今回は、企業のオウンドメディアやブログに掲載する記事の最初から8割くらいまでをChatGPTに作ってもらうプロンプトをご紹介します。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。
ChatGPTで商用レベルの記事を作成できるのでしょうか?筆者はライターなのでポジショントークになってしまいますが、記事のテーマを指示するだけで生成するのはまだ無理です。しかし、記事を作成する多くの作業でChatGPTを活用することはできます。
企画立案、骨子の作成
まずは、企画を考えてもらいます。今回は、ビジネス系メディアに「働き方改革」をテーマにした記事を作ってみましょう。
ChatGPTのロールとして、腕利きの編集者を設定します。これは「カスタム指示(前回に紹介したCustom instructions)」に入力しても大丈夫です。「読者の興味を引くような」や「バリエーションに富んだ」といったキーワードを入れておくと、面白そうなネタが出てきます。
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プロンプト
あなたは腕利きの編集者です。読者の興味を引き、たくさん読まれるような記事の企画を作成してください。テーマは「働き方改革」です。バリエーションに富んだ企画案を20個作成してください。
出力
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プロンプト
5番を詳しく
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プロンプト
あなたは敏腕マーケッターです。「ジョブローテーション」に関するSEOのキーワードを20個リストアップしてください。
続いて、骨子の作成を行います。作成した企画とSEOのキーワードを入れて、記事を執筆させます。記事と言っても、ここでは全体を出力させるので、段落ごとのボリュームは小さく、骨子にしか利用できないので注意しましょう。
また、今回は構成案やキーワードなど多くの情報を読み込ませているので、ChatGPTが途中で指示を忘れてしまうことを防ぐため、最後に再度読み込ませています。メインとなる指示をChatGPTに再読させることで、想定通りの出力を得られる可能性が高まるのです。
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プロンプト
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出力
ジョブローテーションの未来: 職種を定期的に変えるスタイルが生む新しい働き方
1.ジョブローテーションとは?
ジョブローテーションの意味は、従業員が定期的に職種を変えることで、新しいスキルと知識を習得することを目指す人材開発の戦略です。この戦略の目的は、組織内での多様な経験を通じて、個人のスキルセットを広げ、組織の柔軟性と連携を強化することです。ジョブローテーションの歴史的背景には、従業員のモチベーションアップとキャリアパスの拡張があります。
いい感じの骨子ができました。骨子は本文のみだったので、まずは導入となるリード文を書いてもらいます。ChatGPTの同じセッションであれば、直球で「リード文を書いてください」と入力すればOKです。
筆者の場合、リード文は本文を書き終わった後に読み返しながら執筆するのですが、ChatGPTだと秒で出力できます。日本語が怪しい部分が少しありますが、内容はほぼ問題ありませんね。
執筆、原稿のブラッシュアップ
いよいよ本文を執筆します。骨子のそれぞれの項目に対して、原稿を書いてもらいましょう。その際、ChatGPTが勝手に箇条書きや小見出しなどを入れて来るのを防ぐために、文章だけで書くように指示しておきます。
ChatGPTは優等生的な回答をする傾向にあり、初回の出力は物足りないことが多いのです。そこで、初回出力をChatGPTに自分で添削させ、その結果を元にリライトさせた原稿を出力させてみましょう。
命令は「以下をステップバイステップで実行してください」として、ステップを箇条書きにすればよいのです。あまり複雑にすると正常に動作しないことがあるので、シンプルに明確に指示するようにしましょう。
最初、箇条書きや見出しはいれないでください、とだけ書いたのですが、高確率で箇条書きや見出しを入れてくるので、「絶対に入れないで」や「文章だけで」などと指示しました。それでも入れてくることがあったので、再読テクを入れたところ、ChatGPTが言うことを聞いてくれました。
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プロンプト
以下をステップバイステップで実行してください。
###ステップ
1:「1. ジョブローテーションとは?」についての原稿をもっと詳細に執筆してください。その際、箇条書きや見出しは絶対に入れないでください。文章だけで原稿を書いてください。
2:執筆した文章を評価し、足りない部分や追加すべきところを教えてください。
3:足りない部分や追加すべきところを修正した原稿をさらに詳細に執筆してください。
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ステップをもう一度読み直してください。箇条書きや見出しは入れず、2~3段落の文章で執筆してください。
出力
原稿をChatGPT自身でブラッシュアップしてもらうことで、足りない要素が追加されました。第1稿が418文字で、修正後が465文字と1割増しになっています。日本語がおかしなところはなくなっていませんが、これは自分でチェックする際に修正すればよいでしょう。
あとは、この作業を6項目+まとめの分だけ繰り返しましょう。近い将来、ChatGPTが扱えるトークン数が増えれば、一気に執筆してもらうこともできるでしょう。今でもそのようなプロンプトは作れるのですが、出力が追いつかないので、分割して作成することをお勧めします。
出力された、リードからまとめまでのテキストを原稿にしたところ、全部で5244文字と十分な文字量となりました。とりあえず、原稿にはなっていますが、あちこちに不備があります。ChatGPTの基本ですが、生成物を外部に出すのであれば、絶対に自分の目でチェック、修正する必要があります。
例えば、事例を紹介する部分があったのですが、企業名や出典が書かれていないので、ここは自分で調査・リライトが必要です。また、ChatGPTの出力する原稿は、指示語が多く、文法上は問題ないのですが読みにくいことがあります。
重複した内容を述べることがあるので削除しなければなりません。特に、他のブロックとの重複する文章を平然と書くので注意してください。一見問題なく見えますが、推敲するとバサバサと文章を削除することがあります。もし、原稿に最低文字数が決まっているなら、多めに生成しておくと安心です。
ここまでサクッと作業するなら30分で済みます。いい内容になるまでチャレンジしたとしても、1時間で作成できるでしょう。
一方、従来通り自分でネタ出し、構成案の作成、調査、執筆まで行うと、慣れている人でも半日から1日かかってしまいます。ChatGPTを活用することで業務効率は5倍も10倍もアップすると言えるでしょう。
ChatGPT原稿のクオリティは決して高くはありません。ChatGPTはヒットを打つような出力をするので、エッジの効いた内容にはならないのです。
しかし、逆にその分問題の少ない原稿になります。日本語が変な部分は多いのですが、膨大な情報量から出力された原稿は読みごたえがありました。
2割ほどの修正で済んだので、今のところ、企画から8割がたの原稿を作るまではChatGPTでできることがわかりました。今後、日本語の精度が上がり、出典を記載できるようになれば、さらに修正の手間が減ることでしょう。
以上が、オウンドメディアやブログの記事をイチから作ってもらうプロンプトとなります。ライターとしては脅威ですが、今後執筆業務の一部にChatGPTが活用されていく流れは止まらないでしょう。
今のところ、まともな原稿を生成するためには、プロンプトを工夫する必要があります。まずは、自分が読みたい記事を出力してみてはいかがでしょうか。