大阪で「万博展示技術の展示会」を見てきました。ただ、この展示会は技術の紹介はちょっとだけで、万博の展示のしかたを13通り、現物資料をケースの中において見せて「さあ、比較してみて考えてみて」というもの。小規模で地味でございましたが、なんともジワッたのでご紹介します。

3月も末ということで、卒業、退社、花粉症と桜と「プロジェクト・ヘイル・メアリー」でございますな。最後のやつはネタバレ禁止令がでているので語りませんが、おもしろかったです。個人的には同じ作者の「火星の人(The Martian)」もいいよと言いたいです。あ、映画の邦題は「オデッセイ」ね。なぜか。

大阪市立科学館でSLSロケット模型は、万博とちがってガッツリ見られる

  • SLSロケット模型

さて、しののめは、かわらず万博ロスをわずらっており、大阪・関西万博の聖地、大阪に行ってまいりました! そこでほぼ一周年(万博は2025年4月13日開幕だった)の4月12日に「大阪府吹田市の」万博公園で大イベントがあると聞いて「しまった行くのが早かったか」「まあ、でも事前抽選か…万博終わってもか」と心乱れておる次第です。ということで、乱れないですむ大阪市立科学館の常設展示「スペース ローンチ システム(SLS)1/32模型」を見てまいりました。

ひとことでいうと「デカい!」です。3mもあり見上げんばかりです。こんなデカいもの、アメリカパビリオンであまり気にしてなかったのは(前回の連載 第314回参照)、万博の時にいかにうわついていたかですな。

ちなみに前回レポートでは居住スペースのことばかり気にしていましたが、いや、デカいデカい。横に同じ1/32のオリオン宇宙船(3Dプリンタ打ち出し?)とクルマの模型がおいてあったのですが、ともかくロケットがあきれるほどに大きいのがよくわかりました。また、外部にむき出しになった燃料パイプやら燃料パイプの接続部も再現していて「NASAが製作した」モデルだけのことはございました。

ちなみに展示場は春休みにはいっていることもあってか、そうとう混みあっていましたが、この模型はガン見している人はいたものの、わりと落ち着いて見られます。私は、たぶん20分間以上そこにいましたが、これはアメリカパビリオンではできなかったことで、ありがとうという感じです。ちなみに、展示場の最初? にあるのですぐわかりますよ。

ちなみにSLSロケットは、2月と3月の打ち上げ予定は、それぞれ燃料漏れや、ガス漏れのトラブルで延期になり、整備棟(VAB)に戻っていましたが、4月2日打ち上げに向けて発射タワーに設置されて、点検が進められ、いまのところ(3月20日時点)順調とのことです。最新情報はNASAのアルテミスブログで読めます。最近の自動翻訳は使い物になるので英語苦手な方も、チェックしてみてくださいねー。

新収資料展「万博展示のパートナー、手持ちデバイス展」

さて、今回、大阪市立科学館に行ったのは、4月12日で終了する企画展? いや新収資料展「万博展示のパートナー、手持ちデバイス展」が開催されていて、結構混んできているという情報を得たからです。

プレスリリースによると「科学館が万博のレガシーとして収集したデバイスを基本」に「万博が拓いた新たな展示のあり方を、貴重な実物資料で振り返ります。」とあり、これは博物館などが、新しい資料を収集したときに(展示内容はこなれてなくても、いち早く公開する)新収資料展の形をとっていることがわかります。

特別陳列とか、新資料公開展示とか、地味目な名前でございますが、おおむね、こういう展示は、関係者向けに資料を淡々と並べ、記号的な紹介をするもので、資料収集地の地図などがまずあって、と思ったのですが、なく、本当に淡々と並べてあっただけの地味~な展示でした。ともかく集めて、資料登録して、すぐ並べたというところですな。

