セイコーグループは、衛星測位に依存しない次世代位置情報基盤「Chrono Locate」を実際の建設現場で活用する実証実験を行い、衛星信号が使えない環境でも、建設現場で求められるセンチメートル(cm)級の精度と安定性を満たす測位が可能なことを確認したと、4月1日に発表した。
Chrono Locate(クロノロケート)は、同グループのセイコーソリューションズとセイコーフューチャークリエーションの2社が共同開発したもので、今回の実証実験は大成建設と共に実施。衛星の電波が届かず、把握が困難だった空間においても詳細な位置情報取得が可能になり、建設現場のデジタル化を支える基盤技術としての活用が期待されるとしている。物流倉庫や工場、スマートインフラなどへの展開も視野に入れる。
建設現場をはじめとする社会インフラ分野では近年、安全性や生産性の向上、労働力不足に対応するため、ICTやIoTの活用を進めている。施工管理や重機の稼働管理、作業員の安全管理などで位置情報は重要な役割を担う。
一方で、これらの多くはGPSやQZSS(準天頂衛星システム)、GLONASS、Galileoといった「GNSS」(全球測位衛星システム)を基盤としており、トンネル内や地下空間、都市部の高架下、屋内施工エリアなどでは衛星信号が届きにくく、位置情報の取得には大きな制約があった。
こうした課題に対し、セイコーが時計や時刻同期システムの分野で長年培ってきた高精度時刻同期技術をコアとし、情報通信研究機構(NICT)が開発した「Wi-Wi」(Wireless two-way interferometry)の研究成果も活用して、Chrono Locateを開発。
現行のGNSSが衛星からの一方向通信によって位置を算出するのに対し、Chrono Locateは測位対象エリアに設置した複数の基準局と、対象物に取り付けた移動局との間で電波を双方向に送受信し、リアルタイムに位置を特定する仕組み。同社では「衛星に依存しない新しい位置情報基盤」とアピールしている。
主な特長は以下の通り。
- 双方向通信によるナノ秒未満の高精度の時刻同期
- 精密な時間差計測による誤差数cmの距離測定
- 屋内・地下を含む環境での3次元位置情報のリアルタイム取得
- 100m超の広範囲で利用可能
建設現場のデジタル化を支える基盤技術として期待される内容としては、以下を挙げている。
- 作業員と重機の位置関係を把握し、接触事故の未然防止や安全基準の高度化に寄与
- フォークリフトや搬送機器の動線可視化による作業効率の最適化
- AGV(Automated Guided Vehicle)/AMR(Autonomous Mobile Robot)の高精度な停止・経路制御
今回、大成建設と共に行った実証実験は、⾸都⾼速道路の⽇本橋区間地下化事業の⼀環として行われているトンネル⼯事(東京・千代⽥区⼤⼿町2丁⽬〜中央区⼋重洲1丁⽬)において実施。GNSSが受信できない施⼯環境で、Chrono Locateによる試験測位を行い、適⽤可能性を検証した。
具体的には、⾸都⾼の⾼架橋下の施⼯エリアに基地局を12カ所設置し、⽇本橋川を⾏き来する通船(移動局)の追尾試験と、浚渫作業を⾏う台船上に据えたバックホウ(油圧ショベル)のブームの旋回状況を、バックホウの運転席・⾞体後部に設置した移動局を用いて追尾する試験を実施。
その結果、通船の軌跡はレーザ測量結果とほぼ⼀致し、所定の測位精度が得られることが分かり、複数のエリアを結合運⽤することで広範囲の施⼯区間をカバーし、複数エリアにまたがって通船が移動する場合でも連続的な測位が行えたという。また、バックホウ前後のふたつの移動局によってブーム旋回の連続的に安定した追尾が確認でき、浚渫位置の正確な把握に応⽤できることも分かったという。
大成建設はChrono Locateを活用して、GNSSがこれまで建設現場にもたらしてきた測量作業の効率化やICT施⼯、出来形管理のデジタル化といった機能を、衛星信号を受けられない環境へ拡張することをめざす。
また、⾼精度かつコンパクトといったChrono Locateの特⻑を⽣かし、⼤成建設の統合プラットフォーム「T-iDigital Field」のアプリケーションのひとつとして展開することも想定。
具体的には、AR(拡張現実)などの先端技術と組み合わせてドローンによる⾼精度測量や3D設計図のAR表⽰、作業員の動線管理による安全管理の⾼度化に活かすほか、重機や施⼯機械の位置の⾼精度な測位・把握などへの活用も見込む。これにより、これまで測量機器を⽤いて作業員が⾏っていた重機位置の測量や確認作業を補完できるようになるという。


