東京ビッグサイトで11月10日まで開催中の、ものづくり関連の最先端の技術・製品が一堂に会する「第32回 日本国際工作機械見本市」(JIMTOF2024)。ここでは、会場で見つけた目を惹く展示や注目のブースを4つ紹介する。
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JIMTOF2024で話題の展示4つを紹介。(左上から時計回りに)ファナックが展開する大型ロボットアーム、DMG森精機が取り組む「5軸加工研究会」による機械仕掛けのオルゴール、兼松と山形大学 多田隈研究室が共同研究を進めている球状歯車のデモ、ベルトコンベア型3Dプリンターを開発しているトコシエの展示ブース
天井に届きそうな高さまで動く大型ロボットアーム - ファナック
南2ホールのファナックブースで見かけたのは、まるで天井に届くほどの高さまで豪快に腕を振り上げたり、ブース壁面を撫でるように慎重に動いたりと、さまざまな動きを見せる大型ロボットアーム。手首部の可搬質量550kg、4.6mリーチというスペックの「M-1000/550F-46A」の動きに目を奪われ、立ち止まって見ている来場者も少なくなかった。
自動車業界では今、クルマの構造部品を大型のダイカストマシンで1工程で一括成形する「ギガキャスト」という技術が導入されてきている。今回展示しているロボットは、そういった製造現場への導入をイメージしたものだ。
ロボットアームの先には、1万トンクラスのギガキャストの金型に、成形したモノを型ばなれしやすくする離型剤を吹き付けるパーツを装備。アーム1本のシリアルリンク機構で、上方や後方まで動作範囲が広いのが特徴なのだという。
これだけでもじゅうぶんインパクトのある展示なのだが、ファナックのWebサイトでは同じM-1000シリーズでもさらに重い可搬1,000kg対応の製品や、より大きなM-2000シリーズという製品もラインナップしている。ロボットアームの世界、奥が深すぎる。
遊びゴコロあふれる大型オルゴール - 5軸加工研究会(DMG森精機)
東8ホールのDMG森精機ブースの奥で人々が足を止めていたのが、銀色に光る機械仕掛けのオルゴール。同社が全国の会員企業とともに取り組む、「5軸加工研究会」の会員企業が今回のために共同で作り上げたもので、全長・全高は約2.2m、全幅約1.6m、総重量680kgにもおよぶ重厚な展示物に仕上がっている。
構造としては内部にメインドラムがあって、右側のハンドルをロボットアームで回すことでドラムに取り付けられた小節盤がふりこを押し、てこの原理で小さい鉄球を本体上部から排出。決められたルートに流し込まれた鉄球が手前の鉄琴に次々と当たることで、30秒ほどの透きとおった音楽を奏でる仕掛けだ。
5軸加工研究会には、DMG森精機の5軸加工機や複合加工機を使う142団体が所属しており、会員同士で加工技術の向上や互いのビジネス拡大を目的としてさまざまな活動を展開しているという。
今回はJIMTOF2024開催に合わせて「融合」をテーマにした展示物をつくることになり、2023年から共同製作プロジェクトがスタート。プロジェクトメンバー13社が主体となってデザインや設計、データ作成などを担当し、会員70社が製造した約1,500点もの部品を使って組み立てた。素材はアルミやステンレス、鉄など。構想・製作には21カ月かかったそうだ。
ちなみに流れていたのはDMG森精機オリジナルの楽曲で、「遊び心」というタイトルがつけられているとのこと。同社Webサイトによると、ピアニスト・作曲家の稲本響氏が自律走行型ロボットの各種動作を知らせるメロディとして手がけた楽曲ということで、動作状態によってさまざまなバリエーションがあることが紹介されている。
JIMTOF2024会場でしか聴けないオルゴール版の澄んだ音色にもぜひ耳を傾けてみて欲しい。
ウニみたいな見た目の球状歯車に触れる - 兼松・山形大学 多田隈研究室
南2ホールの兼松KGKブースの奥でデモ出展されていたのが、無制限の可動域を特徴とする「球状歯車」。山形大学 多田隈研究室と同社が連携して取り組んでいるもので、宇宙空間での作業・月面探査等におけるロボットアーム機構や、球体への埋め込み式の監視カメラなどに活用することを提案している。
ウニのようにとげとげしい、ユニークな見た目がおもしろい歯車で、ふたつの鞍状歯車と噛み合わせることで、回転3自由度を実現しているのだという。ブースで説明員のガイドのもと、樹脂製のギアに触らせてもらうと、イメージ通りの感触が手のひらに伝わってきた。触れることはできないが、兼松が培ってきた歯車の量産化技術を応用して製造に成功したという、金属製の球状歯車の展示も見られた。
従来の歯車を使った産業用ロボットアームでは、各関節が1対の歯車で回転方向に制限があったが、球状歯車を使うことで複雑な動きや広い稼働範囲が実現可能になるとアピール。耐性の高い球体構造なので部品点数を削減でき、軽量でコンパクトなパッケージにできるメリットもあるという。兼松は同研究室と連携し、球状歯車の社会実装をめざして引き続き産学連携の共同研究を推進するとしている。
X(Twitter)で話題の“更地ブース”で、ベルトコンベア型3Dプリンタを発見 - トコシエ
JIMTOF2024の開幕前後、X(旧Twitter)の一部で話題になっていた、ビッグサイト南1ホールの“更地ブース”。「日本で唯一のベルトコンベア型3Dプリンター開発者」だというアカウントによるXへの投稿内容をみると、「展示会初心者なので頼まないと壁すら付いてこない。更地をプレゼントされた」と途方にくれていた模様だ(この投稿に続くスレッドで、いきさつにも言及している)。その後が気になり、筆者も現地を訪れてみた。
展示会初心者の弊社、頼まないと壁すら付いてこないことを知らずに更地をプレゼントされる(見えてるのは隣のブース用 pic.twitter.com/pj498xEX5P
— 見通し甘太郎@JIMTOF_南1AM125 (@AkibaSanngy) November 2, 2024
同ブースに出展していたのは、トコシエ(旧BirthT)という3Dプリンターのメーカーで、「LeeePRO Mk-I」という製品の実機を紹介パネルとともに出展。さらに法人向けに、3Dプリンターの新しい発注システム「コンビニエンスファクトリー」を2025年度にサービス開始予定であることも告知していた。
LeeePRO Mk-Iは、造形プラットフォーム(ステージ)にベルトコンベアを採用して、長送り方向に“無限の長尺造形”を可能にしたのが大きな特徴で、「『機体より小さいものしか作れない』という3Dプリンターの制約を打ち破り、モノづくりの可能性を広げる」とアピールしている。
また、デュアルノズルで異素材を同時に使ったり、同じ形状のものを同時にふたつ造形したりすることも可能とし、製造時のタイムロスなく稼働して生産効率を上げられるのもメリットだという。
少人数運営のブースということもあって担当者に直接話を聞くことはできなかったが、長尺造形対応の3Dプリンターという珍しい製品を、今後どういった企業や業界に売り込んでいくのか気になるところだ。