Texas Instruments(TI)は3月10日、同社のマイコン向けNPU「TinyEngine」を搭載したエッジAI対応マイコン「MSPM0G5187」ならびに「AM13Exファミリ」を発表した。
AIの活用は、これまでのクラウドベースの学習、推論から、手元のデバイス上で推論処理を行うエッジAIへと応用範囲を拡大させようとしている。手元のデバイスで推論処理を行うことで、データセンターとのデータのやり取りにかかる時間の削減や通信コスト、電力消費の抑制というメリットに加え、データの通信やデータセンターに集約することに伴う情報漏洩のリスクなどをなくすこともできるというメリットを得ることができるようになる。
ただし、そのためには手元のデバイスでのAI処理に求められる低消費電力かつ高演算処理性能を実現する必要があるという課題があった。同社のTinyEngineは、そうしたエッジAI推論ニーズに対応することを目的として開発されたNPUで、同社のC2000およびArmベースマイコンに統合可能な独自ハードウェアアクセラレータ。2.56GOPSの演算性能を提供し、NPU非搭載の同等性のマイコンと比較した場合、AI推論あたり最大90倍のレイテンシの低減と、最大120倍以上のエネルギー消費削減を実現するとともに、フラッシュメモリの使用容量も最小化することができるようになるとする。
Cortex-M0+でもエッジAI処理が可能に
MSPM0G5187は、Arm Cortex-M0+ベースの「MSPM0ファミリ」において動作周波数80MHzの上位製品群「MSMP0Gシリーズ」に追加された製品で、Cortex-M0+という低消費電力での動作と柔軟なアナログ/デジタル周辺機能を活用したAIベースのセンシングを行うことを可能とするという。また、ポスト量子暗号に対応したサイバーセキュリティ機能として、Arm PSA-L1の認証を取得する予定だとする。
Cortex-M0+ということでコストも1000個単位で1ドル未満としていることから、携帯型のバッテリーで駆動する機器を含む幅広い電子機器などに手軽に利用できるようになるとのことで、スマートホーム、ウェアラブル、産業機器、家電などさまざまな市場への適用が期待され、例えば、一般的なスマートホーム機器におけるウェイクアップ用音声ワードの検出に用いられる1D CNNをNPUで実行する場合、標準的なCPUでの処理に比べてレイテンシを92%以上削減できるようになるとしている。
モータ制御の演算実行を従来比で10倍高速化
もう一方のAM13Exファミリはリアルタイムモータコントロール&オートメーションマイコンという位置づけで、その第1弾製品としてArm Cortex-M33とTinyEngine NPU、リアルタイム制御アーキテクチャを搭載した「AM13E23019」が提供される。主にモータ制御に向けて開発されたマイコンで、統合型三角関数演算アクセラレータにより、座標回転デジタル計算(CORDIC)実装と比べて10倍高速に演算を実行できるようになったとするほか、最大4台のモータを同時に制御することも可能だとする。
さらに、多数のアナログ周辺回路も統合しているため、部品表(BOM)コストを最大30%削減することができるともいう。
AIの活用としては、NPUをモータ制御システムに統合することで故障検知の高度化や、インテリジェンスな負荷分散、利用状況に応じたバッテリーの状態監視、制御アルゴリズムの最適化/チューニングなどが容易に行えるようになるともしており、これにより、例えば洗濯機のモータ制御に同製品を活用した場合、リアルタイムでモータの負荷や回転速度の最適化を図りつつ、重量に応じた回転プロファイルの最適化をリアルタイムで行うことで、モータの駆動寿命の延長を図ることができるようになるとする。
エッジAIニーズにハード/ソフトの両面での対応を推進
なお、TinyEngineについては、今回のArmマイコンへの搭載の前に、2024年11月に発表されたC2000マイコン「TMS320F28P550SJ」がNPUとして搭載済みで、今回の製品投入でC2000マイコン、Armマイコンの両方にNPUが搭載されることとなった。TIとしては、ほかのCortex-M0+ベースの汎用マイコンを含め、Armマイコンについては顧客のニーズや用途に応じてTinyEngineの搭載を検討していくとしており、AI機能が必要な用途に対応できる製品という位置づけでの提供を行っていく予定としている。
また、ハードウェアのみならず、AI開発システムを含めたソリューション全体として提供していくことにも注力していくとしており、統合開発環境(IDE)「CCStudio」に生成AIを統合することで、サンプルコードなどの呼び出しの簡略化による開発の容易化や、デバイスに搭載するAI機能開発に向けたツールである「CCStudio Edge AI Studio」についても現在までに60以上のモデルを提供済みとしており、今後もハード、ソフトの両面でエッジAIアプリケーション開発の支援を推進していくことを強調している。




