パワークエリにより自動出力されたデータ表は「テーブル」として書式設定されている。よって、テーブルの上手な活用方法を研究しておく必要がある。ということで、今回はテーブルの使い方と構造化参照について説明していこう。まだテーブルを使った経験がない方は、この機会に“テーブルの基本”を学んでおくとよいだろう。

テーブルとして書式設定

パワークエリにより自動出力されたデータ表は、「通常の表」ではなく、「テーブル」として書式設定されている。このため、テーブルの扱い方を学んでおく必要がある。あわせて、数式や関数で「構造化参照」を使用する方法も覚えておこう。

  • テーブルの使い方と構造化参照

テーブルはExcelに用意されている機能の一つで、データを効率よく分析・管理するための表形式となる。これは「パワークエリを使用したとき」に限った話ではなく、「普通に作成した表」にも関連する話だ。

簡単な例を紹介しておこう。以下の図は、普通にデータを手入力して作成した表だ。このデータ表を「テーブル」に変換してみよう。表内にあるセルを1つだけ選択する。

  • 普通に作成したデータ表

続いて、「ホーム」タブにある「テーブルとして書式設定」をクリックし、好きなデザインを選択する。

  • 「テーブルとして書式設定」コマンド

テーブルに変換する範囲を指定する画面が表示されるので、必要に応じてセル範囲を修正してから「OK」ボタンをクリックする。

  • テーブルに変換するデータ範囲の指定

指定したセル範囲が「テーブル」に変換され、先ほど選択したデザインが適用される。また、各列の先頭行には「フィルター」ボタンが配置される。

  • テーブルに変換された表

テーブルは“表の見た目”を変更するだけの機能ではなく、データの扱い方にも影響を与える書式となる。表をテーブルに変換すると、各列の先頭行は「見出し」(ヘッダー)、以降に続く行は「各列のデータ」として扱われるようになる。

テーブルのデザインを変更するには?

話をパワークエリに戻して解説を続けていこう。パワークエリにより自動出力されたデータ表は、はじめから「テーブル」として書式設定されている。このため、以下の図に示したようなデザインでデータ表が表示される。もちろん、表内にあるセルを選択して、「テーブル デザイン」タブを使用することも可能だ。

  • パワークエリで出力されたデータ表(テーブル)

テーブルのデザインを「別のデザイン」に変更したいときは、「ホーム」タブにある「テーブルとして書式設定」を操作するか、もしくは「テーブル デザイン」タブにある「テーブル スタイル」でデザインを指定しなおせばよい。これで、テーブルの見た目を自由に変更できる。

  • テーブル スタイルの変更

  • デザインを変更したテーブル

そのほか、「テーブル スタイルのオプション」を使って、テーブルをカスタマイズすることも可能となっている。「最初の列」や「最後の列」を強調する、「縞模様(行)」や「フィルターボタン」の有無を変更する、といった書式は各チェックボックスのON/OFFで指定する。

  • テーブル スタイルのオプション

テーブルの集計機能

「テーブル スタイルのオプション」で「集計行」のチェックボックスをONにすると、テーブルの一番下に「合計」などを自動算出してくれる行を追加できる。たとえば、先ほど示したテーブルに「集計行」を追加すると、テーブルの表示が以下の図のようになり、「売上」の合計が自動算出されるようになる。

  • 「集計行」を追加したテーブル

他の列にも集計結果を表示したり、集計方法を「平均」などに変更したりすることも可能だ。この場合は、集計行にある各セルを選択し、「▼」ボタンから集計方法を選択すればよい。

  • 集計方法の選択

  • 「数量」と「売上」の合計を表示したテーブル

テーブルならではの便利な機能といえるので、まだ使ったことがない方は、この機会にいちど試してみるとよいだろう。

フィルターを使ったデータの絞り込み

各列のヘッダーには「フィルター」ボタンが配置されている。このボタンを使って、表示するデータを絞り込むことも可能だ。たとえば、「提供方法」の列にある「▼」ボタンをクリックして「店内飲食」だけをONにすると……、

  • フィルターを使ったデータの絞り込み

「提供方法」が「店内飲食」のデータだけに絞り込んでテーブルを表示できるようになる。なお、「集計行」の数値は関数SUBTOTALにより算出されるため、テーブルに表示するデータを変更すると、それに合わせて計算結果も自動更新される。

  • 「店内飲食」のデータだけを表示した場合

このため、分類別の「合計」や「平均」などを手軽に確認することが可能となる。上図の場合、「店内飲食に限定した売上の合計は約38.9万円である」ということを即座に把握できるようになる。

