小型の水生昆虫がナマズに襲われた際、口の中で抵抗することで吐き出され、生還できることを神戸大学のグループが明らかにした。昆虫が捕食者から身を守るために進化させた防衛手段の1つで、「魚にとって無毒で口に入る小さな昆虫は容易に捕食される」という定説を覆す発見だという。

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    水生昆虫(甲虫)と捕食者のナマズ(神戸大学・杉浦真治教授提供)

神戸大学大学院農学研究科の杉浦真治教授(生態学)によると、魚は口に入る大きさの獲物であれば容易に捕食できるとされている。ただ、魚に捕らえられた獲物がどのような防衛手段をもつのかは、あまり注目されていなかった。

杉浦教授は2020年、水田などにすむ甲虫のマメガムシがカエルに飲み込まれても生きたまま消化管を通過し、お尻にある総排出腔から脱出することを明らかにした。今回、魚に捕らえられたマメガムシが脱出できるのかについて、他の水生昆虫も含めて実験で調べることにした。

ミズスマシ科2種、ゲンゴロウ科3種、ガムシ科3種について、種ごとに成虫を20匹ずつ用意。ナマズ(14~25センチ)の水槽に1匹ずつ入れたところ、全ての昆虫がナマズの口に吸い込まれた。このうち49%が消化され、51%が生きたまま吐き出された。

種ごとの捕食成功率(消化された割合)は、ミズスマシ科ではオオミズスマシ(体長10~11ミリ)が50%、ミズスマシ(6~8ミリ)が20%。ゲンゴロウ科では、シマゲンゴロウ(13~16ミリ)が35%、コシマゲンゴロウ(10~12ミリ)が65%、ケシゲンゴロウ(4~5ミリ)が25%だった。ガムシ科では、コガムシ(16~19ミリ)が80%、ヒメガムシ(10~13ミリ)が90%、マメガムシ(4~5ミリ)が30%。おおむね小型の種ほど生きたまま吐き出される率が高い傾向があった。

ナマズは獲物をかみ砕く機能のある歯は持っておらず、口の中で小さい甲虫を制御しにくいため飲み込めなかった可能性がある。ただ、カエルに捕食されたマメガムシが総排出腔から生還したのとは違い、マメガムシを含めてナマズの総排出腔から生きたまま脱出した個体はいなかった。

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    ため池などにすむ甲虫8種のナマズによる捕食成功率(神戸大学・杉浦真治教授提供)

科のレベルで比較すると、外部刺激によって化学防御物質を分泌するミズスマシ科とゲンゴロウ科は、生きたまま吐き出されやすいとみられる。一方、化学防御物質をもたないマメガムシが7割も脱出に成功する理由を探ろうと、3対ある脚の中脚と後ろ脚を切断したマメガムシ20匹をナマズに与えると、30%だった捕食成功率が85%に上がった。脚で抵抗することが難しくなり、脱出できずに飲み込まれやすくなったとみられる。

今回の研究結果は、小型の水生昆虫が魚に襲われた際、口の中で抵抗することで生きたまま吐き出される可能性を示している。今後、甲虫8種以外の水生昆虫やナマズ以外の魚に対象を広げて行動を調べることで、池や湖への魚の導入が水生昆虫相に及ぼす影響をより正確に予測できるようになると期待される。成果は3月12日付の英オンライン科学誌「サイエンティフィックリポーツ」に掲載された。

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