これまでの連載で「マップ」や「3Dマップ」といったグラフの作成方法を紹介したが、いずれも特徴(癖)のあるグラフになるため、『ビジネスの現場では使いづらい・・・』と感じた方もいるだろう。そこで今回は少し趣向を変えて、オリジナルの「地図グラフ」を作成する方法を紹介してみよう。
オリジナルの「地図グラフ」とは?
今回は「地図の画像」の上に「Excelで作成したグラフ」を配置して、イメージ図のような「地図グラフ」を作成する方法を紹介していこう。少し手間はかかるが、Excelで図版を作成するためのノウハウが散りばめられているので、興味がある方は一読しておくとよい。
まずは、完成した「地図グラフ」を紹介する。ここでは、以下に示した「地図グラフ」を作成する場合を例に、その詳しい操作手順を紹介していこう。
上図は、G7各国の「1人当たりの名目GDP」を2000年/2010年/2020年について比較したものだ。詳細な数値データを読み取るためのグラフではなく、G7各国の経済成長を大雑把に把握するための「イメージ図」と考えて頂ければ幸いだ。
「地図グラフ」のベースとなるグラフの作成
それでは、具体的な操作手順を紹介していこう。まず最初に、グラフの基となるデータ表を用意する。今回は下図のようなデータ表を用意した。
資料: GLOBAL NOTE
出典: IMF(国際通貨基金:International Monetary Fund)
続いて、このデータ表を基にグラフを作成する。この操作手順は「一般的なグラフ」を作成する場合と同じ。「挿入」タブにあるコマンドを使って、普通にグラフを作成していけばよい。今回は「3-D 集合縦棒」のグラフを作成した。
このグラフをベースにして「地図上に配置するグラフ」を切り出していくが、そのためには「縦軸の範囲」を固定しておく必要がある。「縦軸」を右クリックし、「軸の書式設定」を呼び出す。
今回の例では、縦軸の範囲が0~70,000に自動設定されていた。これと同じ値を「最小値」と「最大値」に指定して軸の範囲を固定する。各項目の右側に「自動」ではなく、「リセット」のボタンが表示されるのを確認しておこう。
上記の設定変更を行ってもグラフの見た目は何も変化しない。しかし、この設定変更には大きな意味がある。
というのも、各国のデータを切り出したときに、設定が「自動」のままだと「縦軸の範囲」がグラフ毎に変化してしまう可能性があるからだ。それぞれのグラフを比較できるようにするには、「最小値」と「最大値」を自分で指定して固定しておく必要がある。
続いては、不要な要素をグラフから削除する。「グラフ要素」をクリックし、「グラフ タイトル」、「目盛線」、「凡例」の表示をOFFにする。
さらに、先ほど設定を変更した「縦軸」も非表示にしておこう。この操作は「軸」のサブメニューを開いて「第1縦軸」をOFFにすると実行できる。
最後に、グラフの背景が透けて見えるように「グラフ エリア」の書式を変更する。グラフ内の余白(グラフ エリア)を右クリックし、「塗りつぶし」コマンドで「塗りつぶしなし」を指定する。
続いて、「枠線」コマンドをクリックして「枠線なし」を指定する。
以上でグラフの前準備は完了。続いては「地図」の画像をExcelに挿入する作業を進めていこう。
「地図」の画像を配置する
今回、紹介する手法で「地図グラフ」を作成するときは、あらかじめ「地図の画像」を用意しておく必要がある。この画像は、フリー素材を配布しているWebサイト、もしくは有料の素材サイトなどから入手すればよい。
今回は、「イラストAC」というサイトで配布されている「世界地図」のフリー素材を利用させて頂いた。
画像ファイルを準備できたら「挿入」タブを選択し、「画像」→「このデバイス」を選択して画像をワークシートに挿入する。そのほか、「オンライン画像」を選択して、適当な画像を検索してみる方法もある。
画像を挿入できたら、右下のハンドルをドラッグして「地図」の画像を適当なサイズに調整する。
続いて、グラフの背面に画像が配置されるように設定を変更する。「地図」の画像を選択し、「図の形式」タブで「背面へ移動」→「最背面へ移動」を選択する。
地図上にグラフを複製して配置する
次は、「地図」の画像の上に「各国のグラフ」を配置していく作業に移る。先ほど作成したグラフを「Ctrl」キーを押しながらドラッグして複製する。
「グラフ エリア」を「塗りつぶしなし」に設定していれば、下図のように背景が透けた形で画像(地図)の上にグラフが複製されるはずだ。
続いて、このグラフに表示するデータを限定する。「グラフ フィルター」をクリックし、「アメリカ」のデータだけをグラフ化するように指定してから「適用」ボタンをクリックする。
すると、「複製したグラフ」に「アメリカ」のデータだけが表示されるようになる。
このままでは、あまりに不格好なので、「地図」の画像にあわせてグラフのサイズを調整しておこう。このとき、四隅のハンドルをドラッグするのではなく、数値でサイズを指定しておくと、後でサイズを調整しなおすときの作業が楽になる。
サイズを調整できたら、グラフを適切な位置へ移動する。ただし、「グラフ エリア」が透明に設定されていることに注意しておく必要がある。
というのも、「グラフ エリア」が透明になっている場合は、グラフの余白をクリックすると、その背景にある「地図の画像」が選択されてしまうからだ。グラフを移動するときは、いちど「棒グラフ」の部分をクリックし、続いて「グラフの枠線」をドラッグするように操作しなければならない。
これで「アメリカ」のグラフを配置できた。勘のよい方なら以降の操作手順も想像できるだろう。ただし、効率よく作業を進めていくには、それぞれの操作を行う順番にも配慮しておく必要がある。
これについては、図版全体の見た目を改善する方法も含めて、次回の連載で詳しく紹介していこう。