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今回解明された人工衛星の表面帯電メカニズム。高エネルギーのオーロラ降下電子は衛星の負の帯電を促進し、電離圏プラズマ中の正イオンの流入は帯電を緩和する。衛星の電位は、これらのバランスによって決定されることが明らかにされた。(このイラストは生成AIを用いて作成されたもの) (出所:共同ニュースリリースPDF)
人工衛星は地上の機器のように大地に接地(アース)させて電流を逃がせないため、宇宙空間を飛び交う電子が衛星表面に蓄積して帯電することがある。この表面帯電は、衛星を故障させるリスクを引き起こす。
衛星全体が一様に帯電するとは限らないため、場所によって電位差が生じ、その結果として火花のような放電により太陽電池パネルや表面材料などが損傷する恐れがある。しかも、こうした衛星の帯電に関する膨大な観測データは存在するものの、その中から帯電現象を目視で確認することは困難であり、長期間の統計解析には多大な作業負荷がかかっていた。
九州工業大学(九工大)、新潟大学(新大)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の3者は、AIを用いて約19年間にわたる人工衛星の帯電データを解析し、衛星表面の帯電現象を自動検出する手法を開発。これを用いて約3,000件の帯電イベントを抽出することで、衛星が帯電しやすい宇宙環境の特徴を解明したと、10月28日に共同発表した。
同成果は、九工大大学院 工学研究院 宇宙システム工学研究系の升野颯人大学院生(研究当時)、同・寺本万里子准教授、同・荒木大地大学院生(研究当時)、新大大学院 自然科学研究科 電気情報工学専攻/工学部 知能情報システムプログラムの飯田佑輔准教授、九工大 工学研究院 基礎科学研究系の花沢明俊准教授、JAXA 研究開発部門 第一研究ユニットの奥村哲平主任研究開発員らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国地球物理学連合が刊行する、太陽活動や宇宙環境の変動(宇宙天気)を扱う専門論文誌「Space Weather」に掲載されている。
今回の研究成果
今回の研究では、人工衛星の表面帯電を長期間にわたり調査するため、AIの一種である「畳み込みニューラルネットワーク」を用いた自動検出手法が開発された。同手法により、多数の帯電イベントを効率的に抽出し、その発生条件を精査することが可能となった。
解析の結果、オーロラを発生させる「オーロラ降下電子」が人工衛星の帯電を増幅させる一方で、低軌道衛星が周回する領域である電離圏のプラズマが帯電を抑制する働きを担っていることが突き止められた。
オーロラは、地球から遠く離れた宇宙空間から、高エネルギー電子が両極の上空へ降り込み、高度100〜300kmの大気中にある窒素や酸素の原子・分子と衝突して発光する現象だ。このオーロラ降下電子は、電離圏に存在するプラズマよりも高いエネルギーを有しており、衛星に衝突して表面に蓄積することで、衛星を大きく負に帯電させる原因となる。
一方、電離圏とは、地球上空約60〜1,000kmに広がる領域を指す。太陽紫外線などにより大気の一部が電離し、電子とイオンからなるプラズマ状態となっており、電波伝搬に影響を与える。電離圏には比較的エネルギーの低い電子やイオンが多く存在し、また同領域は多くの低軌道人工衛星の軌道領域でもある。
今回の研究成果により、人工衛星の帯電は、オーロラを引き起こす電子だけでなく、周囲の電離圏プラズマとのバランスによって決まることが定量的に示された。
今後は、過去のオーロラ活動が活発だった期間へ解析対象を拡大し、オーロラ活動と電離圏の状態を総合的に分析することで、衛星が帯電しやすい時期や場所の高精度な予測につなげ、将来的な衛星の帯電・放電リスクの予測や、宇宙環境による衛星故障の回避に寄与することが期待されるとしている。