このものづくり関連ニュースのまとめ

・京セラが超硬工具から置き換え可能なサーメットを提案し、タングステン使用量の削減を支援
・センシングソリューション「VIMOA」で加工状態をリアルタイムに可視化・監視・分析
・ツールマネジメントシステムで工具の在庫、発注、使用状況を一元管理

京セラは、10月26日から31日まで東京ビッグサイトで開催されている「JIMTOF 2026」に出展し、切削工具や加工支援ソリューションを展示している。

「Creating Sustainable Value in Machining」をコンセプトに、製品の安定供給、長寿命化、加工コストの低減、リサイクルを通じて、持続可能なものづくりと生産性向上を支援する取り組みを紹介しており、タングステン使用量の削減につながるサーメット製品の提案のほか、切削工具や消耗品を一元管理するツールマネジメントシステムの紹介などを行っている。また、持続可能なものづくりの観点から、加工状態を可視化するセンシングソリューション「VIMOA」では導入事例を交えた活用方法の紹介などを行っている。

  • JIMTOF 2026における京セラブースの様子

    JIMTOF 2026における京セラブースの様子

超硬工具からサーメットへの置き換えを提案

切削工具に広く用いられてきた超硬合金は、主原料の1つにタングステンを使用しているが、近年、タングステン価格は上昇傾向にあり、工具の性能を維持しながら使用量を抑えることが、工具メーカーと加工現場の双方にとって課題となっている。

そこで京セラは、すべての加工を超硬工具で行うのではなく、被削材や加工内容、切削条件に応じ、サーメットへ置き換えることを提案している。

サーメットは、チタン系の硬質化合物と金属を組み合わせた工具材料で、鋼の仕上げ加工などに用いられる。超硬合金と比べてタングステンの使用量を抑えられるほか、耐摩耗性や仕上げ面品位に強みを持つ。

一方、衝撃が加わる加工や断続加工などでは欠損への対応が課題となる場合もあるため、超硬工具とサーメットのどちらかへ一律に統一するのではなく、それぞれの特性に応じて使い分けることが重要となる。

京セラは1971年よりサーメットを提供してきた実績を数しており、超硬工具とサーメットを、材料や部品などの削るニーズに応じて、それにマッチした工具を提案することで、生産コストを抑えながら、高い加工精度に対する要求に応えることを目指しているとする。また、超硬工具についても、先端だけを超硬にすることで、その部分だけ交換できるようにすることや、工具を必要最小限なサイズにダウンサイジングすることで超硬の使用量を減らすといったことも提案しているという。

高品位な仕上げ面と高能率加工を両立

同社のブースではサーメット工具だけでなく、実際に加工したワークも展示。超硬工具から置き換えた場合の加工品質や仕上がりを確認できるようにしている。また、サーメットをどの工程へ適用できるかを解説する冊子「サーメット活用の実践ガイド」も配布しており、サーメットに対する理解促進を図っている。

  • ,サーメット工具のコーナー

    サーメット工具のコーナー。工具だけでなく、実際に加工したワークも展示されている

工具の在庫と使用状況を一元管理

「ツールマネジメントシステム(TMS)」は、そうした切削工具や資材、消耗品などの在庫、発注、使用状況を一元管理するためのシステム。工具管理を人手や表計算ソフトへ依存している現場では、必要な工具が見つからない、同じ工具を重複して発注する、在庫切れによって加工を始められないといった問題が発生する可能性がある。

また、工具がいつ、誰に、どの程度使用されたかを把握できなければ、加工コストの正確な分析や、適正在庫の設定も難しくなる。同システムは、専用キャビネットと管理ソフトウェアを組み合わせ、工具の入出庫や在庫、発注などを管理するソリューションであったが、今回の展示では、今、作業場などにある工具棚を活用しながらデジタル管理を導入できる「スタンドタイプ」、在庫・発注管理、通知機能などをその場でできる「キャビネットタイプ」が紹介されている。

  • ツールマネジメントシステム

    ツールマネジメントシステム。左がスタンドタイプで、この場合、どこに在庫があるかを記した紙が発券され、それで在庫の管理などを行う形となる。右がキャビネットタイプ。タッチパネルを操作すると、それに応じたキャビネットが開き、そこから工具などを取り出して利用することができるほか、超硬工具のリサイクル管理などにも利用することができるという

