富士通は10月22日、パートナー向けイベント「GLOVIA One Composable Partner Meetup #1」をFujitsu Uvance Kawasaki Tower(川崎市幸区)で開催した。イベントでは、同社が展開するERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)「GLOVIA One」を中心に、パートナー企業と共創・共販を推進するコミュニティ構想が紹介され、サイボウズ、ドキュサイン・ジャパン、Kikuvi、SmartHRなどから約50人が参加した。
「共進化」を掲げ、パートナーとの新たな関係を構築
GLOVIA Oneは2026年4月に全面刷新され、AIや外部サービスとの連携を前提としたコンポーザブルERPとして展開している。富士通は単独ですべての機能を提供するのではなく、各社が持つ業務ノウハウやソリューション、AI技術を組み合わせることで、顧客企業が抱える複雑な経営課題や業務課題の解決を目指している。
イベント冒頭では、富士通 エンタープライズ事業 ソリューションアーキテクト事業本部 本部長の中川昌彦氏が登壇した。
中川氏は、GLOVIA Oneが掲げるビジョンとして「共進化」を紹介。同氏は「日本の地域や社会で生まれた事業に寄り添いながら、顧客やパートナー企業とともに進化し続けることを目指している。担い手不足やデジタル格差、人材不足など企業を取り巻く環境が大きく変化する中、1社だけで課題を解決することは難しくなっている」と話す。
同氏は、自身が長年携わってきたヘルスケアや自治体分野のシステム導入経験に触れつつも「多様なシステムを組み合わせることで共通パターンや共通モデルが生まれる。GLOVIA Oneも、そうした共通化や標準化を進めながら発展させていきたい」との見解だ。
また、これまでのような製品を作る、販売するといった関係ではなく、同じ目標を持つ仲間としてフラットな関係の構築を目指しており、リアルなコミュニティの場を通じて、新たな協業や価値創出につなげていく方針だ。
パートナーシップでERPの限界を超える
続いて、登壇した富士通 Cross-Industry事業部 GLOVIA Solution Group長の大金拓郎氏は、企業を取り巻く課題が複雑化する中で「ERPだけでは顧客課題を解決できなくなっている」と指摘した。
同氏は、GLOVIA Oneの方向性を示す考え方として「INSIGHT」「FIT TO JAPAN」「PARTNERSHIP」の3つを紹介した。INSIGHTでは、ERPや業務システム、外部サービスのデータを組み合わせ、AIが必要な情報や示唆を提示する世界を目指す。また、FIT TO JAPANでは、日本企業特有の商習慣や制度に対応しながら進化し続けるERPに取り組む。
一方で、同氏がイベントの中心テーマとして挙げたPARTNERSHIPに関しては「われわれはすべての機能を自前で作ることを目指していない。これまでのERPは個別要件への対応を中心に発展してきた。しかし、今後はパートナーが持つサービスや専門知識を組み合わせながら、お客様の変化に合わせて進化し続けるERPを実現したい」と強調した。
「Core×Composable×AI」で進化するERP
富士通はGLOVIA Oneを「Core(基幹)×Composable(エコシステム)×AI」によって構成されるプラットフォームとして位置づけている。ERPが基幹業務を支えるコアを担い、その周囲にパートナー企業のソリューションがComposableな形で接続される。そして、AIが全体を横断的に理解しながら判断や実行を支援するというものだ。
大金氏は「業務サービス単体、AI単体、プラットフォーム単体では顧客価値の創出に限界がある。プラットフォームは可能性を提供し、業務サービスは専門性を提供する。それらをAIによって結び付けることで、初めて新しい価値が生まれる」と力を込める。
同社では、Composableを「つながる」「わかる」「動く」の3段階のフェーズで価値を創出していく。まず、つながるは単なるAPI連携ではなく、パートナー企業同士が互いのサービスや強み、解決できる課題、保有するデータなどを理解し合うことまで含めている。そのためにも、今回のイベントにおける“コミュニティの場”が重要になるとのことだ。
次のわかるでは、ERPデータに加え、パートナー各社が持つ業務データやAI技術を組み合わせることで、これまで見えなかった経営課題や業務課題を発見できるようになる。暗黙知を可視化し、価値ある情報へ転換することで、顧客企業に新たな示唆を提供できるとしている。
そして、動くでは理解した情報を実際の業務に反映する段階を指す。例えば受注から出荷、請求、入金までのプロセスは従来、人が個別システムを操作しながら業務を進めてきた。しかしAIとシステム連携によって、複数業務をエンドツーエンドで自律的に実行できる可能性があるという。
同氏は「Composable ERPを単なるシステム連携の仕組みではなく、“業務価値を拡張し続ける仕組み”」と位置づけている。
共創・クロスセルで新たなビジネス機会創出へ
コミュニティに参加するメリットとして、大金氏は富士通が持つ顧客基盤や販売チャネルの活用を挙げた。GLOVIAの顧客基盤をパートナーが活用できるだけでなく、パートナー企業が持つ顧客基盤にもアクセスできるようになれば、単独では出会えなかった顧客との接点創出につながる。
さらに、業務領域同士を組み合わせるクロスセルによって提案範囲を広げられ、単一のソリューション提案からスタートしたとしても、将来的な構想や業務全体の最適化まで含めて提案できるようになる可能性があるという。また、業務ユースケースやシステム連携を共通化し、再利用可能な資産として蓄積していく。
同氏は「お客さまごとにゼロから構築するのではなく、共通プラットフォーム上で共通のルールや作法を整備しながら、みんなで作り、みんなで使える資産へ育てていきたい」と意気込みを示した。これは、同社が単独で再販するためのものではなく、パートナー企業とともに市場へ届けることを前提にしている。
共創・共通化・共販によるエコシステム形成を目指す
今後、富士通は共創、共通化、共販を並行して推進しながら、パートナーエコシステムの拡大を進める。
ロードマップでは、共創によるユースケース創出、共通化による再利用可能な資産形成、そして共販による市場拡大を段階的に進めていく構想を示した。2028年度以降は特定企業への依存ではなく、コミュニティ自体が成長し続ける自律型エコシステムの構築を見据えている。
今回のイベントは、ERP製品の機能を紹介する場というよりも、GLOVIA Oneを核としたパートナーコミュニティの出発点という位置づけが色濃かった。
富士通はERP、AI、そしてパートナー企業が持つ専門性を組み合わせることで、新たな価値創出の仕組みづくりを本格化させようとしている。顧客企業の課題解決だけでなく、パートナー企業同士の新たなビジネス機会創出につながるかどうか、今後の取り組みが注目されそうだ。








