、テレビメーカーがバックモジュールシステム(BMS)の製造を行っているが、そうした中国のテレビメーカー各社のBMSアセンブリーラインも操業停止による稼働日の減少、そしてコンポーネント不足の影響を受けることになる見込みであるという。