  • 「万博展示のパートナー、手持ちデバイス展」

ただこの万博閉幕からのスピード感は非常に重要で、SLSロケット以上に資料をガン見し、一点一点写真を撮り、なんなら展示解説パネルの写真を撮る人を大勢みかけました。ミャクミャクなどなんらかの万博グッズをつけている人ばかりで、わたくしのような万博ロスをわずらっている万博ガチ勢には、まちがいなく刺さっていました。万博の現場にあったものが、いやお土産とかじゃなく実物が目の前で見られるんだものね、科学館にいながら、歴史博物館の「武将の兜」「地域の昔の農耕器具」を見ているような感じです。ストーリーはパネルもありつつガチ勢は勝手に脳内補完をしている感じで、わたくしもそうでございました。

展示方法の展示ってマジか? でも、おもしろい

ところで、今回の展示の対象になっている手持ちデバイスはSLSロケットのように「万博で展示されたもの」を展示するのではなく、展示の道具を展示するというものでした。

展示は「ものを並べる」「それに解説パネルをつける」「紹介の音声をつける」「紹介の映像をつける」「ミニチュア模型」「動くようにする」などいろいろな手法がありますが、まあ「これがパネル展示用のパネルです」という展示とか「これが展示を再生するテレビモニターです」とかは、展示什器の見本市とかでなければ、あまり見かけたことはありませんし、それは関係者向けであって、一般観覧者向けの展示ではございません。

ところが、この「万博体験のパートナー、手持ちデバイス展」は、まさに展示装置そのものの展示なのです。本来伝えるべきパビリオンの内容ではなく、そのパネルやスピーカーを展示しているというものなのですな。

マジかと思いましたが、「展示技術の展示」というのはたしかに科学館らしい視点ですな。そして、見たら思いのほか面白かったのでございます。いくつかピックアップいたしますね。

大人気、ポータブル解説スピーカー「サーキュラー」

でも、おもしろいです。たとえば、これ「サーキュラー」というドイツパビリオンの展示装置です。来場者が一つひとつ手に持って、ドイツパビリオンの中をめぐりました。

  • ポータブル解説スピーカー「サーキュラー」

開発はドイツのケルンにあるfacts and fictionという展示システムなどを制作する会社が作ったものです。ちなみに今回の万博では、ドイツの他、オーストリアとEUのパビリオンも関わっているそうです。

手前の、コロッとしたものが「サーキュラー」で、中にはLEDが仕込んであって光り、また振動します。そして、口の部分を耳に当てると、展示の解説音声をしゃべるスピーカーになっているのです。サーキュラーは、ドイツパビリオンのテーマである「わ! ドイツ」サーキュラーエコノミー(循環経済)という内容をあらわしたものです。

解説音声は、展示各所にあったタッチポイント(写真奥のもの)にサーキュラーの頭をあてると切り替わるほか、場内に発せられていた赤外線の信号にも反応し、エリアが変わると切り替わるようにもなっていました。音量と言語(日、英、独)は、最初のタッチポイントで変えられるようになっていました。また、最後の方のゲームなどの体験をするさいも、サーキュラーのタッチは使われました。

また「隠し機能」があり、サーキュラー同士を近づけると色が変わって歌い出し、バームクーヘン型のタッチポイントに触ると、解説ではなく「ぼくはバームクーヘン大好き」とおしゃべりし、また返す時は返却スロープから転がすのですが「わ~」といいながら転がっていきました。イースターエッグ的な遊び心がある機能もあったのですね。

このサーキュラー、ようは解説スピーカーで、内容は、美術館などでよくあるヘッドホンを使うポータブル音声ガイドと同じです。ただ、ポータブル音声ガイドより、いろいろな意味で数段進化したものであることは、よくわかると思います。

そして、解説は the SDGsな循環経済の国家的取り組みの紹介。それでも小さな子供が一生懸命サーキュラーの(正直大人でも高度で難しい)解説に聞き入るのは、いちおう展示に関わる人間としても驚くべきことでございました。

展示では、もちろん、サーキュラーは作動していません。パビリオンのシステムと切り離したらただのオブジェにしかならないわけです。となりには体験の様子の動画が流れていましたが、短く書いても上のような解説をパネルにするのは困難だと思ったのでしょうが、ただ知らない人でも「これが展示装置です」「音声ガイドです」といわれたら、えっと思うでしょう。

