JALのA350-1000が報道公開された関係で順番がずれてしまったが、今回は、前々回に続き(前々回はANAの777Fを紹介)、先日取材した日本貨物航空(NCA)の747-8Fを紹介する。
787-8Fはその名の通り、ボーイング747の最新型にして最終型・747-8のうち貨物型。NCAは貨物専業で、以前は747-400Fを10機運航していたが、2012年7月から747-8Fの受領を開始。現在は8機が稼働しており、747-400Fは退役した。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照。
747-8Fならではの特徴
747-8シリーズでは、エンジンの新型化や胴体の延長を図っている。旅客型と貨物型があるが、NCAが導入したのはもちろん貨物型。よって、メインデッキとロワーデッキの両方を貨物の搭載に充てている。
もちろん、747-8Fの胴体直径は777Fよりも大きい。ただし、777Fとの最大の相違点はそこではなく、ノーズカーゴドアを備えているところ。機首が上向きにガバッと開いて、前方から貨物室にアクセスできる。開口のサイズは243.84cm×264.16cm(96in×104in)。
これを設置できるのは、フライトデッキ(操縦室)がメインデッキと同レベルではなく、さらに一層上にある747ならではだ。ノーズカーゴから出し入れする貨物は、フライトデッキの下を通って行き来している。
側面にだけカーゴドアを設けた他の貨物機では、そのカーゴドアのサイズを超える大荷物は搭載できない。ところが、ノーズカーゴドアがあれば、ことに長尺モノの搭載が可能になる利点がある。また、ノーズカーゴドアからの搭載・卸下作業は、前後方向の移動だけで済む。
747-8Fのメインデッキ
ただし、747-8Fのメインデッキは地上高が高いので、昇降機能付きのカーゴローダーが必要になる。そこは、床面高が低い軍用貨物輸送機と違うところだ。
747-8Fのメインデッキでは、後部胴体の左舷側にサイドカーゴドアも備えており、こちらのサイズは314.96cm×341.38cm(124in×134.4in)。サイドカーゴドアからの搭載・卸下では、横移動と前後移動が必要になる。
この2カ所のカーゴドアを持つメインデッキ内部は、最大で34ユニットの貨物を搭載できる。
747-8Fのロワーデッキ
ロワーデッキはというと、主翼を挟んで前後2ヶ所に貨物室があり、それぞれにカーゴドアがある(フォワードカーゴドアとアフターカーゴドア)。開口のサイズはどちらも同じで、167.64cm×279.4cm(66in×110in)。前後の貨物室を合わせると、ロワーデッキ用のLD-3コンテナを最大40個、搭載できる。
また、ロワーデッキ最後部にはバラ積み専用の貨物室がある。ここも専用のカーゴドア(バルクカーゴドア)があり、開口のサイズは119.38cm×111.76cm(47in×44in)。このドアだけ内側に向けて開くので、ドアの開閉に必要な空間は空けておかなければならない。
後部胴体の右舷側。塗装の関係で少し見づらいが、右側にある大きな扉がアフターカーゴドア、左側にある小さな扉がバルクカーゴドア 撮影:井上孝司|
アッパーデッキは何に使う?
前述のように、747-8Fではフライトデッキがメインデッキよりも1層上にある。これは747シリーズに共通する特徴だが、貨物型の747-8Fは旅客型と異なり、アッパーデッキが短い。
旅客型747は-300シリーズ以降、アッパーデッキを後方に延伸した、いわゆるSUD(Stretched Upper Deck)仕様になった。しかし、貨物型ではSUDにする必然性はない。もっとも実際には、旅客型を貨物型に転換改修した機体があり、その中には長いアッパーデッキを備えた機体がある。
その短いアッパーデッキには、最前部のフライトデッキに加えて、前回に紹介した777Fと同様に、同乗者用の座席などが設けられている。ただしこれらの区画は、取材の対象にならなかった。大勢がスムーズに出入りできる構造になっていないので、致し方なさそうだ。
外から見ると、フライトデッキの直後に側面ドアが設けられているほか、機内からでもラダーを使ってメインデッキとアッパーデッキの間を行き来できるようになっている。このラダー、使用しないときはメインデッキの天井(=アッパーデッキの床)に畳んでしまい込む構造になっている。
なお、メインデッキの最前部にはL1ドアがあり、ここからでも機内に出入りできる。ただし777Fと異なり、対応する位置のR1ドアはない。