2026年4月7日、人類は地球から到達した距離の新記録を達成しました。NASAの月探査アルテミスIIのオリオン宇宙船乗り組みの4人によるもので、かなり大きく発表されました。で、行ったのは月。あれ? 50年前にも人類アポロで人類は月に行って、なんなら月面歩いているよね。国際宇宙ステーションとか、えっと日本人も民間宇宙旅行したんじゃないっけ? あの火星とか木星探査もしているよね? どういうこと? というのをうっすら解説いたします。
アルテミスII、地球から最も離れた新記録達成ですってよ
2026年4月2日7時35分(日本時間)。NASAのスペース・ローンチ・システム(SLS)により、アルテミスIIの打ち上げが成功しました。月探査アルテミス計画の初の有人飛行で、4人の宇宙飛行士が搭乗。地球からみて、月の向こう側(裏側:英語では far side)の上空を、ぐるっとまわって、地球に戻る月往復10日間の旅でございます。まあ、その内まる1日は地球周回をしてのテストだったのでございますので、行き4日、帰り4日あまりの月旅行でございます。
さて、今回、このアルテミスIIは、2026年4月7日2時56分(日本時間)に人類最遠地点に到達したということでございます。NASAの公式が言っております。そこは、地球から見て月の向こう側、裏側上空ということですね。地球からの距離は、252,756 miles……マイルかい! 406,771 kmでございました。ちなみにその2分前に、月の裏側に最接近して、月面から4,067miles(6,545 km)上空を通過しています。ちなみにその前後40分間は、月の影になって地球との通信が途絶しています。ざっくり下の図の11番の位置にいたからでございますな。
半世紀前のアポロはどうだったんかな。実は9機も月の向こう側まで行っています
んが、そういうと、あれ、アポロは? となりますな。実はそれまでの記録はアポロ13号による248,655 miles……400,171 kmです。6,600 kmばかり遠いのですが、まあ大差はありません。大差はないけど、そこを人類記録(キリッ!)という、いやまちがっちゃいないのだけど、うん、まあ言わないと誰も相手にしてくれない欧米の文化やなーと思ってしまいます。
ただ、ちっとなんでなんや、同じことやっているのにという疑問が出てまいります。人類で月に到達したのは、これまでアメリカのアポロ計画だけです(着陸しなくても)ので、ちょっと整理しようと思います。
人類は半世紀前の1968年12月24日に、アポロ8号で初めて月軌道まで到達しています。この時は3人のアメリカ人、フランク・ボーマン、ジム・ラヴェル、ウィリアム・アンダースが乗り組み、初めて月まで到達した3人として時の人になりました。また、この時、月を20時間で10周しているのですが、そのさい撮影された月面越しに見る地球の出「EarthRise」の写真は、Time誌によって20世紀を代表する写真の1枚とされています。
なお、この時は月周回軌道にアポロ宇宙船を投入するテストであり、その後、9号は地球周回軌道でのテストをし、10号では、ふたたび3人が月軌道まで行き、月着陸のリハーサルをして、1969年の7月にアポロ11号で人類初の月着陸がなされました。「宇宙兄弟」にでてくるニールとバズですな。その後、12、13、14、15、16、17と6機のアポロで3人ずつが月軌道に到達し、失敗した13号以外は、2人ずつが月への着陸を果たしています。
ということで、アポロ計画では9機のアポロ宇宙船で27人が月軌道に到達、12人が月に着陸しています。着陸したアポロは月周回組が1人ずつおり、月の裏側をまわっています。
さて、ということでアルテミスII以前に9機が有人月飛行をやっていて、最遠が失敗したアポロ13号で、今回のアルテミスIIはそれを抜いたということでしたが、うむ、いったいなんで。という気がいたしますな。運もありますが、ある意味必然なのでございます。
月までの距離は4万kmも変化する
まず、運は月までの距離です。地球から平均38万kmを周回する月ですが、その軌道は地球を焦点とする楕円形であり、近いところと遠いところで4万kmも変化します。
アポロ計画では、周回しますから、その間も距離が変化します。ではどうだったのか一覧表にしてみます。世界時です。
宇宙船:月軌道投入日:その日の月の距離(月軌道投入はせず、自由帰還軌道での最接近日)
- アポロ8号:1968年12月24日:377,300 km
- アポロ10号:1969年5月21日:400,000 km
- アポロ11号:1969年7月19日:391,200 km
- アポロ12号:1969年11月17日:370,100 km
- アポロ13号:1970年4月15日:400,200 km
- アポロ14号:1971年2月4日:364,700 km
- アポロ15号:1971年7月29日:392,100 km
- アポロ16号:1972年4月19日:375,100 km
- アポロ17号:1972年12月10日:396,500 km
ちなみにアルテミスIIの2026年4月6日(世界時)では、月は405,500 kmでございます。これは、ほぼ月の最遠406,700 kmでの月接近であり、いや、これ狙ったんじゃないのという感じでございます。まあ、1週間後には388,000 km、2週間後は月は地球に最も近い361,630 kmですので、打ち上げが延期になったら、この記録はできなかったでありましょう。そこは運でございます。
月にギリギリまで近づくか、大回りするか
アポロとアルテミスは、両方とも月の着陸がからむプロジェクトです。ただアプローチのしかたが違うために、アポロは月にギリギリ近づく軌道をとりますが、アルテミスはもうちょい上空になります。
アポロは1機のロケットで着陸船と周回船(司令船)を一緒に運ぶプロジェクトでした。周回船と着陸船は合体して月に向かい、月上空で分離して着陸し、また離陸してくる着陸船を周回船と合体させます。着陸・合体させるからには、月にある程度近づかなければなりません。したがって、軌道は月からあまり離れないことになります。
ところがアルテミスは、月まで人間を運ぶ宇宙船が月上空の宇宙ステーションGatewayに合体し、さらに着陸する宇宙船に移乗して着陸するという手筈になっています。月に近づく必要はないのです。さらに着陸するのは月の南極付近です。
なお、このGatewayですが、3月になって突然やめることになってしまいました。そのために開発をしていた人たちはぽかーんで、思い切り準備をしてきたJAXAもぽかーんだと思います。どうなるんでしょうね。
ちなみに、それまでの記録だったアポロ13号は、月が地球から離れた時間だったこともありますが、失敗によって着陸をあきらめたので、より安全な高い高度を飛んだためというのもあります。
ということで、最遠記録についてうっすらと書いてみました。え? マニアック、微妙? いやそのNASAが……。


