2015年4月4日、夜7時15分~10時45分ごろまで、日本全国で月食が見られます。しかも、日本で、全部欠ける「皆既(かいき)月食」で、早朝とかじゃなくて観察しやすい夜の早めの時間に見られるゼッコーのものはなかなかないのでございます…ん? どっかで見たような。そうなんです。半年前。2014年10月の皆既月食でも同じようなガイドを書いてたのでした。はい。内容はどうしても似てしまうのでございますが、これを見落とすと日本ではむこう3年皆既月食は見られませんので、あらためて書かせていただきますー。

どんなショーなのか

月食は満月の時にだけ見られる現象です。煌々と照っていた満月がわずか1時間ほどでみるみる欠けていって、全部欠ける皆既になると、赤黒ーい色の月が見られる現象です。この色は、皆既月食の時にしか見られません。なんとも奇妙で、思わず見入ってしまうできごとです。この、赤黒―い色の月、ブラッドムーンが見られるのは、今回はおよそ12分ほどです。前回は1時間でしたから、ちょっと短めでございますな。

それから、空も同時に暗くなるのですが…都会では、いつでも空が月夜のように明るいものでわからないのですが、田舎でみると、背景の星がぐっと見やすくなります。

砂漠の真ん中タジキスタンでとらえられた前回の皆既月食のタイムラプス動画を見てくださいませ。

Total Lunar Eclipse In Tajikistan from Jean-Luc Dauvergne on Vimeo.

Total Lunar Eclipse In Tajikistan (C)Jean-Luc Dauvergne (Ciel et Espace); Music: Valère Leroy & Sophie Huet (Space-Music)

皆既月食になると、天の川まで見えるようになるのがわかります。都会ではかなわないことです。

一方、都会でとらえられた写真も見事ですな。中国の重慶からとらえたのが、こちらでございます。

Eclipse at Moonrise (C)Zhou Yannan

こうした写真は、GoPROなどのアクションカメラなど、タイムラプスが手軽に撮れるカメラで十分撮影できますので、よろしければぜひ試してみてくださいませー。

こう見ればいいのだー

「夜9時(21時)」前後に見る。このポイントを押さえれば、まずは大丈夫です。土曜日ですので、気軽に見られる時間ですなー。方向? 南東の方です。よほど目の前にビルなどの障害物がなければ、十分に見られると思います。

あとは道具もいりません。フツーに月を見たらよいです。もうちょっといえば、見ごろは、赤黒―いブラッドムーンになる-完全に欠ける皆既月食の状態でございますが、

皆既月食: 20時54分 ~ 21時6分

です。ちなみに、日本全国、どこでも同じ時刻です。

さらに、だんだん欠けていくところ、欠けたのがもどっていくところもなかなかおもしろいです。それぞれ1時間くらいかけて、ゆっくりすすんでいきます。じっと見るというより、チラチラチェックするのがいいですな。

  • 欠けはじめ: 19時15分
  • 欠け終わり: 22時45分

国立天文台(さすがの日本時間)やNASA(世界標準時なので+9時間してください 右下のEclipse Contactsの時刻です)のサイトには、もうちょっと細かい予報がでています。細かい数字が気になるーという方はこちらをどうぞ。

月食はアバウトな現象です

ところで、国立天文台とNASAでは数字が違いますな。皆既状態が、国立天文台では12分間のところ、NASAでは5分弱しかないことになっております(Eclipse Duration Total 0h4m43s)。これは月の形などの基本となるデータが、国立天文台とNASAが採用するもので違うからなのでございます。プロの予報がずれるのは、おもしろいですな。ちなみに「どっちも正しいのです。というのは、月食って始まりや終わりがなんかハッキリしない現象なんです。「あ、はじまった」「おわった」というのが見る人によって、かなーりズレるのですなー。なので、ちょっとのりしろ付けて見ておいて大丈夫でございます。

東~南東~南に窓があれば、そこからでも見えるかも

月食がはじまるとき、かけはじめは低空に月があります。それから1時間くらい、皆既になるくらいまでは、遠くが見えるビルの窓からでも楽しめる可能性がかなーりあります。土曜日ですので、ちょっとながめがいいレストランから見るなんてオッシャレーですな。まあ、そういうのに対応していればですけれども。

