アストロスケールは、商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」の軌道上での運用を終了し、軌道降下を始めたことを3月25日に発表。世界で初めて宇宙デブリ(ゴミ)の近距離での撮影を行い、15mまで接近するなど、各種実証に成功した衛星で、今後5年以内に自然落下し大気圏再突入する見込み。
ADRAS-Jは、デブリ除去などの軌道上サービスに欠かせない「対象物体に安全、精密に接近する」という、ランデブ・近傍運用技術(RPO:Rendezvous and Proximity Operations Technologies)の確立をめざして開発・運用した人工衛星。開発には約1,500日間を要し、ミッション期間は024年2月の打ち上げ以来、293日間を記録している。
今回のミッションは、“宇宙のロードサービス”ともいえる大型デブリ除去などの技術実証のため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「商業デブリ除去実証」(CRD2:Commercial Removal of Debris Demonstration 2)フェーズIとして実施された。
ミッション期間中、ADRAS-Jは実証の対象となる大型デブリである、日本のロケット上段(全長約11m、直径約4m、重量約3t)に遠距離から接近。近距離での撮影や、デブリから50mの距離を維持しながらの周回観測、さらには15mという極近傍までの接近、そして衝突回避機能の有効性の実証などに成功した。
ADRAS-Jミッションの主な成果は以下の通り。
- 軌道計画および航法の確立
- 遠方域の絶対航法
- 近傍域の相対航法
- 複数回の近傍域到達
- 最適な軌道計画の立案
- 近傍作業の成功
- 対象デブリから50mの距離での定点観測
- 対象デブリから50mの距離での周回観測
- PAF(Payload Adapter Fitting、ロケットと衛星をつなぐ台座)から約15mへの接近
- ペイロードの性能確認
- 複数のセンサ・カメラ
- 安全設計の実証
- FDIR(Failure Detection Isolation and Recovery、衛星が自身の内部異常や、対象物体との相対距離や姿勢異常を検知し、対策を施すシステム)による自律アボート
このほかにもADRAS-Jによる観測の結果、後継ミッション「ADRAS-J2」に関する成果も挙げた。ADRAS-J2はデブリ除去のための対象の捕獲・軌道離脱を行う予定で、その捕獲箇所として想定しているPAF(衛星分離部)の状態把握に成功したとのこと。
アストロスケールはこうした成果について、「対象物体に安全、精密に接近するというコア技術の実証を通じて、軌道上サービスの実現に向けて大きく前進しただけでなく、日本発・世界初のデブリ除去につながる着実な一歩になった」と説明している。
ADRAS-Jは今回、軌道上での運用終了に向けて軌道降下の運用を開始しており、5年以内に自然落下し再突入できる軌道まで高度を下げている。今後さらに軌道降下運用を継続し、最終的には大気圏に再突入し、燃え尽きる予定だ。次のADRAS-J2ミッションはCRD2フェーズIIとして2027年度の打ち上げを予定しており、機体の開発・試験を進めている。
アストロスケール ADRAS-Jプロジェクトマネージャー 新栄次朗氏のコメント
存在しない技術を一から生み出し、(接近や捕獲・ドッキングなどのための能力・機器を有さない)非協力物体へのフルレンジRPOに挑むという、前例のない取り組みは想像を超える困難を伴いましたが、すべての航法は期待を上回る性能を示しました。
また、接近途中でアボート(対象に対する衝突を回避するためのマヌーバを実施し、安全な距離まで待避すること)を経験しましたが、チームの冷静な判断と確かな設計に支えられ、軌道上における安全なRPOを実証し、複数回のアプローチを実現しました。
この冒険の機会に心から感謝するとともに、試行錯誤の積み重ねを通じて、軌道上で非協力物体に接近する衛星のあるべきシステム像と運用の本質を深く理解できたことは、何よりの財産です。今回の実績を礎に、今後のミッションはより良いものになると確信しています。
アストロスケール 岡田光信社長のコメント
ADRAS-JミッションにおいてRPO技術の実証に成功したことで、アストロスケールは軌道上サービスの市場において大きな優位性を得ることができました。
本ミッションの実現にあたっては、パートナーシップ型契約を締結いただいたJAXA様をはじめ、パートナー各社、投資家の皆様、サプライヤーの皆様、そしてミッションを支えた当社社員など、これまでADRAS-Jミッションおよび弊社をご支援くださったすべての皆様に、改めて感謝申し上げます。
また、ヒューリック、郵船ロジスティクス、みずほ銀行、アイネット、三技協イオス、セック、キッズステーションの7社とマーケティングパートナーシップを締結し、宇宙の持続可能性(スペースサステナビリティ)の実現を共に目指す中でご支援をいただきました。今後のミッションにおきましても、引き続きご注目いただければ幸いです。