今回の万博での一番人気だったのはミャクミャクですが、同じくらいサーキュラーのファンは多いのですが、これはすごい展示手法を見せられたと思いました。

同じく、住友館で使われた「ランタン」も同じ効果がありました。こちらは、通信方法は不明ですが、unknown forestという森を模した場内の特定の場所に置くと、対応した演出がはじまり、音声が聞こえ、発光します。また、終了時には場内のすべてのランタンが同期するという演出がありました。森を探検するランタンというナラティブを使いながら、展示解説を、主体的に「発見していく」という内容は、大変な人気となり、入場困難パビリオンとして有名になったほどです。

テレビモニターでなく、デバイスで見せる展示

映像の展示解説といえば、固定したモニターやプロジェクターを見るのがセオリーです。実際、今回の万博でも、屋外の超大型、超高輝度のLEDアレイモニターがたくさんあり、場内でも多数のプロジェクターが活用されていました。が、展示手法としては枯れていますし、混んでいると見えにくいという欠点があります。

しかし、いまや映像や動画はスマホで見る時代です。そこでQRコードを示して、場内では専用アプリやWEBから解説動画を見せるパビリオンもたくさんありました。

しかし萌えないのです。いつも使っているスマホを使ってみても、わざわざ現場で見ていうということはないのだなー、と感じたものです。

ところが、このデバイス展では、複数の動画観覧用専用のデバイスがありました。モニターそのものは、アンドロイドやiPhone、iPadをつかったものですが、パビリオンのテーマ(たとえば鳥取は名探偵ということで虫眼鏡型。もちろん鳥取出身の某名探偵少年漫画の作者にあわせたのでしょう。)にあわせた専用フォルダーに入れることで、専用デバイスに仕立て上げていたのです。もちろん、QRコードを読み取ってではなくAR技術を使うものでしたが、これまた自分で見たいところで見るというので、なんか夢中になってしまいました。時間に限りがあるのもよかったのかもしれません。

  • デバイスで見せる展示

工場の生産管理とか、自動レジにつかわれるRFIDがエンタメに

また、RFIDを使ったものもありました。ただのカードではなく、石ころやら結晶やら、光るタマゴやらの形状をしているのが面白いですな。腕に着けるバンド型もありました。ユニバーサルスタジオのニンテンドーワールドにも似たようなものがあったと思いますが(RFIDかは不明)、超実用的なRFID技術がこのように多彩な展開をするとはちょっと考えていなかったです。まあ、工場生産管理のQRコードがここまで世の中で使われるとはというのと同じ感慨がありますが、ここでは様々なデザインに展開できる(QRコードはそうはいかない)のもおもしろいところです。

  • RFIDによるエンタメ
  • RFIDによるエンタメ

返さなければいけない手持ちデバイスと返し方

さて、万博の手持ちデバイス、ここでは13種類が展示されていましたが、そのほとんどが「返却する」必要がありました。

サーキュラーはスロープに転がす形でしたが、カウンターで手渡すもの、樹木のようなラックに引っ掛けるなどいろいろで、返すとお返しにカードが出てくるという工夫をしたところもありました。間違えって持ち帰る、盗難といった問題もあったそうですが、おおむねちゃんとまわっていたようで、多種多様なデバイスをみながらウームと唸ってしまいました。

未来社会の実験場

万博は「未来社会の実験場」といいます。実際、最初の万博からして「総ガラス張りの金属フレームのプレハブ建物」というチャレンジングな会場でしたし「世界最大の建物の倍の鉄骨のタワーを作る:エッフェル塔」ということもおこなわれました。

1970年万博では、コンピュータを使って場内管制や迷子のマッチングなどが行われるなど今では社会に実装されている技術が万博で試されたケースは枚挙にいとまがありません。なにしろ何千、何万と人が集まるのです。老若男女です。そこで成果があがるのは、社会にもつかえる技術という証明であります。

数千個というデバイスを渡して、回収し、充電や、修理をして184日まわし続ける。壮大な実験の成果を展示ケースの中で見ることができる。おもしろい展示会だなと思いました。4月12日までだそうです。展示観覧料は400円でほかの全部の常設展示(SLS模型も)コミコミ、中学生以下は無料です。

大阪へ行く機会があれば、テクノロジー好きな人にも刺さると思いますよ。