ロシアの囜営宇宙䌁業ロスコスモスは2017幎11月28日、極東のノォストヌチュヌィ宇宙基地から、「゜ナヌズ2.1b」ロケットを打ち䞊げた。ロケットにはロシアの気象衛星をはじめ、合蚈19機の衛星が搭茉されおいた。ロケットは順調に飛行したように芋え、ロスコスモスなどは䞀床「打ち䞊げ成功」ず発衚した。ずころが、その埌䞀転、衛星を茉せたたたロケットが墜萜し、打ち䞊げは倱敗に終わっおいたこずが明らかになった。

珟圚たでの調査で、倱敗の匕き金ずなったのは「フレガヌト」ず呌ばれる䞊段ロケットだったず考えられおいる。はたしお、いったいなにが起きたのだろうか。

連茉の第1回では、そもそも䞊段ロケットずはなにか、そしおフレガヌトずはどんなものなのか、に぀いお取り䞊げた。今回は、珟時点で考えられおいる、耇雑か぀難解、しかし"あるある"な、倱敗に至るたでのシナリオに぀いお取り䞊げる。

  • 今回倱敗したフレガヌト䞊段ロケット

    今回倱敗したフレガヌト䞊段ロケット(写真は別の打ち䞊げのずきのもの) (C) NPO Lavochkin

事故の顛末

飛行蚈画によるず、゜ナヌズ2.1bロケットはモスクワ時間11月28日8時41分45秒に、ノォストヌチュヌィ宇宙基地を離昇。赀道に察しお玄98床傟いた極軌道に向けお飛ぶ。そしお第1段や第2段、フェアリングを分離し぀぀飛行し、第3段の燃焌終了埌、打ち䞊げから玄9分でフレガヌトず衛星を投入する。このずき機䜓はただ匟道軌道にあり、軌道速床は出おいない。

そしお第3段から分離の玄1分埌、フレガヌトは1回目の゚ンゞン噎射を開始。続いお2回目の゚ンゞン噎射を行い、メテオヌルM 2-1が目指す軌道に入る。分離埌、フレガヌトは3回目の゚ンゞン噎射を行っお軌道を倉え、アストロスケヌルの小型衛星「IDEA OSG 1」を軌道に投入。さらに4回目の噎射を行い、さらに別の軌道に乗り移り、他の18機の小型・超小型衛星を分離、軌道に投入する。

すべおの衛星を分離した埌、フレガヌトはさらに姿勢を反転させお逆噎射し、軌道を離脱しお地球の倧気圏に再突入する。これは、い぀たでも宇宙にずどたり、自身がスペヌス・デブリ(宇宙ゎミ)になっおしたわないようにするために行われる凊眮である。

しかし、実際の飛行では、この䞭のフレガヌトの1回目の燃焌の段階でなんらかのトラブルが発生。軌道に到達するこずなく、地球に墜萜したず考えられおいる。ロスコスモスによるず、すでに萜䞋䜍眮はほが特定されおおり、北緯42床、西経38床の北倧西掋䞊だったずされる。ちなみにこのころ、アむスランド付近を飛行䞭だった旅客機から、火の玉のようなものが芋えたずいう投皿がTwitterなどに䞊がっおおり、倧気圏に再突入したフレガヌトず衛星が目撃されたものである可胜性が高い。幞いにも被害などは出おいない。

事故埌、ロシアの宇宙ファン、そしお関係者らも集たるフォヌラム・サむト「Novosti-Kosmonavtiki」などを䞭心に、事故原因に぀いおさたざたな憶枬がなされた。

たずえば゚ンゞンが故障しおいたためではないかずいう説は、軌道速床を出せなかったずいうこずず盎接的にリンクするので、いちばん思い぀きやすい説である。たた、゜ナヌズ・ロケットからの分離がうたくいかず、姿勢が乱れたり砎損するなどしお倱敗したずいう説もあった。か぀おプログレス補絊船の打ち䞊げで䌌たような理由で倱敗が起きたこずもあり、可胜性ずしおは十分にあった。たた、運悪くスペヌス・デブリず衝突したずいう説もあった。

しかし、珟時点で有力芖されおいるのは、これらよりも耇雑か぀、難解な、しかし地図や3D CGなど、なんらかの座暙系のあるものを扱う人、芪しみのある人にずっおは"あるある"なシナリオである。

  • ゜ナヌズ2.1bの打ち䞊げ

    ゜ナヌズ2.1bの打ち䞊げ (C) NPO Lavochkin

フレガヌトは自分の姿勢を勘違いした?

ロシアの宇宙開発を専門ずする宇宙ゞャヌナリストのAnatoly Zak氏は、関係者筋からの話ずしお、次のようなシナリオが有力芖されおいるず玹介しおいる。

ほがすべおのロケットには、自身の姿勢を知るために、ゞャむロスコヌプず呌ばれる蚈枬噚が搭茉されおいる。このゞャむロからの倀をもずに、ロケットに搭茉されおいるコンピュヌタヌは自身の姿勢を知り、必芁な姿勢制埡の指什を出す。

もう少し簡単な蚀葉でいうず、ロケットはただの尖った円筒圢に芋えお、実はきちんず䞊や䞋、右や巊ずいった方向が決められおおり、正しい方向に飛ぶためには、たず自分の姿勢を正しく認識する必芁があり、その䞊で゚ンゞンを動かすなどしお飛びたい方向に機䜓を向ける。その姿勢を刀断するための基準ずなる装眮がゞャむロである。

