NECは、10月13~16日に幕張メッセで開催された「CEATEC 2026」で、ランサムウェア感染時の対応を疑似体験できるアプリを展示した。来場者は限られた情報と時間の中で判断を求められ、インシデント対応の難しさを学べる仕組みとなっている。

NECのブースではこのほか、AIが自律的に業務を遂行する「AI自律型組織」や、VRとAIを組み合わせた訓練システム、準天頂衛星システム「みちびき」に関連する技術なども紹介されていた。本稿では、これら4つの展示をレポートする。

  • NECのブース

    NECのブース

ランサムウェアに感染したらどうする? 4つの質問で対応を疑似体験

NECのブースでは、ランサムウェア感染時の対応を疑似体験できる「ランサムウェア体験アプリ」が紹介されていた。

このアプリは、企業がランサムウェアに感染したという設定で、来場者が対応担当者となり、4つの質問に答えながらインシデント対応を学ぶものだ。

最初に企業の規模などを設定すると、対応方針に関する質問が表示される。例えば、感染が確認された際にどのような対策本部を設置するのか、ネットワークをどこまで停止するのか、感染端末をどう扱うのか、被害についていつ公表するのかといった判断が求められる。

  • ランサムウェア体験アプリ

    ランサムウェア体験アプリ

特徴的なのは、感染状況がすべて明らかになっているわけではない点だ。ある端末の感染は確認されていても、ほかの端末への感染状況は不明といった設定があり、限られた情報の中で判断しなければならない。さらに、回答には制限時間が設けられている。

4つの質問への回答を終えると、結果が金・銀・銅の3段階で評価され、対応を振り返ることができる。

  • 4つの質問で対応を考える

    4つの質問で対応を考える

担当者によると、重要なのは高い評価を得ることではなく、情報が不足した状況で意思決定する難しさを体験することだという。事前の対応体制の整備や感染状況の把握、必要に応じた早期の外部相談などの重要性を伝える狙いがある。

このほか、NECのブースでは、AIを活用した脆弱性管理技術や、24時間365日の監視を行うマネージドセキュリティサービスも紹介された。脆弱性管理では、IT資産と脆弱性の情報を照合して対応の優先順位や対策案を提示。マネージドセキュリティサービスでは、独自の脅威インテリジェンスを活用し、攻撃の予兆を捉えて事前に防御策を講じる「プロアクティブ防御」に取り組んでいるという。

AI社員は43人に増員、必要な人材を自ら生み出す「AI自律型組織」

NECは2026年8月1日、AIが組織を構成し、役割を分担しながら業務を遂行する「AI自律型組織」](https://news.mynavi.jp/techplus/article/20261002-5052121/)を発表した。

担当者によると、設立当初は17人程度だった構成員が、10月15日の取材時点では43人まで増加したという。

ブースでは、AI自律型組織の運営状況を可視化する「デジタルツイン」のダッシュボードが紹介されていた。組織図や各AI社員の稼働状況、運営コストに加え、AI同士の指示やレビューのやり取りも確認できる。

  • AI自律型組織の運営状況を可視化するダッシュボード

    AI自律型組織の運営状況を可視化するダッシュボード

AI社員にはそれぞれ名前と役割が与えられている。例えば、経営会議で使用する予算執行の分析資料を毎月作成するAI社員や、営業担当者と顧客の商談内容を分析するAI社員などが存在するという。

興味深いのは、必要に応じてAI社員が自動的に増える点だ。

人間が「この業務を担当してほしい」と依頼すると、AIが必要な役割を判断し、新たなAI社員を生成する。必要であればマネージャーも追加され、名前の設定や組織図の更新まで自動で行われるという。一方、担当業務が不要になれば、AI社員を組織から外すこともできるという。

実機がなくても操作訓練が可能、AIが指導する「バーチャルトレーニングセンター」

続いて紹介するのは、VRとAIを組み合わせた「バーチャルトレーニングセンター」だ。

同システムは、訓練対象となる装置を3DモデルとしてVR空間に再現するもの。利用者は実機がなくても、ボタンやスイッチの操作、ドライバーを使った部品の取り外しなどを訓練できる。特殊な装置が設置された現場まで移動する必要がなく、実機を訓練用に確保することが難しい場合にも活用できる。

  • 実際にバーチャル内でトレーニングを行っている様子

    実際にバーチャル内でトレーニングを行っている様子

同システムの特徴として紹介されていたのが「AIによる訓練支援機能」だ。

訓練中に操作方法が分からなくなった場合、利用者がAIに質問すると、AIが回答を提示する。基本的な操作に関する質問にAIが対応することで、指導者が常に付き添わなくても訓練を進められる仕組みとなっている。

また、利用者がVR空間内で行った操作はログとして蓄積される。これらのデータを分析することで、利用者が得意とする作業や、繰り返し間違えている操作などを把握できるという。

VRによる訓練だけでなく、AIによる質問対応や操作ログの分析を組み合わせることで、教育の改善につなげられるのも、このシステムの特徴だ。

同システムは、2027年度からの展開に向けて検討が進められている。

日本版GPS「みちびき」を支えるNEC、センチメートル級の測位も

最後に紹介するのは、準天頂衛星システム「みちびき」に関連する展示だ。

みちびきは、内閣府が整備を進める衛星測位システムで、日本版GPSとも呼ばれる。NECは、衛星に搭載する「測位ミッションペイロード」や地上局アンテナの開発、地上システムの開発・維持管理などを担当している。

  • 準天頂衛星システム「みちびき」ブース

    準天頂衛星システム「みちびき」ブース

みちびきの特徴の1つが、高精度な測位を実現するための補強サービスだ。

一般的な衛星測位では、数メートルから10メートル程度の誤差が生じる場合がある。一方のみちびきでは、メートル級やセンチメートル級の測位を支援するサービスも提供している。

担当者によると、対応する受信機を使用することで、誤差を1メートル程度、さらに高精度なサービスでは6センチメートル程度まで小さくできるという。

こうした高精度測位は、自動運転など、位置情報の精度が重要となる用途での活用が想定されている。

また、みちびきは位置情報の提供だけでなく、防災分野でも活用されている。災害時に避難所から情報を収集するサービスや、気象庁が発表する地震などの情報を配信するサービスも備えているという。

担当者は、NECの取り組みについて、普段は利用者から見えにくいものの、日常生活を支える「縁の下の力持ち」のような役割だと説明した。