ということで月食は、見りゃみれるというわっかりやすい天文ショーなのですが、もうちょい楽しむにはどうすればよいか。ポイントをご紹介します。

写真を撮ろう

写メでもOKです。最近の携帯やスマホのカメラは、かなりよくできていて、いきなりでもうまくいくことが多いようですなー。ただし、どうもうまくいかないという場合は、次のポイントをチェックしてください。

1. 遠方にピントがでるように工夫

風景撮影モードや、花火、夜景などのモードがあればそれにあわせると吉です。

デジタルカメラで細かく調整できるのであれば、無限大∞にピントをあわせてください。

2. 露出をなんとかする

露出オーバーとかアンダーになりやすいのが、天体撮影でございます。たいていは、オーバーになってしまいますな。背景の暗い空にあわせちゃうんですなー。そういうときは、手を写野にわざといれて、そこはピンぼけになっていいので、明るい手に露出をあわせるとうまくいく「場合も」あります。

同じ原理で、自撮りで月と、自分の顔を一緒に写すのも手です。さらに、どうしようもないときは、ダメもとでストロボをたいてみてください。カメラがストロボにあわせて露出を下げてくれてちょうどよくなる「ことも」あります。

ちょっとカメラのこと知っている方は、天体ファンサイトのアストロアーツさんの解説もご参照くださいませ。

3. さらにテクニック。三脚―

カメラなら簡易なものでよいので、三脚に載せて撮影するとよいです。そのさいに「セルフタイマー」を使うと手ぶれがない写真が撮影できますなー。

4. アクションカメラでタイムラプス+比較明合成ソフト

また、三脚で方向固定して、アクションカメラのGoPROなんかでも、結構おもしろい写真が撮影できるようですよ。こうしたカメラはたいてい広角なので、月の形というよりは、明るさの変化を楽しむって形になります。タイムラプスで撮影したものを、SiriusCompといった「比較明」合成ソフトで処理するのもおもしろいですなー   

5. ビデオ撮影もよい、ネット中継もしちゃいます?

2時間あまりありますから、バッテリーそのほか注意してやってくださいませー。

双眼鏡。望遠鏡で迫力アップ

はい、あればそれにこしたことはないですね。アップで見る月はいいもんです。倍率は50倍くらいまでで、10倍でも5倍でも、肉眼とは違う楽しみができます。双眼鏡をスマホでのぞかせて撮影ってのもいいです。うまくいけば…ですけれども。

観察会に参加するー、ネット中継もチェック

都会でも観察会が予定されています。大勢でわいわい、指導員のガイド付きで見るのもよいですお。当日直接いけばいいところをいくつかピックアップしておきます。交通・連絡先などはURLチェック。天候によって中止になることもありますので、そこはご注意を。

このほかにも、各地の科学館で観望会が予定されています。地元の情報をぜひチェックしてみてくださいませー。

ちなみに今後の月食は…

(○は日本で見られる ×は見られないものです)

  • ×:2015年11月23日 米国~ヨーロッパで見られる皆既月食…日本はアウトです
  • ×:2016年3月23日 月の端が明確に欠けない半影月食 ほぼわからない
  • ×:2016年11月17日 月の端が明確に欠けない半影月食 日本はアウト
  • ×:2017年2月11日 月の端が明確に欠けない半影月食 日本はアウト
  • ○:2017年8月8日 夜中2時すぎに見られる部分月食です
  • ○:2018年1月31日 午後9時前後の皆既月食。今回と同じ以上のグッド1時間以上皆既です
  • ○:2018年7月28日 夜明け前の3時前後の皆既月食です。1時間続くのですが早起き必要
  • ×:2019年1月21日 米国~ヨーロッパで見られる皆既月食…日本はアウト

そして、日本で見られる次は…2021年なんですね。ということで、月食はそうそうチャンスがないので、今回はぜひお見逃しなくー!

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。