ルネサス エレクトロニクスは3月11日、2024年に買収したAltiumの技術を基盤としたインテリジェントな電子機器開発プラットフォーム「Renesas 365, Powered by Altium」(以下、Renesas 365)の一般提供を開始したことを発表。これに際し同社は3月26日、国内メディア向けに説明会を実施し、新たなプラットフォームのデモンストレーションなどを通じて開発の背景や展望を説明した。
AIとクラウドを活用し効率的でオープンな開発を実現
近年の組み込みシステム開発においては、ワークフローの分断や手作業による非効率的な部品検索、システム全体を俯瞰した設計判断の難しさなどが課題視される一方で、急速に変化する社会のニーズに対応するため、製品開発におけるTAT(Turn-Around-Time)の短縮が強く求められている。
そうした状況を打破することを目的に開発されたRenesas 365は、組み込みソフトウェアやデータシート、アプリケーションノートなどといった、従来は個別に扱われてきた情報やツールを、クラウド上で一元化されたプラットフォームに統合することで、横断的なデータ活用を可能にするもの。システムアーキテクチャ、ハードウェア、ソフトウェアなど複数のエンジニアリングチームが同一のプラットフォーム上で共同作業を行えるようになり、ハード・ソフト両面が協調したシステム構成の検討・開発が可能となるとともに、開発の各過程で得られた洞察もリアルタイムでシステムレベルの設計仕様にフィードバックできるとする。
ルネサスが2025年に発表したRenesas 365のコンセプトモデルでは、“AI支援によるアイデアの創出”、“モデルベースによる実現”、“クラウド基盤による運用”の3つを軸とした、電子機器開発のための連続的なデジタルスレッドが提案された。
システム要件定義や設計の方針決定など開発の方向性を定める初期段階では、AIを活用し最適なアイデアを提案。そして定められた方向性に対しては、モデルベースでの統合された開発環境を活用することで迅速にアプローチし、運用の段階に至ってもクラウドでの連携によってライフサイクル管理などを行うことで、開発から生産までの一連のフロー全体を大幅に効率化できるとした。
説明会に登壇したRenesas 365統括部 シニアダイレクターの堀仁一氏は、クラウドを活用した一気通貫でのプロセス管理ができるメリットを多く挙げた。特に、現在の開発環境では、担当領域ごとに異なるデスクトップツールを用いて作業を行い、その情報共有のために会議の時間が必要とされるなどの課題があったが、クラウドを介することで“共通言語”でのリアルタイム情報共有が可能となり、無駄な時間を省けるとのこと。また開発の段階を経てもコンテキストが失われず、最終製品完成後も性能向上のために続いている開発のループにおいて、より付加価値を生み出しやすい環境が構築されるとしている。
“いずれルネサス製品でなくても”と語る理由とは
そして今般ルネサスは、組み込みシステム開発プロセスの新たな形を実現するRenesas 365の一般提供を開始した。現在は同社が提供する「RAマイクロコントローラ」(RAマイコン)を用いた新規/既存製品開発者が利用可能だといい、550品種以上のバリエーションを有する同製品を活用し、e2studioやソフトウェア開発キット(SDK)の使用に加え、データシートやアプリケーションシート、組み込みソフトウェア、回路図、PCBファイルなどの関連資料一式も統合することで、業務効率化に大きく貢献するという。
またインテリジェントなモデルベース設計の実現により、従来は開発者がデータシートと“にらめっこ”しながら行っていたマイコンなどの選定作業が、システムのコンテキストを基にしたAIからの提案によって大幅に高速化。個々の仕様ではなく、システム全体の要件に基づく最適な部品の選定が可能になるとする。また説明会の中で行われたデモンストレーションでは、AIが最適な部品を決定するのではなく、さまざまな条件下で推奨される部品を提案する様子が示された。なお提案されたデバイス群については、電力性能などの各条件で並べ替えも可能で、ユーザーによって異なる優先順位に合わせて迅速に対応できるとした。
なお、現在はRAマイコンを使用する開発者のみに限られているRenesas 365の適用範囲だが、今後は対応領域を広げる予定で、マイコンに限らずMPUなどのデバイスへ、そして将来的にはパワーデバイスやコネクティビティの領域にも拡大していきたいとする。
堀氏は「例えば電気自動車にしても、ルネサスの製品だけでそのすべてを動かすことはできない」とし、「極端に言えば、ルネサス製品でなくてもこのプラットフォーム上で設計開発ができるようにしていきたい」とコメント。それこそがユーザビリティの向上につながるとしており、「複雑な作業をAIに任せつつ、開発者がアプリケーションに焦点を当て、より大きな付加価値を生み出すことに集中できる環境として、このRenesas 365を提供していく」と語った。




