Custom instructionsは、2023年7月に有料のChatGPT Plus向けにリリースされた機能です。8月には無料ユーザーでも利用できるようになりました。今回は、Custom instructions機能を使いこなす方法を紹介します。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。
前提条件と出力形式を自由に指定できる
ChatGPTのプロンプトには、前提条件や出力形式を含めると求める情報を得やすくなります。しかし、毎回入力するのは手間がかかります。Custom instructionsはそのようなプロンプトをあらかじめ登録しておいて、毎回の出力時に適用してくれるのです。
以前はβ機能だったので、設定画面から有効にする必要がありましたが、今は「…」メニューから入力画面が開きます。入力項目は2つ用意されています。
1つ目が「What would you like ChatGPT to know about you to provide better responses?」(ChatGPTに、より良い回答を提供するために、あなたについて知っておいてほしい情報は何ですか?)です。フォームを選択すると右側にサンプルが表示されます。
例えば、自分の名前や住居、趣味、目標などを入力してみます。「札幌に住んでいます」と設定し、ChatGPTに「私はどこに住んでいますか?」と聞けば、「あなたは札幌に住んでいます」と返してくれます。
Custom instructionsに登録したプロンプトはプラグインにも有効です。「食べログ」のプラグインを有効にした状態で、質問してみましょう。
-
プロンプト
家の近くで、ウイスキーをたくさん置いているバーを教えてください。明日、一人でも入れるところがいいです。
出力
「家の近くで」としか入力していないのに、札幌に住んでいる前提で検索してくれるのです。Custom instructionsの下のフォームには「How would you like ChatGPT to respond?」(ChatGPTにどのように応答してほしいですか?)の内容を入力します。サンプルは以下の通りです。
How formal or casual should ChatGPT be?(ChatGPTはどれだけフォーマルまたはカジュアルであるべきですか?) How long or short should responses generally be?(一般的に、回答はどのくらい長く、あるいは短くすべきでしょうか?) How do you want to be addressed?(どのように呼ばれたいですか?) Should ChatGPT have opinions on topics or remain neutral?(ChatGPTはトピックに対して意見を持つべきですか、それとも中立であるべきですか?)
まずは、「小学生にもわかるように丁寧に噛み砕いて、詳細に回答してください」と設定しておきます。この状況で、専門用語について尋ねてみましょう。
-
プロンプト
デジタル免疫って何?
出力
口調も変えられます。通常はですます調ですが、だである調にすることもできます。俺様口調でも、ツンデレ口調でも、峰不二子の口調でも指示すれば演じてくれます。完ぺきとは言えませんが、なかなかのクオリティなので、プライベートで使うなら一度遊んでみましょう。
「すべての回答をツン要素多めのツンデレ口調で書いてください」と設定して睡眠の質を上げる方法を聞いてみました。
-
出力
求める回答が得られるようなCustom instructions用プロンプト
ChatGPTはシンプルな質問に対しては500文字程度で返信してくることが多いのですが、少々物足りないことがあります。
さらに長文の出力が欲しい場合は「もっと詳しく」と追加で入力したり、プロンプトに「詳細に回答して」などと入れたりする必要があります。何度も入力するのは面倒なので、Custom instructionsにこれらのプロンプトを入れておきましょう。
また、ChatGPTは入力したプロンプトを繰り返して出力したり、「ただし、アイディアの評価や適切な選択は、人間の責任となります」のようなエクスキューズを返してくることがあります。こちらも、不要ならCustom instructionsに指示しておきましょう。まずは、ノーマル状態で出力させてみます。
-
プロンプト
アダプティブAIシステムとは何ですか?
