準天頂衛星システム「みちびき5号機」を載せたH3ロケット8号機の打ち上げ失敗について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月13日、原因特定に至ったと発表。「衛星搭載部の部材剥離が、フェアリング分離時の衝撃によって進み、全体破壊につながった」ことを主要因と見て、今後対策を施したものをH3ロケット6号機(30形態試験機)に載せてフライトデータを取得、裏付けを進めていく。打ち上げ再開時期には言及していない。
同日開催された、文部科学省の宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第62回)のなかで報告されたもの。
これまでの調査の結果、PSS(衛星搭載部)の製造工程で生じたCFRPスキンとハニカムコア間の剥離がフェアリング分離時の衝撃で進展し、PSSの全体破壊に至ったことが、8号機打ち上げ失敗の主要因となった可能性がきわめて高いことが判明している。
JAXAは、PSSの実機パネルを用いた接着工程の再現試験を実施。その結果、同様の剥離が、同工程の前に行われる乾燥のための加温で発生することを確認した。また8号機特有の問題として、接着は9月に行われたが、その接着前のパネルが一時的に高温・多湿環境で保管されていたことが、製造・検査記録から判明。内部の接着剤が吸湿したことも、前出の剥離発生に影響した可能性があるが、剥離の進みやすさへの影響は小さい、と見ている。
JAXAは最優先でこの問題への対策を講じ、フライトに向けて十分に検証することにしている。初期剥離をなくすための具体的な是正対策として、「ファスナ結合方式」を採用することで、剥離のリスクを根本から排除。「当面の重要ミッションを確実に打ち上げるためには必要」と判断した。
PSSと同様の工程があるフェアリングについては、補修で対策できる見通しとしており、今後の点検内容を設定するなどして、H3ロケットの打ち上げ再開につなげたい考えだ。
なおJAXAでは、今回の原因特定の過程でさまざまな項目やシナリオを検討してきたが、現時点では今回のフライトデータだけで、それらが主要因に複合した可能性を完全に排除することは難しいとして、今後のミッションで取得するフライトデータからさらに詳細な現象理解を進め、信頼性を高めていく。
30形態試験機については、必要な検査と補修を施して十分な強度が確認されたPSSを適用。今回の原因究明の評価を裏付け、今後の実用衛星の打ち上げを行う後続ミッションの確実性を増すために、当面は追加のフライトデータを取得する計画だ。
この追加フライトデータには、PSSの歪みや荷重のほか、失敗した8号機のテレメトリデータで直接確認できなかった衝撃や温度といった項目を予定している。さらに、カメラ映像を充実化させ、想定外の事象が発生していないか直接的な確認も行うことにしている。
