シーメンス傘下のMendixは9月7日、オンラインイベント「Mendix 10 Japan Festival」を神奈川県で開催した。同イベントでは、ローコード開発プラットフォームの最新版となる「Mendix 10」について、開発をリードしたDanny Roest氏が新機能などを語った。

Roest氏は、同製品について「課題の発見からシステムの構築、開発、運用、さらなる改善まで、一連の流れを継続的に支援する。これにより、ユーザーや開発者を含めた各ステークホルダーに有用なアプリケーション開発を可能にする」と説明した。

  • Mendix アプリケーション開発ユニット(Studio Pro) プロダクトマネジメント シニアディレクター Danny Roest氏

    Mendix アプリケーション開発ユニット(Studio Pro) プロダクトマネジメント シニアディレクター Danny Roest氏

同氏は続けて、Mendix 10の主なトピックとしてDeveloper Experience(開発者体験)を挙げた。同製品はフュージョンチームでの利用に対応しており、専門技術を持っていないスタッフからエンジニアリングの専門家まで、同一のプラットフォームで幅広く支援するという。つまり、ノーコード・ローコードに加えて、これまでのようにコードを用いた開発まで広く対応可能だ。

  • さまざまな立場の開発者が協働できるという

    さまざまな立場の開発者が協働できるという

さらに、「同製品のプリンシプル(基本原則)は大きく3つある」と同氏は続けた。1つ目は、開発体験の有無や優劣にかかわらず、ユースケースを問わず、容易に素早く開発を始められる点。2つ目は、柔軟性だ。ローコード・ノーコードでのアプリケーション開発にも対応するため、開発者は顧客の要望に応じたサービスをフレキシブルに開発できる。3つ目はフルコントロールで、APIやSDKを用いた開発で幅広いユースケースに対応する。

  • Mendix 10の3つのプリンシプル

    Mendix 10の3つのプリンシプル

Mendix 10のインタフェースでは、いくつか新たな変更が加えられたそうだ。ダークモードを追加したほか、スプレッドシートをアップロードするだけで開発を開始できるようになった。また、ビジュアルデータフィルタという機能では、ノーコードでクエリを作成できるようになった。PDFの作成にも対応する。

加えて、Windows版と同等の機能を有するMac版もリリース予定であることをRoest氏は明かした。

  • Mendix 10主な機能アップデート

    Mendix 10主な機能アップデート

さらに、Mendix 10ではChatGPTの搭載も開始したという。AIには同製品のドキュメントやトレーニング内容、性能といった情報を用いて学習させており、より具体的な回答を得られるように調整しているとのことだ。

「AIはプロジェクトの概要やコンテキスト(文脈)を識別しているため、新たにプロジェクトに参画したメンバーでもプロジェクトを振り返って何が行われているのかを迅速に把握できるようになった」(Roest氏)

また将来的には、ユーザーの質問にAIが回答するだけでなく、実際にその作業をAIが代替して実行するようになる見込みだという。「どのようなアプリケーションを作りたいのかをAIに相談することで、ドメインモデルを作成してくれるようになる」と同氏は語った。開発者のさらなる生産性向上を支援する狙いだ。

  • ChatGPTを搭載したMendix 10のデモ画面

    ChatGPTを搭載したMendix 10のデモ画面

続けて登壇したTom de Groot氏は、クラウド版製品について述べた。「ユーザーがどのような段階にあってもサポートできるようにしている。アイデンティティの管理からマーケットプレイス、バージョンコントロール、クラウドマネジメントまで、開発の一連の流れをトータルで支援する」のだという。

同氏によると、トヨタ自動車やNECを含む企業で1万3000以上のアプリケーションがMendix 10プラットフォーム上で実装されているそうだ。ちなみに、最も多く使われているのはMendix Cloud on AWSとのことだ。SAPやSTACK ITを既存で利用している場合は、それらを利用することもできる。さらに、プライベートクラウドや、Windows / Linuxにも対応する。

  • Mendix クラウドユニット(PMP Private Mendix Platform) プロダクトマネジメント シニアディレクター Tom de Groot氏

    Mendix クラウドユニット(PMP Private Mendix Platform) プロダクトマネジメント シニアディレクター Tom de Groot氏

クラウド版では、マルチリージョンフェイルオーバーを新サービスとして展開している。これにより、災害時など東京リージョンがダウンした場合でも大阪リージョンなど他地域にレプリケーションされたデータにアクセスが切り替わる。

また、Webhook機能を備えるため、誰かが新バージョンのアプリケーションをアップデートした場合にはJenkinsなどCI/CDツールへイベントを通知する。その他、最大で従来の20倍の速度でのバックアップや、ダッシュボード機能なども備えたという。

  • クラウド版の機能群

    クラウド版の機能群