出力
525文字の出力が得られました。今度はCustom instructionsに詳細に回答するように、不要な文言は不要、などと設定しておきましょう。1000文字くらい欲しいのであれば文字数も記載しておきます。しかし、日本語の文字数は正確に認識してくれません。1.5倍から2倍程度を指定しておくとよいでしょう。
Custom instructions用のプロンプトとしては「出力は詳細に回答してください。文字数は必ず1500語以上でお願いします。不要な繰り返しや、言い訳のような文言は不要です」とすればよいでしょう。
同じプロンプトを入力しても、Custom instructionsの設定により、1004文字の出力が得られました。もちろん、不要な繰り返しや言い訳もありません。
例えば、ブログ記事の下書きを書くことが多いなら、骨子を先に出力させてから、それぞれの内容を詳細に書かせるようにすると便利です。SEO対策のための目次を作りやすいですし、内容を膨らませたい項目があるなら「2番を詳細に書いて」と追加でプロンプトを入力するだけで済みます。
-
プロンプト
量子コンピューティングについて解説してください
出力
ChatGPTは無茶振り上等です。「ウィスキー「トゥールビヨン」のプレスリリースを書いてください」とだけ入力しても、1000文字を超えるリリースを書いてくれます。しかし、当然詳細な情報がないのですから、一般的なウイスキーの情報をふわっと羅列するだけの内容になってしまいます。
これは、どんな質問にも言えることです。実は、プロンプトを改善すると、足りない情報をChatGPTに逆質問してもらうことができます。ブラッシュアップしたプロンプトを入力すれば、よりよい回答が得られるのです。
この手順をCustom instructionsに入れておけば、ChatGPTがさらに賢くなります。例えば、リリースを書いてと入れると、必要な情報を聞いてきてくれます。それぞれの質問に回答すれば、きちんとしたリリースを出力してくれるのです。
Custom instructions用プロンプトとして「入力したプロンプトを改善して、より良い結果を得られるプロンプトを作るために必要な情報がある場合は、必ず私に追加質問してください。その後、回答してください」と入力します。
-
プロンプト
ウィスキー「トゥールビヨン」のプレスリリースを書いてください
-
出力
申し訳ありませんが、トゥールビヨンという特定のウィスキーに関する情報が提供されていないため、詳細なプレスリリースを作成するのは難しいです。ウィスキーのプレスリリースを作成するには、以下の情報が必要です:
ウィスキーの名称とブランドに関する情報。
ウィスキーの製造地や生産者についての詳細。
ウィスキーの特徴や味わいに関する情報。
今回のリリースに関連する背景情報や特別な要素。
リリース日程や場所に関する情報。
ウィスキーの販売戦略や価格についての情報。
ご購入方法や入手可能な場所に関する情報。
もちろん、このCustom instructions用プロンプトはリリースだけにとどまらず、一般的な用途で使えます。例えば、「睡眠の質を上げる方法を教えてください」と入れれば、睡眠サイクルや環境、運動習慣などを聞いてきます。
プロンプトによっては質問をしてこないこともありますが、プロンプトを作りこむのが苦手な人はCustom instructionsに逆質問するように入力しておくとよいでしょう。
ChatGPTで英会話の練習をする
連載の第4回「言葉の意味を知る、言語を学ぶ、新語を生み出す」で、英会話を練習するプロンプトを紹介しました。
このプロンプトをCustom instructions用にカスタマイズして設定しておくと、直接英会話の練習ができます。まずは、ChatGPTの役割をアメリカ人の友人と設定し、出力フォーマットを指定します。
入力した英文を添削し、必要に応じて修正してもらいます。勉強のために、修正した理由を教えてもらいましょう。そして、修正した文章に対する返答を出力してもらいます。Custom instructionsに自分の情報を入れておくと、その情報を元に名前で呼びかけて会話してくれることもあります。
-
プロンプト
hello
出力
うまく英会話が進んでますね。途中で、フォーマットに沿わない出力をしはじめたら「New chat」をクリックして新たに会話を始めましょう。
英語力が低くて無茶苦茶な文章を入れても、ChatGPTは意外としっかりと意図を汲んでくれて教えてくれます。とてもためになるので、ぜひ活用しましょう。もちろん、英語以外の言語も指定できます。イタリア人の友人とイタリア語で会話すると指示すればいいのです。
以上が、Custom instructionsに入れておきたいプロンプトの紹介となります。頻繁に入力するプロンプトがあるなら設定しておくと手間が省けます。
ChatGPTをさまざまな用途で使う場合、すべてに効果のあるプロンプトを考えるのは難しいのですが、詳細に出力したり、不足があれば追加質問させたり、まずは骨子を箇条書きさせたりするプロンプトは汎用的に使えるので試してみましょう。