有人月飛行ミッション「アルテミスII」

人類にとって約半世紀ぶりとなる有人月飛行ミッション「アルテミスII」。4人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船「オリオン(オライオン)」を搭載した巨大ロケット「スペース・ローンチ・システム」(SLS)が2026年4月2日(日本時間)、米国フロリダ州ケネディ宇宙センターから打ち上げられた。これに併せる形でルネサス エレクトロニクスが、自社の耐放射線ICが同ミッションに活用されていることを明らかにした。

  • 発射場にて打ち上げを待つSLS

    発射場にて打ち上げを待つSLSとルネサスの耐放射線ICパッケージの外観 (C)NASA (出所:ルネサス)

採用されたのは主に同社が2017年に買収した旧Intersil(インターシル)ブランドで展開されている製品群で、日本でも宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型月着陸実証機「SLIM」にインターシルブランドの耐放射線ICしたことを公表している

宇宙船とロケットの複数のサブシステムにさまざまな耐放射線ICが採用

60年以上にわたって耐放射線ICを提供してきた歴史を有しており、それゆえにパッケージの種類も従来のセラミック+金めっきパッケージのほか、近年のトレンドである樹脂(プラスチック)パッケージにも対応しているほか、デバイスの種類も高精度アナログ、パワーマネジメント、RF、タイミング、ミクスドシグナル、ディスクリートと多岐にわたる。

今回のアルテミスIIについても、宇宙船オリオンとSLS、そのいずれの複数のサブシステムに同社の耐放射線ICが搭載されているとのことで、同社では宇宙船の航空電子機器や打ち上げ時の安全システムに不可欠であり、電力の制御および分配、信号品質の維持、機上コンピューティングを支援するとしているほか、有人宇宙ミッションに特有の高い耐放射線レベルや極端な温度にさらされる環境下でも、安定して動作するよう設計されているとその特徴を説明している。

また、同社の高信頼性(Hi-Rel)製品事業部でヴァイスプレジデントを務めるChris Stephens氏は、「有人宇宙飛行ミッションは失敗が許されないものです。歴史的な有人月探査ミッションであるアルテミスIIにおいて、宇宙での使用に耐える技術の提供を託された、数少ない半導体メーカーの一社であることを誇りに思います。ルネサスの耐放射線デバイスは、乗組員が深宇宙へ向かうミッション期間中、宇宙船システムの安定した動作と安全性を支援します。今後も、宇宙用途の要件を満たす半導体ソリューションを通じて将来の画期的なミッションに貢献し、太陽系探査の次の時代を切り開いていきます」と引き続き、宇宙開発に対応する半導体デバイスをインターシルブランドで提供していくことをコメントしている。

実際の有人月着陸は2028年予定の「アルテミスIV」で実施へ

なお、アルテミスIIミッションは10日間の予定で、宇宙船オリオンが月をフライバイする形で地球に帰還することを目指しており、これにより将来の有人月探査で求められる各種のシステム要件などの確認と実証が行われることとなる。打ち上げ2日目より、宇宙船オリオンのメインエンジンを活用する形で月に向かう軌道(自由帰還軌道)へと入り、6日には月フライバイを月の裏側に回り込む形で実施した後、そのまま地球に向かって飛行し、10日目に大気圏への再突入を実施し、太平洋に着水して帰還する予定。また、アルテミス計画そのものとしては、2026年2月時点で、当初予定していた2027年後半実施の「アルテミスIII」にて宇宙飛行士による月面着陸としていたスケジュールを見直し、アルテミスIIIでは、月着陸船と宇宙船オリオンのランデヴーやドッキングの試験を行い、その結果を踏まえ、2028年に予定されている「アルテミスIV」にて再び人類が月へと降り立つ予定となっている。