既存の工具棚を生かしてデジタル管理

スタンドタイプは、既存の工具棚をそのまま利用しつつ、工具管理に必要な機能を追加する仕組みのTMS。専用キャビネットへ工具をすべて移し替える必要がなく、現在の保管方法や作業動線を大きく変えずにデジタル管理を始めることができ、導入しやすいという特徴がある。

一方のキャビネットタイプは工具をタッチパネルと一体化した専用の収納部へ保管し、入出庫と在庫を管理する仕組み。工具の使用状況を把握できれば、使用頻度に応じた在庫量の見直しや、発注タイミングの適正化につなげることができ、過剰在庫や工具の探索時間を減らすとともに、必要な工具を必要な時に使用できる環境を構築することができるようになる。

加工時の振動を可視化して、若手に技術を継承

「VIMOA」は、加工中に発生する振動を計測することで、切削状態をリアルタイムに可視化・監視・分析するセンシングソリューション。端末は磁石で工作機械に貼り付けることが可能で、バッテリ駆動のため、電源を別に用意する必要もなく、測定したい部分に貼り付けるだけで済むことが特徴となる。

  • VIMOA

    「VIMOA」。処理基板や通信基板が入っている本体部分と、そこから出ているセンサ部分で構成。センサも本体も強力磁石で工作機械に付けることができる。また、無線LANの通信機能も備えているため、産業用PCへデータ送信することも可能となっている

切削加工では、工具の摩耗や欠損、びびり振動、被削材や加工条件の変化などによって、加工品質や工具寿命が変化するが、そうした加工機の内部で起きている細かい状態変化は、外部から直接確認することは難しく、作業者が加工音、加工面、切りくずなどを確認し、経験に基づいて異常の有無を判断する職人の世界と言える。

しかし、少子高齢化が進む現在、機械加工の現場に進もうとする若者も必然的に減少することとなるが、そうした若手に熟練者の技術継承を行っていくことが求められる。昔であれば、職人の動きを目で盗めと言われたものだが、職人側の定年退職が目前に迫る昨今では、技術を継承するのに、そうした悠長なことを言っているわけにもいかない。VIMOAは、そうした職人の加工時の振動をデータとして取得・可視化し、正常な加工と異常が発生した加工の違いを把握できるようにすることができるため、経験の浅い若手であっても、加工時の波形を見ながら、熟練者の波形に近づけるといったことができ、技術継承の視点から活用するケースが出てきているという。

また、加工結果だけを確認するのではなく、加工中に得られた振動データと工具摩耗、加工面品質、生産条件などを関連付ければ、不具合が発生した原因の特定や、安定加工に向けた条件の最適化にもつなげられる。

さらに、通信端末や基地局も手掛けてきた同社ならではの機能として、無線LANを経由してデータを産業用PCに収集・分析する機能も搭載。加工状態のスコアリングやモニタリング、異常や摩耗の検出による予知保全などにも活用の幅を広げることができるようになっている。

最新の切削工具も初展示

ブースではこうした事業としての持続可能な提案に加え、より加工精度を高めたり、作業速度の向上に向けた新製品の切削工具などの展示も行われている。

多機能溝入れ・突切り工具「KGXシリーズ」は、外径、端面、内径の溝加工に対応。独自のクランプ機構によってインサートを固定し、加工時の振動やホルダの損傷を抑え、安定加工を支援するほか、参考出品となるQuickChange(QC)シリーズは、 通常のホルダーで時間のかかる機械への脱着や芯高調整の手間を軽減することを目的に、ベースとなるクランプ部を機械側に残したまま、工具刃先部分(ヘッド)をワンタッチ、または少ないネジ操作で素早く交換できる構造を採用したもので、ヘッドを脱着しても刃先の芯高や突き出し量といった位置精度が高精度に再現されるため、交換ごとの面倒な寸法調整などを削減することができるものとなっている。

  • 参考出品となるQCシリーズ

    参考出品となるQCシリーズ。製品化は2027年度を予定しているとのこと

なお、このほか、同社ブースではこうした各コーナーに設置されているスタンプを押すことで、ノベルティをもらえるスタンプラリーを実施中。スタンプラリーの台紙には、同社機械工具事業本部オリジナルキャラクター「切削探偵 ツルノミライ」が描かれており、スタンプの絵柄もツルノミライの顔が用いられている。

  • 「切削探偵 ツルノミライ」

    京セラ機械工具事業本部のオリジナルキャラクター「切削探偵 ツルノミライ」を活用したスタンプラリーも行われている