航空分野におけるハイブリッド駆動システムは、以前にも何回か取り上げているテーマ。その後、さらに事例が増えているので、時事ネタとして、まとめて紹介したい。「全電動化」と大風呂敷を広げるよりも、(空を飛ぶものだが)地に足が付いた取り組みが主流になっているといえよう。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照

ハイブリッド駆動システムに関するおさらい

充電スタンドを用意できる陸上と異なり、空の上ではホイホイと充電スタンドを設置することができない。そのせいか、航空の世界で「完全電動化」に走る事例は、小型無人機など、限定的な話にとどまっている。主役はどちらかというと、従来型のエンジンと電動機とバッテリを組み合わせた、ハイブリッド駆動システムの方だ。

自動車のそれと同様に、航空機でもシリーズ方式とパラレル方式がある。シリーズ方式では、エンジンは発電機の駆動に専念しており、プロペラみたいな推進装置は、エンジンとは機械的に切り離されている。だからエンジンと発電機の設置場所は比較的、自由度がある。

対してパラレル方式では、1つの推進装置にエンジンと電動機の両方を組み合わせており、その両方を併用したり使い分けたりしながら駆動する。すると必然的に、エンジンも電動機も推進装置の近くに設置しなければならない。

自動車や鉄道車両では、減速時に推進用電動機を発電機として作動させることで、制動力を発揮させると同時に運動エネルギーを電力として回収、それを蓄電池に溜め込んでいる。その電力を加勢させれば、その分だけ燃料消費を抑えられる。減速時に回収したエネルギーを加速の際に再利用しているわけだ。

ところが、航空機は事情が異なる。エンジンに余力があるときに、推進用電動機の駆動に加えて蓄電池の充電も行っておき。そして、パワーが欲しいときに、蓄電池からの電力を加勢させる。そんな運用になるようだ。理屈の上では、十分な前進速度があれば、エンジンの羽根に気流が当たって回転する(ウィンドミル)から、それで推進用電動機を発電機として機能させられそうだが、実際にはそうも行かないらしい。

DARPAのXRQ-73計画

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