゜ナヌズ・ロケットずフレガヌトは、それぞれ別のゞャむロをもっおおり、なおか぀基準軞に10床の差が蚭けられおいた。

゜ナヌズ・ロケットは発射台を離昇埌、機䜓のロヌル軞を回転させお、飛行方䜍角に向けお機䜓の姿勢を合わせる。続いお、゜ナヌズ・ロケットずフレガヌトのそれぞれのゞャむロのシステムも飛行方䜍角に合わせるため、プラットフォヌム(土台)を回転させ、0床の䜍眮に戻す修正を行う。ちなみに最近のロケットでは、ゞャむロ、あるいは慣性蚈枬装眮(IMU)ず呌ばれる装眮は固定されおいるこずが倚いが、゜ナヌズ・ロケットやフレガヌトでは、ただゞンバルに乗った機械匏のものが䜿われおいるずいう(これは゜ナヌズを茞入しお打ち䞊げおいるアリアンスペヌスも認めおいる)。

これらのゞャむロのプラットフォヌムを0床に合わせる際には、垞に最短ルヌトで回転するように制埡される。぀たり、たずえばプラス45床のずれがあればマむナス45床分の回転を、あるいはマむナス90床のずれであればプラス90床分ずいった感じで、時蚈の針のように䞀呚回するのではなく、最短で0床の䜍眮にたどり着けるように制埡される。これが完了するず、ロケットは飛びたい飛行方䜍角に向けお、正しい姿勢で飛ぶこずができる。

  • ゜ナヌズ・ロケットずフレガヌトの各回転軞や座暙を瀺した図

    ゜ナヌズ・ロケットずフレガヌトの各回転軞や座暙を瀺した図 (C) Arianespace

埓来、バむコヌヌル宇宙基地、プレセヌツク宇宙基地、そしお南米仏領ギアナのギアナ宇宙センタヌから゜ナヌズ/フレガヌトを打ち䞊げた堎合、この制埡の幅はプラス140床からマむナス140床の範囲に収たっおいた。぀たりプラス140床のずれがあれば、マむナス140床分の回転を、逆にマむナス140床のずれがあればプラス140床分回転しお0床に合わせおいた。

ずころが、ノォストヌチュヌィ宇宙基地から打ち䞊げた堎合、この幅は玄174床たでになる。そしおノォストヌチュヌィ宇宙基地を離昇した゜ナヌズ・ロケットのゞャむロのプラットフォヌムは、0床に向けお、マむナス174床の回転を実斜。これ自䜓は正しい動きであり、実際にロケットも正垞に飛行を続けた。

しかし前述のように、゜ナヌズ・ロケットずフレガヌトのゞャむロの基準軞には、10床の差があるので、フレガヌト偎のゞャむロのプラットフォヌムは、玄184床を0床にしないずいけない。184床から0床に角床を倉えるずきの最短ルヌトは、184床を匕いお0床にするのではなく、176床を足しお360床=0床にするこずである。すでに半呚の180床を超えおいるため、そのたた1回転したほうが近いからである。そしお、ゞャむロのプラットフォヌムはそのずおりに回転した。

このずき、フレガヌト偎のコンピュヌタヌが、この状況をどのように認識、刀断をしたのかは明らかではないずいう。ただ、360床ず0床ずでは、機䜓の姿勢䜍眮そのものは同じではあるものの、そこにたどり着くたでの回転方向が異なるこずから、コンピュヌタヌにずっおは、このゞャむロの動きを間違いだずし、「珟圚自分は正しい向きから360床ずれおいる」ず認識した可胜性がある。

結果的にフレガヌトのコンピュヌタヌは、埋儀にも、自身が正しいず信じる360床(=0床)の䜍眮に向けお1回転しなければならないず刀断。姿勢制埡を行うため、スラスタヌを噎射した。

しかし、フレガヌトのメむン・゚ンゞン噎射開始のタむミングはあらかじめプログラムされおおり、そしおそもそもこうした1回転するなどずいう制埡は予枬されおいなかったため、およそ60床ほど回転したずころでタむマヌの時間が来お、゚ンゞンの噎射が始たっおしたった。噎射方向が間違っおいるばかりか、機䜓が回転しながら゚ンゞンが噎射したこずもあっお、フレガヌトは制埡䞍胜の状態に陥ったず考えられる。

前述のように、゜ナヌズの第3段から分離された時点でフレガヌトは軌道速床には達しおおらず、匟道軌道にいた。正垞な姿勢で噎射ができなければ、地球を呚回する軌道に入るこずはできない。そのため、フレガヌトず搭茉されおいた衛星は地球に墜萜したずいうのである。

すでに調査は、なぜこうしたこずが起きたのかずいう、根本の原因を探るずころにたで至っおいる。そしおそこからは、ここ数幎のロシアの宇宙開発が盎面しおいる危機的状況が、ただ改善しおいないこずが芋お取れる。

  • 2016幎にノォストヌチュヌィ宇宙基地から打ち䞊げられた゜ナヌズ2.1aロケットのオンボヌド・カメラの映像。離昇盎埌に、機䜓が174床(ほが半呚)ロヌルしおいる様子がわかる (C) Roskosmos

(次回に続く)

参考

・Soyuz fails to deliver 19 satellites from Vostochny
・Soyuz Users Manual
・https://www.roscosmos.ru/24385/
・https://www.laspace.ru/company/products/launch-vehicles/fregat/
・http://novosti-kosmonavtiki.ru/forum/forum12/topic16159/

著者プロフィヌル

鳥嶋真也(ずりした・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙䜜家クラブ䌚員。囜内倖の宇宙開発に関する取材、ニュヌスや論考の執筆、新聞やテレビ、ラゞオでの解説などを行なっおいる。

著曞に『むヌロン・マスク』(共著、掋泉瀟)など。

Webサむトhttp://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info