この状態のまま、さらに別の「絞り込み条件」を追加することも可能だ。たとえば、「分類」の列で「バーガー類」だけにデータを絞り込むと、「店内飲食」かつ「バーガー類」のデータだけを表示できる。もちろん、それに合わせて「数量」や「売上」の集計行も再計算される。

  • さらに「バーガー類」のデータだけを表示した場合

念のため、各列に指定した「絞り込み条件」を解除する方法も紹介しておこう。条件を解除するときは、「▼」ボタンをクリックして(すべて選択)をONにすればよい。この操作を各列で行うと、「すべてのデータを表示した状態」に戻すことができる。

  • フィルターの解除

フィルターの使い方を知っている方にとっては当たり前の話となるが、念のため、動作を確認しておくとよいだろう。特に「集計行」の計算結果は、「現在、表示されているデータに応じて変化する」ということを覚えておくとよい。この仕組みを理解していれば、分類別のデータ分析を手軽に進められるようになるだろう。

構造化参照を使った数式・関数の入力

「集計行」を利用するのではなく、自分で数式や関数を入力して、さまざまな指標を算出することも可能だ。このとき、セル範囲などを「構造化参照」で指定しておくと、テーブルの利点をフル活用できるようになる。

構造化参照を使って「列」のセル範囲を指定するときは、「E2:E22」のようにセル番号を記述するのではなく、「テーブル名」と「列名」で範囲を指定する。

◆構造化参照を使った「列」の指定
テーブル名[列名]

具体的な例で紹介していこう。以下の図は、「売上」の合計を関数SUMで算出しようとした例だ。「=SUM(」の部分まで関数を入力し、売上のデータ範囲(E2→E22)をマウスでドラッグすると、「テーブル名[列名]」という形の引数が自動入力される。

  • 造化参照を使ったセル範囲の入力(1)

上図の場合、「_4月の売上」がテーブル名、大カッコ内の「売上」が列名に相当する。

データ数が多くてドラッグ操作が難しいときは、以下の図に示した位置にマウスを移動し、ポインタが「↓」の形状になったときにマウスをクリックしてもよい。この操作方法でも同様の引数を自動入力できる。

  • 造化参照を使ったセル範囲の入力(2)

あとは「カッコ閉じる」を入力して「Enter」キーを押すだけ、これで「売上」の合計を算出できる。

  • 算出された「売上」の合計

引数に「列」を指定する利点は、クエリの更新によりデータ数が増減しても、引数を修正する手間が発生しないこと。上図のように引数を指定しておくと、テーブルの行数に関係なく、「売上」のデータをすべて合計した値が算出されるようになる。

ちなみに、今回の例にある「4月の売上」というテーブル名は、パワークエリにより自動命名されたものとなる。データの取得方法に「フォルダーから」を指定した場合、「フォルダー名」という形でテーブル名が自動命名される。

テーブル名を確認したいときは、テーブル内にあるセルを選択して「テーブル デザイン」タブのリボンを参照すればよい。ここでテーブル名を「好きな名前」に変更することも可能だ。

  • テーブル名の確認、修正

SUM以外の関数を使用するときも同様だ。テーブル内の列全体(ヘッダーを除く)を指定するときは、「テーブル名」と「列名」を使って引数を指定するのが基本となる。以下の図は、関数SUMIFを使って「提供方法」が「店内飲食」のデータについてのみ「売上」の合計を求めるときの記述例となる。

  • 「店内飲食」についてのみ合計を算出する関数SUMIF

数式を自分で入力するときも「構造化参照」が活用できる。ここでは、各データの「売上÷数量」を計算して「平均単価」を求める場合を例に操作手順を紹介していこう。

最初に「=」の記号を入力する。続いて、「売上」のデータ(E2セル)をマウスでクリックすると、[@売上]という文字が自動入力される。この記述は「売上の列にある各データ」を意味している。

続いて、割り算の演算子「/」を入力し、「数量」のデータ(D2セル)をマウスでクリックすると、[@数量]という文字が自動入力される。こちらは「数量の列にある各データ」を意味している。

  • 平均単価の計算

「Enter」キーを押して数式を実行すると、テーブルの範囲が拡張され、数式を入力したセルだけでなく、その下にあるセルにも同じ数式が自動入力される。このため、数式をひとつ入力するだけで、全データについて「売上÷数量」を計算できるようになる。

  • 平均単価の計算結果

なお、この列のヘッダーには「列1」などの列名が自動命名されるので、必要に応じて「列の名前」を変更しておくとよい。

このように「テーブル」として書式設定されているデータ表では、「テーブルならではの機能」を利用することが可能となる。「構造化参照」もテーブルのときのみ使用できる参照方法だ。

上手に活用するとデータ分析を効率よく進められるようになるので、パワークエリとあわせて使い方を覚えておく必要があるだろう。