温度の変化だけで酸素の吸収と放出ができ、取り込んだ酸素の量に応じて白や濃い青に変色するセラミックスを、神奈川大学などの研究グループが発見した。従来のものは酸素を放出する際に特殊な性質のガスが必要だったが、新たなセラミックスは大気中や酸素を満たしたような穏やかな条件下でも酸素の出し入れができる。酸素貯蔵物質や酸素センサー、色の変わる顔料などへの応用が考えられるという。

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    研究グループが合成したセラミックス(中央)は、酸素を放出すると白に、酸素を吸収すると濃い青になる(神奈川大学の大石耕作研究員提供)

神奈川大学化学生命学部の本橋輝樹教授(材料化学)は、酸素を効率的に取り込むセラミックスを酸素貯蔵材料に応用しようと20年ほど研究を続けている。本橋教授の指導を受ける大石耕作研究員(材料化学)は今回、「メリライト型構造」をもつ材料の特性を系統的に調べた。天然鉱物メリライト(黄長石)が名前の由来である結晶構造のことで、金属など3種類の元素(陽イオン)を含み、それぞれの陽イオンが酸素イオンと結び付いて層状に連なっているのが特徴だ。

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    「メリライト型構造」に含まれる3種類の元素の比率(A:B:C)は2:1:2。名前の由来である天然鉱物メリライト(黄長石)には、カルシウムとマグネシウムとケイ素が含まれる(神奈川大学の大石耕作研究員提供)

どのような元素を3つ組み合わせたら酸素を効率よく取り込めるのかを探るため、酸素貯蔵材料として実績があるマンガンを核に、ストロンチウムとバリウム、ケイ素とゲルマニウムを組み替えてメリライト型構造をもつ複数のセラミックスを試作。それらが酸素を取り込む性質を調べたところ、セ氏1100度で焼き上げたバリウム、マンガン、ゲルマニウムからなるセラミックス(BMG)が最も優れており、最大で重量の1.2%の酸素を貯蔵できることが分かった。

従来のマンガン系の酸素貯蔵材料は、周囲に酸素があると常に酸素を吸収する性質がある一方で、酸素を放出させるには水素やアンモニア、一酸化炭素のように還元力(酸化した状態を元に戻す力)の強いガスが必要だ。これに対してBMGは、酸素を満たした中で加熱するとセ氏200度付近で酸素を取り込み、400~500度になると還元力の強いガスがなくても酸素を一気に放出することが分かった。酸素の吸収量が最も少ないと白色で、酸素の量が増えるにつれて青色が濃くなる性質がある。

BMGの結晶構造を、放射光X線吸収分光法や放射光その場X線回折、単結晶X線回折、粉末中性子回折などで調べてみた。その結果、酸素を放出したときはマンガンイオンの周りに酸素イオンが4つ付いた四面体(三角錐)の構造だが、酸素を吸収するとマンガンイオンの周りに酸素イオンが5つ付いた三角両錐(三角錐が2つくっついた形)になることが分かった。これに伴って結晶のメリライト型構造が、基本形とは異なる構造になっていたという。

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    酸素を放出したときと吸収したときのBMGの結晶構造の模式図。小さい赤い点が酸素イオン(神奈川大学の大石耕作研究員提供)

本橋教授は「(大気中や酸素を満たしたような)穏やかな条件下での可逆的な酸素吸収放出特性を利用すれば、将来的には空気中から酸素を分離することに使えるかもしれない。また、自動車の排ガスに含まれる一酸化炭素などを浄化するために酸素をはき出す触媒のような材料としても使えそうだ」と話している。

この研究は、東北大学や京都工芸繊維大学、近畿大学と共同で進め、アメリカ化学会の専門誌「ケミストリー・オブ・マテリアルズ」に1月24日付けで掲載された。

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