Haswellの基本情報のおさらい
Haswellについて発表するIntelのPer Hammarlund氏 |
Intelの第4世代Core iシリーズプロセサであるHaswellについては、IDFなどで多くの情報が発表されており、今更と言う感じもあるが、やはり、Hot ChipsはIEEE主催の学会での発表ということで、IDFの発表の繰り返しではなく、新しい情報が含まれた発表であった。
おさらいであるが、HaswellはIvy Bridgeと同じ22nmプロセスで製造されるTock世代のプロセサで、マイクロアーキテクチャの改善が目玉となっている。
そして、Haswellでは、次の図のような数々の改善が盛り込まれている。
まず、SoC的なモジュラーな設計を取り入れ、コア数、グラフィックプロセサのバリエーションも広げており、このスライドの下側には7種のバリエーションのチップが写っている。そして、S0ix状態のサポートや、USB、PCIe、SATAといった高速シリアルリンクの電力制御、液晶ディスプレイのパネルセルフリフレッシュなどを取り入れてアイドル時の消費電力を1/20に低減している。
また、一部のモデルでは大容量のeDRAMのキャッシュを追加してグラフィック処理などの性能を改善している。
プロセサコアはAVX2のサポートで浮動小数点演算の性能を上げ、キャッシュのバンド幅を倍増、トランザクショナルメモリのサポートなど盛りだくさんの改善が入っている。さらに、グラフィックスやメディア処理機能についての大幅な性能改善を実現しているという。
詳細な電力制御により電力の消費を大幅抑制
従来のIvy Bridgeまでは、チップの状態は、コアが動作しているS0状態と、プロセサの状態をDRAMに退避してCPUをパワーオフするS3状態、プロセスの状態をディスクに退避してDRAMも止めるS4状態があった。このS3状態はWindowsの終了メニューのスリープ、S4状態は休止状態に対応している。S3、S4状態は消費電力は非常に少ないが、S0状態への復旧には時間が掛かる。このため、アイドル状態であるからといって、OSが勝手にこられの状態に移行させることは出来なかった。
これに対して、Haswellでは、S0ixという状態(正確には状態というより、省電力設計を徹底したことによりアイドル時にはS0状態の電力が大幅に低減する)が追加された。この状態では、ハードウェアの各部分が動作状況をモニタし、動作の必要がない場合は、積極的にパワーゲートを行ったり、高速リンクのスピードを低下させたりする。
このような電力制御により、アイドル時の消費電力を1/20に減少させ、動作状態でのバッテリ寿命も大幅に改善されるという。
また、Haswellでは電源電圧安定化回路をCPUチップに内蔵しており、これをFIVR(Fully Integrated Voltage Regulator:ファイバー)と呼んでいる。Ivy BridgeではDRAMを含めて6系統の電源を必要としていたが、FIVR化でCPUには1.8V程度の1系統の電源供給だけで済み、DRAMの電源を含めて2系統の電源供給だけで動作させられるようになった。
この図では、VccInから4つのコアに矢印が引かれているが、IntelのHaswellのデータシートでは、すべてのアクティブなコアは同じ電源電圧、クロック周波数は共通と書かれており、IntelのFIVRは、IBMのPOWER8のようにコア別に電圧を調整する機能はないとみられる。
また、Fully Integratedという触れ込みであるが、質問してみると、インダクタ(コイル)は外付けという回答であった。一説によると、VRの動作周波数は125MHzとのことで、これは通常のVRの100倍程度高い周波数である。このため、VRに必要なインダクタやキャパシタの値は小さくて済む。
Ivy Bridgeのマザーボードでは、これらの電源の配線のために、マザーボードのCPUチップの載る部分の裏側は全部電源に使われていたが、Haswellでは、この電源配線が不要になった。インダクタなどの小型化も含め、マザーボードの面積が減り、従来より10%大きなバッテリを搭載できるようになった。そして、マザーボードの厚みも5.4mmから3.4mmと2mm減少し、それだけスリムで、軽く、長時間動作可能なノートPCができることになる。