暦の上では春なんていう言い方を時々します。この暦というのはセプテンバー(古いな)とかではなく、啓蟄(けいちつ)や春分などの二十四節気(にじゅうしせっき)を目安にしています。今回は、カレンダーや手帳の片隅にみかけ、天気予報番組の定番ネタである二十四節気について、ちょいとご紹介しますねー。

暑さ寒さも彼岸まで

不肖しののめ、都市生活者なのですが、なんというか寒いですな。この冬の光熱水費を見て、えっとなっている昨今でございます。

さて、この寒さですが、いつまでも続くのか。よく「暑さ寒さも彼岸まで」なんていう言い方をしますな。お墓のある郷里を離れていると、彼岸といってもねという感じですが。まあ仏教の浄土信仰からでてきていて、極楽浄土が真西にあるとされていたので、太陽が真西に沈む時期を、彼岸としたのだそうです。太陽が真西に沈むとあの世とこの世が結ばれ、亡くなったばあちゃん/じいちゃんがこっちを見る。だから彼岸にお墓参りなのだそうです。えー、仏教のことは門外漢なので、これくらいにしておきますな。

彼岸は太陽が極楽浄土のあるとされる真西に沈むからのはずですが……

で、彼岸は太陽が真西に沈むのは、ほぼ春分と秋分です。その春分を真ん中にして、前後3日ずつを彼岸の時期とするわけです。今年2022年は3月18日~3月24日と9月20日~9月26日が彼岸でございます。

春分と秋分はそれぞれ国立天文台が発行する暦要項に掲載されていて、3月21日と9月23日でございます。そこには、太陽黄経0度と180度とございます。太陽が1年間で星空の中を動いていくなかで、0度と180度を通過する瞬間を含む日が春分と秋分とされているわけですな。

ここで問題です。 

あれ? 極楽浄土が真西ってどこいった?

なんじゃ、その太陽黄経0度というのは?

そーなんですな。彼岸の基準となっている春分や秋分は、太陽が真西に沈む日として定義されていなければ、実際に真西に沈まなかったりします。まあ、だいたい真西なんですが、ちょっとだけ北よりになります。どの程度かは、この連載ではおなじみのアストロアーツ社のPCプラネタリウムアプリ、ステラナビゲーターで見てみると、下の図の通りです。5分ごとの太陽の位置を示しました。ちなみに、場所によりますが、東京だと真西に沈むのは、18-19日になります。春の彼岸の入り、それから秋の彼岸の終わりころには、真西には沈みます。ただ春分、秋分をはさんで均等じゃないんですね。

  • 二十四節気

    3月21日東京での日の入り前の太陽の動き。5分ごとの様子。縦横の線は2度ごと。春分の日、太陽は真西よりちょい北に沈む

なお、赤道直下では春分にちゃんと真西に沈みます。シンガポールあたりならば、まあ春分は真西に沈むといっていいですな。シンガポールは仏教国じゃないですけど。

  • 二十四節気

    シンガポールでの3月20日の日の入り。5分ごとの様子。赤道近くのシンガポールではほぼ垂直に太陽が沈む

春分の日を決める「太陽黄経」の0度とは?(ちょっとややこしいですが……)

さて、ここで春分になる太陽黄経(たいようこうけい)0度というのは、なんじゃらほいという話です。

太陽黄経の経は、「緯度・経度」の経です。緯度経度といえば、東京なら北緯36度、東経139度とかいう、まあ、地図上の座標ですね。基準の0度は、緯度が赤道。経度はロンドン郊外のグリニッジです。

で、黄経と、あと黄緯もあるのですが、これは太陽を基準としていて、太陽が年間を通じて移動するのが黄道といい黄緯が0度。黄経は、黄道と赤道が交差するのが、黄経0度としています。ちょっとわかりにくいかなー。

で、太陽が赤道を通過する「赤道祭」の日が春分といってもいいですな。黄道と赤道、太陽の1年間の動きを前述のステラナビゲーターで図にしました、少しは理解の助けになるとよいのですが。

(天の)赤道は、どの緯度でも、地平線で真西と真東と交差します。太陽が赤道にあれば、地平線、つまり日の入りの時に真西になるんですな。

以上をまとめますと、太陽黄経0度=赤道上=地平線で真西となるのですが、ここで1つ問題がございます。大気の影響と太陽の大きさです。

大気の影響で、太陽は少し浮かび上がります。この効果は低空になるほど大きいのです。したがって、赤道と地平線の交点に太陽があるはずが、地平線より上に見える=日の入りにならないのでございます。

また、日の入りの定義で、太陽の上端が沈むの日の入りとなっています。一方で太陽の黄経度は太陽の中心で決まりますので、0.25度ほどズレがあります。これまた太陽が浮かび上がるのと同じ効果があります。

  • 二十四節気

    黄道の上を1年かけて移動する太陽。1か月ごとの位置。(天の)赤道が中央の線

太陽の黄経の位置で、季節を表す二十四節気

さて、ということで、太陽の黄経0度が春分で、180度が秋分です。じゃあ、90度は? 夏至なんですな。で、270度が冬至です。さらにこれを15度ずつ24分割したものが二十四節気です。国立天文台のホームページに一覧がありますが、ちょっと整理し直すとこんな感じです。

  • 二十四節気

この中で、やはり重視されるのは春分です。仏教では彼岸の基準ですが、キリスト教ではイースターの基準(春分のあとの満月の後の日曜日)になりますし、そもそもが春分、つまりいまの3月がローマ時代は1年のはじまりだったのですな。だから、9月なのにセプテンバー(第7)、10月がオクトーバー(第8)、12月がディセンバー(第10)とかなっているのはその名残でございます。

さて、まもなく春分。太陽のスタートの時期です。よいニュースがあればと思いますね。